2021年にオープン、今年5年目を迎えるワイナリー。
北海道の上川地区、東川町の「雪川醸造」にお邪魔しました。
代表の山平哲也氏は、異業種からのチャレンジ。
彼の経験してきた世界から、ワイン造りを見て思うこと、目指すワイン、この地のポテンシャルなど色々お話しいただきました。
ITからワイン業界へ
大学卒業後、外資系のコンピューター会社に2020年までお勤め。在職中はアメリカのカーネギーメロン大学への留学経験もお持ちというITの世界にてバリバリご活躍の経歴を持つ山平氏。
仕事でもプライベートでも豊富に海外経験を積み、多くの国を巡るなかで、人々がワインを日常のものとして気軽に楽しんでいる風景が印象に残り、”日本でも日々の食卓でワインを楽しんで欲しい。こうした風景がもっと当たり前のものになって、日本ならではのワイン文化が育まれていくのに貢献したい。”という気持ちを抱くようになったそうです。
そして、ご自身のライフスタイルを考えていく中で、北海道への移住を具体的に考えることになった際に、「食関係をやりたい」「個人向けのビジネスをしたい」というきっかけから、ワイナリーの立ち上げに至りました。
新規事業の立ち上げ経験を活かし、ワイナリーを開業し運営するためのプロセスを進めてきた山平氏だが、やはり、ブドウを育てることやワイン造りには不確定要素が多い。指示通りに動くコンピュターに対し、予想通りにはいかない自然、企業向け個人向けのビジネスとの違いは感じているそうです。
南アフリカやニュージーランドでのワイン造り
山平氏のスタイルとして、北海道の自社ワイナリーのみならず、南アフリカやニュージーランドでもワイン造りを行っていることも、特徴のひとつでしょう。
その理由は「冬のシーズンに時間があることと、自身の経験値をあげたいから」と、向上心に余念がありません。
南アフリカは自分のスタイルとまた違った造り(ほぼ100%全房発酵、培養酵母を全く使用しないことなど)で、それはそれで勉強になったし、ニュージーランドではピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランを造ってきたので、自身のワイナリーにそのままフィードバックができる。
南アフリカやニュージーランドで造ったワインももちろん自社(雪川醸造)にて販売します。
(上)ニュージーランドでの一枚
(上)日本では見慣れない畑の風景ですが、これは南アフリカで伝統的なbush vineという仕立てです。
土地について〜上川地区のポテンシャル〜
東川町をふくむ上川地区は、北海道のどまんなか。北海道内最大の面積を誇る上川盆地となっており内陸性気候。
そのため夏暑くて冬寒いのだが、これについて山平氏は、
「実は結構ワイン用ブドウ栽培に適してるんじゃないかな。北海道の中でも岩見沢や余市が多いが、それらと比べると夏の気温が高い。しっかりと日照があるから熟度が上がることが期待できます。9〜10月の収穫期には、寒さがより増してくる。他と比べて夜温が低くなるため、酸がきれいに残った葡萄が育つと思う。」と語られます。
年々、気候変動の問題は深刻化を増しますが「ここから向こう10年くらいは、ここ上川地区はブドウを良い条件で栽培できるのではないかと思っている。」とこの土地に期待を寄せます。
山平氏の雰囲気によく似合うレンガ造りの建物が、醸造所です。
もともと農作物を出荷するための倉庫として使用されていたもので、現在は町が所有。気に入ったため、粘り強く交渉して借りることができたそう。
雪川醸造のワインについて
自社での圃場もありますが、現在は主に東川町が管理する畑のブドウ、余市からはナイアガラ、キャンベルなど食用の品種、石狩市からは欧州系のヴィニフェラ(Ch、ピノグリ、SB、PN)を購入しワインを造っています。
スノーリバー ピノ・グリ Hachi 2024
最近リリースした石狩のピノグリは、果実味が全面に出て、シャープさがあるワインになっている。
スノーリバー ロザート 2023
セイベル13053を使ったロゼ。北海道に多い品種。
赤ワインに仕込むことが多い品種だが、ロゼにしてその土っぽさを薄めて、チャーミング感を前面に出した感じ。できるだけ食事の邪魔にならないようニュートラル仕上げている。
スノーリバー ナイアガラセッコ 2024
少々濁りがあるワイン。最近ワインを飲み始めた人たちに好評だそう。醸すことによって香りがつよすぎないようにした。苦味と果実感のバランスのよい一本。限定700本。
スノーリバー ソーヴィニヨン・ブラン ノースカンタベリー 2024
「これがNZのソーヴィニヨンブランです!」と言わんばかりの特徴が全面にでたワイン。南島ワイパラにあるワイナリーにて仕込んだもの。ブドウの状態もとても良かったそう。SBの特徴である芝生など青いフレーバーを楽しむことができる。
<シャルドネ2024(未発売)>
まもなく瓶詰めのシャルドネを飲ませていただきました。
酸がイキキしていて、クリスピーさを感じるもの。リリースは6月中旬予定。
他に樽熟成にしたシャルドネは、もう少し熟成させ冬くらいに出す予定。
つまり、今年の山平氏のシャルドネは、ふたつのスタイルが楽しめる。
ちなみに、それぞれのワインに合わせたプレイリストがオススメされています!
ワインを楽しむ時のBGMとして、参考にしてみてはいかがでしょうか。
よりワインライフが充実することでしょう。
https://www.snowriverwines.com/collections/store
異業種からの新たな視点をもった山平氏のワイン造りおよびワイナリー経営。
「こうあるべき」を持たない彼の存在は、業界に新しい風をもたらすかもしれません。
また、その逆、キャリアチェンジやライフスタイルを考える方にとっても、貴重なロールモデルになり得るでしょう。
試飲付きのワイナリーツアーもスタートされたそうです。ご興味のある方は、ぜひ東川町へ行ってみてください。
いずれの人も、まずはワインを飲んでみましょう!

磯部 美由紀
日本ワイン.jp 編集長
J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
映画 フロマージュ・ジャポネ 制作実行委員会 事務局長
https://nihoncheese.jp
ワイン記事監修実績:すてきテラス
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕