「水と、土と、人と」をコンセプトに、“物語”のある日本ワインを生み出すサントリーの登美の丘ワイナリー。
2022年9月には“SUNTORY FROM FARM”としてブランドを刷新しています。

そして、今年6月に発表されたデキャンター・ワールド・ワイン・アワード2024(以下DWWA)では、「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」がBest in showを受賞しました!日本ワインとしては初のBest in showです!

まずは、このことがどれほどの快挙であるか簡単にご説明いたしましょう。
DWWAは、1975年に創刊され、現在世界100カ国以上で発行されるイギリスのワイン専門誌「Decanter」が、2004年から毎年開催し、今年で21回目を迎える世界最大級のワインコンペティションです。
「最も金賞を取ることが難しい世界的アワードのひとつ」とも言われているため、当然受賞結果は各国の酒類業界の注目を集めます。

賞の種類は、Platina、Gold、Silver、Bronze。そして出品された18,000点以上のアイテムからわずか50点のみが受賞するのが、Best in showの最高賞です。

さらに、もうひとつ、やはり受賞が難しいコンクールと言われている、インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション(以下IWSC)2024においても、同時にGOLDを受賞しています!

 

SUNTORY FROM FARM「甲州」の取り組み

登美の丘ワイナリーでは、”テロワール”をとても大事にしています。そのテロワールを最大限に活かすために、保有する畑を約50の区画に分けて、それぞれのぶどう栽培を管理しています。
全体の標高は500〜600m。区画ごとのキャラクターを出し、畑から生まれるものをストレートに正しく表現することをモットーにしているということです。

なかでも甲州については「世界に肩を並べるぶどう品種に高めたい」との思いで2010年から力を入れ始めました。
2012年には、土地に適した、イメージするワインの仕上がりに沿ったクローン選びをスタート。2015年に植樹をし、初収穫は2020年のことでした。

彼らが目指す「甲州」は、柑橘や桃など完熟果の多層的な香りがあり、アタックに凝縮感があり密度が高く、柔らかい味わいや気品を持つワイン。
これらを実現するには、そもそもの甲州という品種の特徴を活かしつつも、欧州系品種に比べて糖度が上がりにくいという課題を克服する必要がありました。
そのための主な取り組みを教えていただきました。

【区画を選択】
登美の丘の中で甲州は9区画。とくに「登美 甲州」に必要な味わいを生み出すため、水捌けがよく日当たりが良い2区画を採用。

【適した系統(クローン)を選んで植える】
KW01(香りが強い)、KW02(たくさん獲れる)、KW05(糖度が高い)を選択し、それぞれに合った栽培方法をとっています。

【収穫時のこだわり】
さらに、同じ区画でも完熟したブドウだけを選んで収穫。
これまでの甲州の概念を超える「凝縮感」を追い求めて、収穫直前まで徹底した取り組みを行なっています。

これらの結果、「登美 甲州」を目指す区画は、この4年間で果汁の糖度が急激に上昇しています。

また、穂坂、甲府、勝沼、南アルプスと土壌や気候の特徴が様々なエリアで甲州を栽培しています。
その他、農業生産法人の株式会社ジャパンプレミアムヴィンヤードを設立し自社管理畑を拡大。質・量ともに向上に向けたチャレンジを加速しています。
現在、登美の丘のほかに、中央市に約3.5ha(甲州、MBA)、甲斐市に約2.5ha(甲州)、南アルプス市に約10ha(甲州)を保有しており、なんと2030年の甲州の収穫量297tを計画しています。

甲州への期待

2010年にスタートした取り組みは今年で約14年目、ついにクリーンで爽やかな甲州の特徴を活かしつつも、凝縮感やリッチさを感じさせる甲州が誕生し、世界で最高の評価を得た。
そして、まだまだ計画の途中。
日本ワイン愛好家のみならず、世界中のワインラバーも今後の登美の丘の甲州には目が離せないだろう。

ある記者からの「10年後とか20年後とか長期的な取り組みになると、担当する人間も変わってくると思うが?」という質問に、栽培技師長を務める大山弘平私は、「人との関わり、コミュニケーションをとても大事にしています。栽培も醸造も、担当や役割を超えてしょっちゅうみんなで飲み会してますよ(笑)。先輩からよく話を聞き、そのワインを飲む。そうするとわかることが多くあります。ワインは嘘をつかないんですよ。」と笑顔で応える。

『水と、土と、人と』のキャッチコピーに妙に納得させられる一幕であった。