第一回では、スパークリングワインの「泡の持続性」についてお伝えしました。
泡が長く続くことはテクスチャーや見た目の観点でも優れていることは間違いありませんが、味わいとどのような関係があるのでしょうか。
第二回では、スパークリングの「泡の風味」について解説していきます。
泡に風味がある?
個人的に炭酸飲料が好きなためノンアルコールであれば炭酸水、アルコール飲料となればビールを多く摂取しています。
もちろんスパークリングワインも楽しむことはありますが、いずれにせよ「泡の香りや味」について真剣に対峙した経験はほとんどありません。
私たちにとって炭酸というのは、「爽快さ」や「のどごし」、「口内ではじけるようなテクスチャー」が魅力であり、泡の味について真剣に考えている方は炭酸飲料関係者くらいのものではないでしょうか。
しかし近年、シャンパーニュ研究の中で、“シャンパーニュの泡に風味がある”ということが発見されたと話題になっています。
一体、どういうことなのでしょうか。
化合物の立ち上がり
シャンパーニュをグラスに注ぐと、空気中に飛散せずに残った約20%の泡が繊細に立ち上り続けます。
じつはこの泡が立つとき、ワインにふくまれている化合物も一緒に立ち上がってくることがわかったのです。
まず、泡が液面まで立ち上ると、当然はじけます。
ワインに含まれる化合物はこの泡の飛沫の中にふくまれているため、空気中に放出される…という流れです。
私たちはグラスに口や鼻を近づけてシャンパーニュを飲みますが、泡は絶えずワイン液面ではじけ飛沫を飛ばしています。
要するにスパークリングワインの場合、飛沫にふくまれていた風味もキャッチしながら楽しむことができるということなのです。(スティルワインより多くの要素を感じている可能性アリ)
シャンパーニュの風味ではない風味?
泡にも風味がある…というと、“シャンパーニュの味が泡に移動したということ?ということは、泡だけでシャンパーニュの味わいを楽しめるということか!”と思う方も出てくるでしょう。
たしかに泡がシャンパーニュの風味を持って液面に立ち上り、飛沫となるのであれば誰もがそう思うはずです。
しかし、わざわざ科学者たちが研究しているわけで、それだとつまらない。
そこでさらに調べるとユニークな結果となったことがわかってきたのです。
新たな風味が生まれていた
シャンパーニュから生まれた泡の飛沫を調べたところ、なんとシャンパーニュ自体の組成とは異なっている化合物が多く発見されました。
例えば…
- デカン酸(カプリン酸)…香ばしさ、酸っぱい
- γ-デカノラクトン…ピーチ様、甘やかな香り、フルーティー
- ドデカン酸(ラウリン酸)…メタリック、辛口
- ミリスチン酸メチル…甘い、ロウのような香り
これらはシャンパーニュに含まれていない化合物であり、さらにこれがシャンパーニュの風味や芳香に関与していると示唆されているわけです。
じつはシャンパーニュの風味だと思っていたものが、泡が生み出したものだとしたら…。
奥が深いですね。
スパークリングワインがますます楽しくなる
今回シャンパーニュを取り上げましたが、瓶内二次発酵で丁寧に造られているスパークリングワインであれば、泡の飛沫にさまざまな芳香がふくまれている可能性があります。
また、タンク内二次発酵や炭酸ガス注入によるものも可能性はあるでしょう。
ただし第一回でお伝えしたように、“泡が長持ちする”ということはそれだけ泡由来の芳香を長い間楽しめるということ。
そのため、このシャンパーニュのような瓶内二次発酵で造られているものをおすすめしているのです。
もちろん、日本ワインにも近頃こだわって造られた瓶内二次発酵のスパークリングワインが増えてきています。
スパークリングワインは奥が深い…。
ぜひ、あらためて泡の香りや風味を楽しんでみてはいかがでしょうか。
参考
カリカリベーコンはどうして美味しいにおいなの? Andy Brunning 著 |高橋 秀依 訳 |夏苅 英昭 訳