サンリーの日本ワインブランド、「SUNTORY FROM FARM」。
「水と、土と、人と」をコンセプトに、“物語”のある日本ワインを生み出す注目ブランドです。
今回、「SUNTORY FROM FARM」が考える日本ワインのテロワールを主題に、サントリー株式会社 ワインカンパニー ワイナリーワイン事業部 蟹谷理佳さんにインタビュー。
後編では、UNITED ARROWS LTD. WINE CLUB」の部長 蟹澤徹さんがワインをテイスティングしながらテロワールについて考えます。
ワイン5種をテイスティング
テイスティングする、「SUNTORY FROM FARM」のワインは5種類。
〈テロワールシリーズ〉
- 「SUNTORY FROM FARM 津軽 ソーヴィニヨン・ブラン 2022」
- 「SUNTORY FROM FARM かみのやま メルロ 2019」
- 「SUNTORY FROM FARM 塩尻メルロ 2018」
〈ワインのみらい〉
- 「SUNTORY FROM FARM ワインのみらい 立科町 甲州 冷涼地育ち2021」
〈ワイナリーシリーズ〉
- 「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 甲州 2021」
ワインの特徴や産地の情報を参考に、蟹澤さんがテイスティングします。
「SUNTORY FROM FARM 津軽 ソーヴィニヨン・ブラン 2022」
蟹谷「青森県津軽地区は、とても冷涼な産地です。火山灰土壌でとても水はけが良く、ぶどう栽培には適した産地と言えます。サントリーは約30年前から津軽でのぶどう栽培に着手していますが、じつは津軽では1800年代後期には、ぶどうがつくれていたんです。その後、フィロキセラの影響でりんご栽培が主流になりましたが、サントリーはこの産地にポテンシャルを感じ、地元の栽培家の方たちと共にぶどう栽培に取り組んできた古い歴史があります。ちなみに不思議なのですが、津軽のワインにはほのかに、“りんご”の香りがあるんですよね。」
津軽でさまざまな品種を栽培してきた結果、現在はソーヴィニヨン・ブランはスティルワイン、シャルドネとピノ・ノワールは瓶内二次発酵スパークリングワインに可能性を見出すことができたとのことです。
蟹澤「『SUNTORY FROM FARM 津軽 ソーヴィニヨン・ブラン 2022』には、たしかにりんごの香りを感じますね。酸がしっかりと残っていて、シャープな印象です。ハーブのような青さを感じる香りはありますが、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランにある強いタイプではなく、とても繊細で上品に感じます。白身魚に塩と柑橘をかけた寿司、ボイルした海老など魚介類を合わせたくなる、魅力的なソーヴィニヨン・ブランですね。」
「SUNTORY FROM FARM かみのやま メルロ 2019」&「SUNTORY FROM FARM 塩尻メルロ 2018」
蟹谷「山形県のかみのやま、長野県の塩尻のメルロを飲み比べてみてください。上山かみのやまも水はけの良い土壌と冷涼さが特長で、果樹王国の山形県だけあってか果実味豊かなメルロに仕上がっています。一方、塩尻は標高700mの地区で栽培されているのですが、ここは奈良井川が近くにあるため石の多い水はけが非常に良いエリアです。メルロの産地としても有名な塩尻では凝縮感があるぶどうを丁寧に仕込み、力強くなめらかなワインに仕上げています。が仕上がります。」
蟹澤「かみのやまメルロは甘くチャーミングな香りを感じます。果実味をしっかりと感じることができ、渋みも強すぎずキレイな印象です。マグロの漬けなど、赤みの魚と合わせたくなる繊細さです。一方の塩尻メルロは、香りの要素も多く、非常にパワフルな印象ですね。タンニンはしっかりとしているのですが、シルキーでなめらかなので全体的にとても洗練された味わいです。かみのやまはマグロをチョイスしましたが、こちらはジビエや砂肝、レバーなどと合わせたくなります。」
ちなみに、かみのやまメルロも塩尻メルロもぶどうの特長を最大限に引き出すといったつくりの考え方はほとんど変わらないとのことで、味わいの違いの大部分を占めるのは産地の違い、つまりテロワールの違いが大きいとのこと。
「日本にはテロワールがある」と証明してくれる、そんな2本です。
「SUNTORY FROM FARM ワインのみらい 立科町 甲州 冷涼地育ち2021」
蟹谷「甲州と言えば山梨県のイメージですが、「SUNTORY FROM FARM ワインのみらい 立科町 甲州 冷涼地育ち2021」は、非常に冷涼な長野県立科町で栽培した甲州でつくられたチャレンジの1本です。立科町は冬は雪景色になるような冷涼な地ですが、果実味と酸味を両方維持できるため洗練されたワインが仕上がります。用意したワインはファーストヴィンテージですが、喜ばしいことに『デキャンター・ワールド・ワイン・アワード2023』で金賞を受賞しました。」
蟹澤「外観からすでに酸がしっかりとしている印象を受けます。果実味がしっかりとしていますが、酸が豊富なのでバランスがとても良い。淡い味わいといった甲州のイメージを完全に覆す、新しい甲州ではないでしょうか。これは、本当に驚きました。」
「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 甲州 2021」
蟹谷「登美農園が誕生した1900年代前半頃から登美の丘ワイナリーで栽培されてきたと言われている、甲州。『SUNTORY FROM FARM 登美の丘 甲州 2021』は、サントリーにおける甲州の挑戦の歴史の上に出来上がった重要なワインです。さまざまなクローンの中から糖度と凝縮感が期待できる甲州を選抜した上に、ぶどう樹の房を減らし完熟したものだけを順に収穫するなど、日本人にしかできないような手間暇をかけた甲州のみを原料としています。それぞれに合った仕込みが行われた甲州を最後にアッサンブラージュするかたちで1本のワインが仕上がる、大変贅沢な甲州です。ちなみに、『デキャンター・ワールド・ワイン・アワード2023』では、日本から出品されたワインで唯一のプラチナ賞を受賞しています。」
蟹澤「シンプルに、“おいしい”といった言葉が先に出てきしまう偉大なワインです。自分がイメージする甲州に対するイメージを完全に超越しています。パイナップルを思わせる甘い果実のニュアンスがありながら、酸味がしっかりとしているのでバランスが取れています。果実味と凝縮感、酸味など、レーダーチャートがあるとすれば完璧なバランスに分布している、理想的な甲州だと感じました。」
後半まとめ
テイスティングしたワインから産地の環境による違いはもちろん、それを手がけた人たちの想いを感じることができたという蟹澤さん。
「SUNTORY FROM FARM」では、テロワールによって個性が変化する日本ワインの新たな面白さを体験することができました。
日本ワインにおけるテロワールとは何か。
ぜひ、「SUNTORY FROM FARM」を通じて体感してみてはいかがでしょうか。
参考
https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/