北海道産ワインの注目エリアのひとつ、空知地方。
雪深いこの地で生み出される、酸のきれいなワインは近年とても人気があります。
TAKIZAWA WINERY(タキザワワイナリー)も空知エリアを代表するワイナリーのひとつ。
2023年より新たに代表取締役を務める影山航大氏に、三笠の地について、ワイナリーのことなどお話しいただきました。
タキザワワイナリーは、故 滝沢信夫氏により2013年に設立されました。一番古い木は2006年に植樹されたものです。
影山氏は数年前にボランティアでワイン造りに参加したのがきっかけで、その体験からブドウ栽培やワイン造りに魅了され、当時の滝沢社長に働きたい熱意を伝えてワイナリーに就職。
現在は、ワイナリーの経営も創業者の意志も大切に引き継ぎ、仲間と奮闘されています。
TAKIZAWA WINERY 3つの畑
タキザワワイナリーのワインを飲んだことのある方は、畑の名前がワインの名前になっているためご存知かもしれませんね。
自社畑としては「風の畑」「陽の畑」「木立の畑」という3つの名前の畑を管理し合計で3ヘクタール。
それぞれ標高は、風の畑で60m、火の畑で80m、木立の畑120m。緯度が高い分、標高の高さはそう必要としません。
ブドウは「片側水平グイヨ(Goyou)」という仕立てで栽培しています。
北海道ワインが最初に大規模に始めた、斜めに植えて短梢で仕立てる方法が北海道のスタンダードとなったが、その基本を少しアレンジして長梢で枝をとる。ダブル、木によってシングル、としているのがタキザワ流。
積雪は2mくらいあるため、雪の重さで枝が折れないように、雪のお布団中にしっかりと入るように、斜めにしています。
さらに、冬はこのワイヤーをすべて外す作業が発生します。ブドウも設備も雪や寒さから守り、とにかく不要な危険は避け大事に育てています。
三笠市は海がなく、もともと一日の日較差が大きい地域ですが、お盆を過ぎてよりその差が大きくなります。
ブドウは日中しっかりと光合成をし糖度が上がり、しっかりと冷える夜に酸が残る。糖度の上昇スピードと酸が落ちるスピードのバランスが非常に良いとのこと。
ゆえに、糖度がありながら酸も残っている。だから香りも良い。そんな品質の良いブドウが育つのです。
一方のデメリットとして、やはりストレスのためブドウの収穫量が落ちてしまうことは、経営面としては苦しいところ。
「でも、やっぱり収穫量が少なくても、しっかり味の乗ったブドウをつくっていきたい」と最終的には、クオリティに拘った姿勢を貫きます。
TAKIZAWA WINERYのワインを知る!
さて、畑で聞いたブドウの話に、ワインへの期待も高まったことでしょう。
続編では、影山氏にタキザワワイナリーのワイン造り、およびワインをご紹介いただきました。
タキザワワイナリーの年間生産量は、およそ25,000-27,000本。
ワインの種類は、3つのシリーズがあります。
まずは、「テーブルワインとしてゴクゴク気軽に飲んでもらいたい!」と紹介されたのは、余市の農協から買い付けたブドウで造っているナイアガラと旅路。
「仕事終わりのビール的に楽しんで欲しい」とのことですが、良く冷えた酸がキリッとしたナイアガラ、確かにこれからの季節に良さそうですね。
次に、セカンドラインとして、余市や岩見沢の契約農家さんから直接買い付けているワイン。栽培にもしっかり拘っているブドウで造られています!
そして、自社畑ブドウのワイン。
現在は、ソーヴィニヨン・ブラン2020 リザーブが販売中とのこと。
かねてより、前社長の滝沢氏と「自分たちでしっかりと熟成させて飲み頃になったものを販売したいね」と話していたそうで、その想いを引き継ぎ、2020のソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワール(完売)をリリースされたそうです。
どんなお味でしょうか!?「ソーヴィニヨン・ブランとしては珍しく、穀物っぽさや白トリュフの香りなどがあることが特徴。それでいて酸味もあり、ミネラル感もある。」とても興味深いコメントですね。
ちなみにこの場所は、古くは海底で、掘ればアンモナイトが多く出てくる土地だそう。
そして、この地のピノ・ノワールもやはり気になります。
現在2020は完売ですが、もっとも恵まれた畑と言われる「陽の畑」のピノ・ノワールを5-7年くらい熟成してリリースする予定だそうで、現在大切に保管されています。
さいごに
「やはりここは気候的に恵まれていると思う。葡萄の糖と酸なんかのバランスが抜群によいブドウができる」と自慢のブドウを、野生酵母で発酵させ、MLFの乳酸菌も野生乳酸菌でおこなっている。
かつて、創業者の滝沢氏は「力強い、生命力を感じるワイン。北海道の自然の持つ力を極力引き出すワインづくりを目指している。」と語っておられましたが、この土地をリスペクトし、その魅力を最大限に活かし、伝えていく影山氏の姿は、しっかりと先代の想いが引き継がれているように感じます。
取材にお邪魔した日は、ちょうど三笠市内の社会福祉施設から作業委託の方々が、ラベル貼りの仕事をしていました。
「今日は何の曲にしようか」とテンションの上がるBGMを準備し、今日一日の「やること」を説明しているようでしたが、スタッフはみな影山氏とのコミュニケーションがとても楽しくて仕方がない様子。
そんな風景も含め、”地域の魅力を最大限に活かしたワイン造り”として受け継がれているのでしょう。

磯部 美由紀
日本ワイン.jp 編集長
J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
映画 フロマージュ・ジャポネ 制作実行委員会 事務局長
https://nihoncheese.jp
ワイン記事監修実績:すてきテラス
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕