【Wine Tourism】ワイン産地別の魅力を徹底解説 – 訪れるべき日本のワイン聖地

【Wine Tourism】ワイン産地別の魅力を徹底解説 – 訪れるべき日本のワイン聖地

前回は日本のワインツーリズムの魅力と課題について探ってきました。今回は、私が実際に訪れた場所や、これから訪れてみたい国内の主要ワイン産地にスポットを当て、それぞれの個性や魅力を掘り下げていきます。日本のワイン聖地とも言える産地の特徴や、おすすめのワイナリーを、一人のワイン愛好家としてご紹介します。これを読んでいるワイン通の皆様にはすでにご存知の情報も多いかもしれませんが、私の体験も交えながらお伝えしたいと思います。

※本記事で紹介する山梨、長野、北海道、新潟の各ワイナリーは、筆者が実際に訪問し、体験した場所です。(2025年3月時点の情報)

山梨県勝沼エリア – 日本ワインの聖地

【テロワールの特徴】
日本ワインの発祥の地とも言われる山梨県勝沼は、甲府盆地の東部に位置し、昼夜の寒暖差が大きく、年間日照時間が長い気候が特徴です。土壌は水はけの良い砂礫質で、高品質な葡萄栽培に適しています。特に甲州種の栽培において圧倒的な実績を持つ地域です。個人的には、幼少期から長期休暇は山梨で過ごしていたので、南アルプスを背景に広がるブドウ畑の景観には特別な親近感を覚えます。

【注目のワイナリー】
– 中央葡萄酒(グレイスワイン)(見学不可):日本ワインの品質向上に尽力してきた蔵元で、国際的にも評価されている「グレイス甲州」は、日本ワインファンには説明不要ですね。蔦に覆われた雰囲気ある建物はとても素敵で、ワイン産地を訪れる醍醐味の一つです。

– シャトー・メルシャン勝沼ワイナリー(見学可):大手キリンが運営する本格派ワイナリー。最新の醸造設備と広大な自社畑の見学、専門スタッフによる丁寧な解説付きテイスティングが充実しています。館内にあるワイン資料館では、ワインの歴史や製造過程が学べるので必ず訪れていただきたい!

– ルミエールワイナリー(見学可):化学肥料や化学合成農薬を使用せず、自然に近い形でのワイン製造を行っています。併設のレストラン「ゼルコバ」では、自社ワインと地元の食材を活かした本格フレンチを楽しむことができます。ワイナリーツアーが人気です。山梨を訪れるたびに立ち寄りたくなる、居心地の良さが魅力的です。

– 丸藤葡萄酒(見学可):明治時代から続く老舗ワイナリーで、伝統的な製法と現代的な技術を融合させたワイン造りが魅力。ルバイヤートの「甲州シュール・リー」は私の密かなお気に入り。テイスティングルームでは、「蔵コン」というワインとコンサートを楽しむ催しも行われています。

– 原茂ワイン(見学可):どうしてもこのセレクションの中にこちらのワイナリーを入れたかったのは、個人的に原茂ワインのアジロンが大好きだからです。アジロンとは、このエリアだけで栽培されている黒ブドウ品種。バランス的に甘味が強いワインをあまり好まない私も、アジロンの果実味は好物。チャーミングで透明感のあるワインばかりです。

長野県 – 未来を切り拓く気鋭の産地

【テロワールの特徴】
長野県は県内各地にワイン産地が広がり、標高600〜900mの高地で冷涼な気候が特徴です。特に桔梗ケ原や東御、上田、千曲川流域などでワイン用ブドウの栽培が盛んです。昼夜の寒暖差が大きく、メルローやシャルドネといった欧州系品種の栽培に成功している注目の産地です。各地域で火山灰を含む特有の土壌が、ミネラル感豊かなワインを生み出しています。山梨とは異なる標高の高さと冷涼な気候が、繊細でエレガントな味わいのワインを育む土壌となっています。

【注目のワイナリー】
– サンクゼール(見学可):広大な敷地に開放的なテイスティングルームを備え、ナパバレーを思わせる雰囲気が魅力のワイナリー。緑豊かな庭園や丘陵地からの景観を楽しみながら、地元長野の食材を活かしたレストランでのランチとともにワインを味わえます。カジュアルなピクニックのようにワインを楽しめます。

– マンズワイン小諸ワイナリー(見学可):長野県を代表する大手ワイナリーで、広大な自社畑でのブドウ栽培から一貫した生産を行っています。高品質な欧州ブドウ品種に力を入れており、ソラリス千曲川信濃リースリングは私のお気に入りです。

– ヴィラデストワイナリー(見学可):東御市に位置し、美しいブドウ畑とハーブがある光景は、まるでヨーロッパの田園風景。併設のレストランでは地元食材とワインのマリアージュが楽しめます。オーナーは「パリ 旅の雑学ノート」の著者である玉村豊男さんで、カフェでお見掛けしたことがあります。

– 小布施ワイナリー(見学不可):長野県小布施町に位置し、自らを「ブルゴーニュのような小さなワイナリー」と表現する趣のある醸造所。伝統的な醸造方法を大切にし、シャルドネやピノ・ノワールなど欧州系品種を使った繊細で真摯なワイン造りで知られています。少量生産の高品質ワインは、芸術作品のような奥深さ。

北海道余市・仁木エリア – 冷涼気候が育む洗練された味わい

【テロワールの特徴】
北海道西部の日本海に面した余市と仁木エリアは、冷涼な気候を活かしたワイン造りが特徴です。特にピノ・ノワールの栽培に適した環境として近年注目を集めています。海からの風の影響を受ける独特のテロワールを持ち、ミネラル感のある洗練された味わいのワインを生み出しています。この地を初めて訪れたのは2023年、日本ワインを見直す衝撃を受け(すみません)、なんとその年のうちに4回も訪問してしまいました。個人的に、今日本で一番注目していて、最も好きなワイン生産地です。

【注目のワイナリー】
– ドメーヌ・タカヒコ(一般見学不可):国内外で高い評価を受けている注目のワイナリー。実は私、特別なご縁があって訪問する機会に恵まれたのですが、曽我貴彦さんご自身が案内してくださり、この地だからこそ出来るピノ・ノワールを作りたいという想いを熱く語ってくださったのが忘れられません。曽我氏の情熱と真摯な姿勢が、自然派ワインの手法を取り入れた素晴らしいピノ・ノワールに結実しているのだと実感した瞬間でした。また、ドメーヌ・タカヒコで修業した造り手たちが独立し、同じく素晴らしいワインを造り出しているのも、この地域の魅力のひとつです。

– NIKI Hills ワイナリー(見学可):北海道の自然を活かしたワイン造りを行うリゾート型ワイナリー。宿泊施設やレストランを併設し、食事とのペアリングなど充実した体験が可能です。広大な土地の特徴を生かしたアクティビティも充実しており、ワインだけでなく北海道の自然も満喫できます。

– 平川ワイナリー(見学不可):少量生産の高品質ワインで注目を集める新進気鋭のワイナリー。セパージュ非公開のワインにはフランス語で名前が付けられていて、寂しさの中に凛とした芯があるような印象のワインが多いです。ソムリエ経験も持つ平川氏によるワインは、食事とのペアリングに特にこだわりがあり、HPの各ワインのページには相性の良い料理も掲載されています。

– ドメーヌ・モン(見学不可):余市町登地区に位置する小規模生産者。ピノ・グリを主体とした、繊細で日本らしく、複雑な香りのワインが国内外で高く評価されています。手間と時間をかけて丁寧に育てられた葡萄が美しいワインを生み出しています。

新興注目エリア – 次世代のワイン産地

【新潟県 – 日本海の風を受けて育つワイン】
日本海からの海風とミネラルを含む砂質土壌を活かした品種の栽培が注目を集めています。「カーブドッチワイナリー」(見学可)は自社畑での欧州系品種栽培にこだわり、温泉を含む宿泊施設も併設されているため、ゆっくりとワインを楽しめます。「岩の原葡萄園」(見学可)は明治時代に設立された歴史ある蔵元で、日本固有の品種「マスカット・ベーリーA」発祥の地としても知られています。

【広島県 – 瀬戸内の温暖な気候を活かす】
「三次ワイナリー」(見学可)は清流に囲まれた環境でのワイン造りが特徴。特に「シャルドネ」の評価が高く、施設見学も可能です。自社レストランでは地元食材とのマリアージュも楽しめます。バーベキューガーデンなども併設され、ワイナリーでありながら総合的な観光施設となっています。

【大分県 – 温泉地に広がるワインの魅力】
「菊鹿ワイナリー」(見学可)は熊本県北端の山鹿市菊鹿町に位置する、熊本初の本格ワイナリー。菊華シャルドネ樽熟成は上品な味わいで好印象でした。安心院葡萄酒や湯布院ワイナリーは近隣の観光も兼ねて訪問してみたい。温泉観光との組み合わせでワイン巡りを楽しめるエリアとして、今後の発展が期待されています。

ワイン産地訪問のための実用情報

【ワイナリー見学と予約について】
この記事では各ワイナリーの見学可否を記載していますが、予約の要否や営業時間、見学料金、ツアー内容などは頻繁に変更される可能性があります。訪問前には必ず各ワイナリーの公式ウェブサイトで最新情報を確認するか、直接お問い合わせください。特に小規模ワイナリーでは、予約が必須の場合が多いので注意が必要です。経験上、週末の訪問は1〜2週間前には予約を入れておくことをお勧めします。ただ、旅の途中で偶然見つけて気になるワイナリーには、ダメ元でその場で訪問を聞いてみるのもアリです!思わぬ素敵な出会いがあるかもしれません。なお、ワイナリー見学の際は、畑や醸造所などを勝手に歩き回ることなく、造り手への敬意を持って見学させていただくようにしましょう。

【ベストシーズンを知る】
一般的に収穫期(9〜11月)が最も見どころが多いシーズンですが、春の芽吹きの時期(4〜5月)も美しい景観が楽しめます。冬季は一部のワイナリーが見学を休止する場合がありますので、事前確認が必要です。
ちなみに、私は北海道で、葡萄の枝が雪に覆われて春を待つ姿でも感動してしまいます。こういう時期に訪問させてくれるワイナリーは、畑仕事や醸造で忙しくない場合が多く、意外とじっくりお話できることも魅力です。

【地域ワインイベントを活用する】
「ワインツーリズムやまなし」(山梨、年2回)や「塩尻ワイナリーフェスタ」(長野、6月頃)、「La Fete de Yoichi」(北海道余市、9月頃)など、地域のワインイベントを活用すれば、一度に多くのワイナリーのワインを試飲できます。また、期間限定の周遊バスが運行されることも多く、効率的な訪問が可能になります。

あなたにぴったりの産地選び

初めてのワイナリー訪問なら、アクセスの良さとインフラの充実した山梨県勝沼がおすすめです。個人的には、ゆっくりとワイン産地やワイナリーを楽しむスタイルを広げていきたいと思っていますが、事前にある程度プランを立てれば日帰りでも十分にワイナリー巡りを満喫できます。

それぞれの産地には固有の魅力があります。私のもう一つの趣味はグルメなので、日本各地のワイナリーを訪ね歩きながら、ワイン造りの奥深さを体感するとともに、その土地ならではの食に触れられることがとても楽しいです。皆さんも是非、この春から日本のワイン聖地巡りを計画してみてください。きっと素晴らしい出会いが待っていますよ。
次回は「成功するワインツーリズム」と題して、ワインツーリズムの成功モデルや今後の可能性について考察します。

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