プロの直接指導を受けながら、ご自身のオリジナルワインを造るプログラム「あなただけのワインづくり体験」。
9月にリリースされたこちらは「飲み手が生産の最初の工程から関わる」という新しい試みのワインづくり体験プログラムとなっています。
テイスティング、そして“このワインをどうするか”会議
参加者みなこの日を楽しみに待っており、もちろん全員参加のテイスティングは、東京の会場にて行われました。
ステップ3となるこの日は、主にこの3つの課題がありました。
①前回までの復習(収穫・選果・仕込み・各種計測や分析など)
②白ワインとオレンジワイン、2つのキュヴェをテイスティング
③このワインを「どう仕上げ、どう世に出すのか」を参加者全員で議論
【①前回までの復習(収穫・選果・仕込み・各種計測や分析など)】
雨の中の収穫後、酸っぱい粒、青い粒、黄色く熟した粒が混じっており、未熟果を外す作業にかなり時間を要した選果は、今回のポイントのひとつでしょう。
「せっかく綺麗にしたなら、醸してみよう」という一言から、当初は搾汁中心の想定だったプランが、オレンジワインにも挑戦する流れに変わりました。
“白(搾汁して液体を早めに分ける)”と、“オレンジ(果皮や種と接触させる)”。同じブドウから、二つの性格を生む設計がここで決まったのです。
復習では、仕込み時の分析値も共有されました。
- 収穫前はBRIX 24〜25と言われていたが、搾ってみると少し下がる(畑の数値からマイナス1〜1.5程度落ちることがある)
- 比重は 1.095 と高めで、潜在アルコールは 12.5〜13% になりそう
- 濁度は 200前後(白は200〜300が一つの目安)
- ただしYAN(酵母が利用できる窒素源)は 160 と少なく、発酵が止まるリスクがあるため、窒素源を上乗せして補強した
ワイン造りは“感覚”の世界とイメージされるかもしれませんが、こうして見るとむしろ理科実験のように数値を追いながらの作業であることを実感します。

【②白ワインとオレンジワイン、2つのキュヴェをテイスティング】
まず最初の1時間は試飲とテイスティングコメント。田村氏は「まず飲んでみて、白とオレンジ、2つのキュベをこのまま別々に瓶詰めするか、混ぜるか。いたずらしながら議論しましょう」と提案します。
白:酸が鋭い、でも香りが良い
分析上もpHが 1.29 と高く、恐ろしく酸っぱい。
テイスティングコメントは、「白の方が口に残る酸」「甘やかさ(果実感)があるのに、酸の印象が勝つ」「香りがすごく良い。ミネラル感も感じる」といった声が上がった。
オレンジ:やさしい、旨み、脂に合う
オレンジは「ナッツやドライフルーツっぽい香り」「うまみ」「ほのかなタンニン」「癖のあるチーズにも合いそう」と評価が厚い印象です。
「どっしり太陽のオレンジ”というより、土や畑の凹凸、造成前の風景を連想させる」など落ち着いた個性として語られたのが印象的です。
発酵経過について、グラフを用いた田村氏のレクチャーがありました。
「オレンジは2日目に発酵が立ち上がり、11月上旬に終わり。対して白は立ち上がりが遅く、途中「このまま進まないのでは」と心配になるほど鈍い期間が続き、12月に入るまで発酵が続いた。」とのこと。
推測として語られたのは、オレンジは皮や固形物から栄養が供給されやすい一方、白は“液体だけ”で栄養が少なくなりがちということです。また、途中で栄養を追加する判断もあり得たが、結果として“ゆっくり長く”という経過になったそうです。

【③このワインを「どう仕上げ、どう世に出すのか」を参加者全員で議論】
さて、この恐ろしく酸っぱいワインをどうするか。この後の仕上げに向けての議論です。いわば第三弾の核になる部分でしょう。
議論は大きく3方向に整理されました。
1)ブレンドで整える
白30L+オレンジ30Lで60Lを1本化する案、オレンジを主にして白を少量混ぜる案など、複数のブレンド案が検討されました。
実際に半々、3:1などを試すと「バランスが良くなる」「でも個性が薄まる」という両面が見え悩みます。
2)白だけ“酸の調整”をする
白の酸を落とす方法として下記3パターンが提案されました。
- 除酸(化学的に沈殿させる)
- 低温処理(-4℃程度で冷やし酒石を出す)
- 甘み付け(ただし微生物リスクが増える)
3)時間に委ねる
「摘みたては脳みそが痺れる酸でも、数年の経過で落ち着くこともある」という実例も共有され、“急にいじらず、時間の変化を楽しむ”という考え方も。
最終的に全員で出した結論は、いったん「白とオレンジ、二本で行く」
- オレンジは個性がすでに魅力的で、このまま磨けば良くなるかもしれない
- 白は酸が強いが、可能性がある。低温処理でどう変わるか見てみたい
- 混ぜてしまうと後戻りできない。初めての経験なのでまずは“別々で見届けたい”
つまり、“二本立てで育てる”という判断です。
ボトリング前に最終ブレンドは可能ですが、次回は濾過・安定化・低温処理を進めたうえで、再度味を見て決めましょうということに至りました。

次回はボトリング、そしてラベルへ
次回(レポートはVol.4となります)は花巻での瓶詰めとなります。
瓶洗い、ガス置換、充填、キャップ、検査…など多くの工程が体験できる予定です。
そして最後に待つのがラベル議論。
今回2種類のワインを仕込んだので、参加者全員共通ラベルはオレンジに。白は各チームで個性を出す案となりました。
共通ラベルを作成するにあたりキーワードとして挙がったのは、「花巻」「雨の収穫」「造成前の風景」「土の記憶」など。
さらには、花巻とのことで宮沢賢治の一節を借りた「雨にも負けず、風にも負けず、僕らは雨の中でブドウを摘んだ」なんてフレーズも。
これらの要素をラベルに忍ばせ、次回最終章で思い出深い”あなただけのワイン”が仕上がるのです。

磯部 美由紀
日本ワイン.jp 編集長
J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
映画 フロマージュ・ジャポネ 制作実行委員会 事務局長
https://nihoncheese.jp
ワイン記事監修実績:すてきテラス
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕


