2022年より「すべては畑から」を掲げるサントリーの日本ワインブランド「SUNTORY FROM FARM」。
この度、さらにこのコンセプトに合わせたワイン造りを実現していくためのFROM FARM醸造棟が完成しました。
約7億円の設備投資を行い、2024年9月から建築が開始してきた新設備。いよいよ完成し、この9月より本格稼働がスタートです。
それに合わせ、見学ツアーもより充実した内容にリニューアル!
説明会の様子とあわせてお伝えいたします。
FROM FARM醸造棟について

ワイン本部日本ワイン部長の宮下弘至氏より、サントリー日本ワインの戦略とFROM FARMブランドについてご説明がありました。
かねてより、ワインの世界に新しい地図を描く「世界に誇るジャパニーズワイン」を生み出すべく数々の取り組みをしているサントリー。
国内外のコンクールでは受賞を重ね、ワイン単体の国際的評価の向上、さらには日本食などのあわせた「ジャパニーズワイン文化」を創造していく構えです。そのためには、日本の自然、風土と畑から向き合い、技と愛情を込めてつくり上げたワイン、長きにわたり受け継がれるサントリーの”ものづくり”が重要とお考えです。

登美の丘ワイナリーでは、複雑な地形から生まれる土壌の特徴を最大限に活かすため、畑を約50区画に分けて、異なった個性をもつブドウをそれぞれの区画ごとに最適な手法で育てています。
適した品種やさらには系統選抜だったり、副梢栽培による成熟期のコントロール、温暖化への対応もしつつ多くの取り組みをしています。
それらの方法にて栽培されたブドウのポテンシャルを最大限に発揮させ、区画・畑ごとに多彩な原酒のつくり分けを可能にする設備こそが、この醸造棟の大きなポイントです。
具体的な内容については、登美の丘ワイナリーチーフワインメーカーの篠田健太郎氏より説明されました。
高品質な果汁を得るためのプレス機は、自然の重力を利用したグラヴィティフローのものの他、シャンパーニュ地方で多く使用されている新型プレス機なども導入。搾汁後はすぐに果汁を冷却できます。これにより、酸化を防いだクリーンな果汁を獲得できます。
また、ブドウに合わせた最適な仕込み方法が取れるよう26台の小容量(0.8-2.4kl)サーマルタンクが導入されました。繊細な温度管理の可能なこれらのタンクにて、それぞれ土壌やクローンの違うブドウごとの特徴を活かした原酒を仕込みます。
さらには、小容量であっても酸素接触を低減した小ロット用新瓶詰ラインが設置されています。
こうして、この醸造棟で、除梗、選果、圧搾、発酵、瓶詰まで一貫して行われ、登美の丘らしい高品質なワインが、年間約1,000ケース生み出されていく予定です。
およそ50の畑から生まれる物語を、ひとつひとつ丁寧に紡ぎ出し世に送り出されていきます。
それぞれの物語、じっくりと楽しみたくなりますね。
新醸造棟や畑も体験できる!リニューアルした見学ツアー

今回リニューアルする見学ツアーは、FROM FARM登美の丘ワイナリーツアー〈プレミアム〉とFROM FARM登美の丘ワイナリーツアー。
リニューアルは9月19日見学から。申し込み受付は、9月4日よりスタートしています。
〈プレミアム〉は、登美の丘ワイナリーの豊かな自然環境を感じながら、つくり手の技、ものづくりにかける情熱と挑戦を体感できるツアーで、FROM FARM醸造棟」はもちろん、「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 甲州 2022」「同 登美の丘 赤 時のかさね」など、計4種のワインを楽しめる内容。
通常のものは、ショップからほど近いぶどう畑を見学、「FROM FARM醸造棟」などの見学を経て、「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 甲州 2022」「同 登美の丘 赤 時のかさね」の計2種のワインを楽しめます。
日本ワインの魅力を五感で体感できる、貴重なツアーです。
【見学ツアーのお申し込みはこちらから】
https://www.suntory.co.jp/factory/tominooka/
サントリーフロムファーム テイスティングセミナー

ワイン本部経営戦略部シニアスペシャリスト 柳原亮氏による、ワインのご紹介およびテイスティングは、「サントリーフロムファーム 登美の丘 甲州 2023」「サントリーフロムファーム 登美 甲州 2023」「サントリーフロムファーム 登美の丘 赤 2022」「サントリーフロムファーム 登美 赤 2021」の登美の丘ワイナリーを代表する4アイテムを体験させていただきました。
10年超のプロジェクト!様々な取り組みが行われている甲州
登美 甲州2022がデキャンター・ワールド・ワイン・アワード2024でBest in Showを受賞したニュースは、いまだご記憶の方も多いでしょう。
甲州はそもそも糖度が上がりにくい(通常15-16度)品種。そのためアルコールに変えた際に力強いワインになりにくい。アタックに凝縮感があり密度が高い世界のファインワインと対等に評価されるには、”いかに凝縮感を高めるか”が鍵となると考え、研究を重ねてこられました。
具体的には、2014年からは凝縮感が出る畑を選び、2015年から甲州の系統選抜を始め、2020年以降は完熟ブドウだけを選んで収穫していくなど取り組み。
その結果、登美 甲州を目指す区画のブドウは、2019年から右肩上がりで糖度が上がっており、2023年には20度を超えており、無補糖で醸造された記念すべきヴィンテージ。10年以上かけてのこれらの挑戦が結実したものでしょう。

時代はプティ・ヴェルド?!「登美 赤」「登美の丘 赤」の変遷
登美 赤 2021は、日本ワインコンクール2025で金賞受賞したアイテムです。以前からのファンには、おそらく登美は、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロのイメージが強い方もいらっしゃるかもしれません。
2021のセパージュは、プティ・ヴェルド56%,メルロ33%,カベルネ・ソーヴィニヨン11%。ここ数年はプティ・ヴェルドの比率が多くなっている傾向です。これは気候変動に対応しながらより良いワインを求めてきたことに理由があります。
プティヴェルドの強みは、晩熟。夜温が下がる10月以降に一気に収穫期がくるということで、登美の丘の気候に合っているそうです。また、小粒で品種特性として強い風味をもつため、日本の気候でも強さを保つ強みがあります。
一方で、タンニンが強いことや果皮が薄いことでのリスクもありますが、これらをジェントルハングリングにて丁寧に調整されています。
また、2021年は副梢栽培のメルロがブレンドされています。
(副梢栽培・・・ブドウの成熟期をより冷涼な晩秋に移行させる新たな栽培技術。最技術特許を持つ山梨大学と共同研究の形での取り組み)

プティ・ヴェルド(9月3日現在)

(左が通常栽培、すでにしっかりと色づいている。右が副梢栽培の垣根でヴェレゾン途中の状態)
その他、多くの新商品や新ヴィンテージが発表されました。
中でも、注目の2アイテムをご紹介いたしましょう。
「かみのやまメルロ&カベルネ・ソーヴィニヨン 紅のかなで2022」は、これまでメルロとカベルネ・ソーヴィニヨン別々の商品でしたが、今回初めてブレンドしたという。ブドウはすべて山形県上山市産。メルロ59.5%,カベルネ・ソーヴィニヨン40.5%、樽熟成。赤系果実の香りが豊かで凝縮感もしっかりとした赤ワイン。タンニンはシルキーで、全体的にとてもバランスが良い。上代が4,500円なことに驚かされました。
瓶内二次発酵にも力を入れているとのことだが、日本ワインコンクール2025にて金賞・部門最高賞受賞の「津軽シャルドネ&ピノ・ノワール2021」は、津軽のシャルドネ79%,ピノ・ノワール21%を使用し、36ヶ月熟成という贅沢なもの。
しっかりとした果実味と熟成による旨みが感じられる、コンクールでの評価も納得の一本でした。


磯部 美由紀
日本ワイン.jp 編集長
J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
映画 フロマージュ・ジャポネ 制作実行委員会 事務局長
https://nihoncheese.jp
ワイン記事監修実績:すてきテラス
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕
