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変化していく気候と向き合い、甲州の可能性を拓く〜サントリー登美の丘ワイナリーの挑戦〜

Miyuki Isobe4 分
目次
  1. 01甲州の可能性を広げる、栽培への挑戦
  2. 02畑を広げ、異なる産地の甲州を育てる
  3. 03「THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025」
  4. 04日本ワインの未来に向けて

1936年の創設から90年。歴史ある建物の中で設備の刷新を進め、時代にあわせたワインづくりに取り組むサントリー信州塩尻ワイナリー。前編では、その歴史と進化を紹介しました。

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今回訪れたもう一つの拠点は、山梨県甲斐市のサントリー登美の丘ワイナリーです。

富士山や南アルプスを望む丘陵地に広がるブドウ畑。ここでは、気候変動を見据えた栽培研究とともに、日本固有の品種である甲州の可能性を広げる取り組みが続けられています。

畑の選定から栽培方法、ブドウの系統選抜、そして醸造まで。登美の丘ワイナリーが目指す、これからの日本ワイン造りを取材しました。

CHAPTER 01

甲州の可能性を広げる、栽培への挑戦

登美の丘ワイナリーが近年、特に力を入れている品種の一つが甲州です。

甲州といえば、繊細で軽やかな味わいを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、サントリーが目指しているのは、そうした特徴を大切にしながら、世界のワインと並べても存在感のある甲州を造ることです。

サントリーでは2014年頃から、甲州の栽培場所を見直してきました。従来の畑にとらわれず、より水はけが良く、ブドウの熟度を高められる場所への植え付けを進めています。

さらに、山梨県が2012年から取り組んできた甲州の優良系統の選抜にも、当初から協力してきました。

同じ甲州でも、系統によって収量や果実の特徴は異なります。サントリーでは、収量が比較的少なくても、糖度が上がりやすく、味わいが凝縮する系統などを選び、栽培に取り入れています。
そして、収穫時期を慎重に判断し、糖度だけでなく、目指すワインのスタイルに合わせてブドウの成熟を見極めているのです。

また、畑では複数の甲州のクローンを試験的に栽培しています。

同じ品種であっても、房の付き方や収量、果実の特徴には違いがあるといいます。必ずしも一つの優れたクローンに絞ることを目指しているわけではなく、豊かな果実味を持つもの、糖度が上がりやすいものなど、それぞれに異なる長所が効果的に活きるよう栽培し、目指すワインに応じて、どのような組み合わせが適しているのかを探っています。

栽培方法もクローンも、一つの正解を求めるのではなく、ブドウと畑の特徴を見極めながら選択していく。その積み重ねが、登美の丘ワイナリーの甲州造りを支えています。

CHAPTER 02

畑を広げ、異なる産地の甲州を育てる

サントリーの甲州、現在は山梨県と長野県に自社管理畑を広げ、それぞれの土地の特徴を生かした栽培を進めています。

今回の取材で紹介されたのは、長野県の立科、山梨県の双葉、南アルプス、豊富という4つのエリアです。

立科は標高約800mの冷涼な地域。粘土質の土壌も特徴で、引き締まった味わいの甲州が期待されています。

一方、南アルプスには約10haのブドウ畑が広がります。畑の中にも約100mの標高差があり、北岳が西日を遮ることで夜間の気温が下がり、酸を保ちやすい環境にあります。

双葉では、登美の丘ワイナリーを思わせるふくよかで熟したブドウが育ち、温暖な豊富では、さらにリッチな味わいの甲州が収穫されます。

同じ甲州でありながら、栽培地によって異なる個性を持つブドウが生まれるのです。サントリーによれば、甲州の自園・自社管理畑は合計約18.5ha。今後、若いブドウ樹が成熟することで、収穫量も増えていく見込みです。

こうした産地の多様化は、甲州の表現の幅を広げるとともに、異なる気候条件での栽培経験を蓄積することにもつながっています。

CHAPTER 03

「THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025」

こうした長年の取り組みから新たに生まれた商品が「THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025」です。

最大の特徴は、上記で紹介した、立科、双葉、南アルプス、豊富という4つの自社管理畑で栽培された甲州をブレンドしていること。

収穫時期は、温暖な豊富の8月末頃から、冷涼な立科の10月末頃まで、約2か月に及びます。

サントリーが一貫して目指しているのは、それぞれの産地で十分に熟した甲州を収穫すること。取材時の説明では、使用するブドウの糖度は平均18.5〜19度程度と、甲州としては高い水準にあるといいます。

冷涼な産地の引き締まった味わいと、温暖な産地の豊かな果実味。それらを組み合わせることで、単一の産地では得られない多層的な香り、はつらつさと凝縮感の両立した味わいを目指しました。

そして、このワインが仕込まれたのが、登美の丘ワイナリーに新設された醸造棟です。

信州塩尻ワイナリーで設備の刷新を進めているのと同様に、登美の丘ワイナリーでも新たな設備への投資が行われています。

畑の選定からクローンの研究、栽培管理、醸造まで。一貫して自社で取り組むことで、それぞれのブドウに適した収穫時期を見極め、目指すワインへと仕上げていく。

「THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025」は、サントリーが進めてきた甲州栽培の拡大と研究の成果を、消費者が実際に味わえる形にした商品といえるでしょう。

CHAPTER 04

日本ワインの未来に向けて

今回、信州塩尻ワイナリーと登美の丘ワイナリーという、サントリーの2つの拠点を巡りました。

信州塩尻ワイナリーでは、90年の歴史を受け継ぎながら、醸造設備を刷新し、土壌の研究にも取り組む姿がありました。

そして登美の丘ワイナリーでは、甲州の栽培適地を見直し、クローンや仕立て方を研究しながら、異なる産地の個性を組み合わせた新たなワインが生まれています。

両ワイナリーに共通していたのは、これまで培ってきた技術や経験を大切にしながらも、従来の方法にとらわれず、より良いワインを造るための選択を重ねていることでした。

気候や栽培環境が変化する中で、これからどのようなブドウを育て、どのようなワインを生み出していくのか。その答えを探すサントリーの取り組みが、日本におけるワイン造りを牽引していくのでしょう。

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