サントリーの日本ワインブランド、「SUNTORY FROM FARM」。

「水と、土と、人と」をコンセプトに、“物語”のある日本ワインを生み出す注目ブランドです。

今回、「SUNTORY FROM FARM」が考える日本ワインのテロワールを主題に、サントリー株式会社 ワインカンパニー ワイナリーワイン事業部 蟹谷理佳さんにインタビュー。

「UNITED ARROWS LTD. WINE CLUB」の部長 蟹澤徹さんと一緒に日本ワインのテロワールについてお聞きしてきました。

前編では、「SUNTORY FROM FARM」と日本ワインのテロワールについて、後編では実際にワインをテイスティングします。

「SUNTORY FROM FARM」について

「SUNTORY FROM FARM」は、サントリーが手がける日本ワインブランド。

同ブランドについてあらためて蟹谷さんにお聞きしました。

蟹谷「『SUNTORY FROM FARM』は、2022年9月6日に立ち上がったサントリーの日本ワイン新ブランドです。自分たちで畑からぶどうと向き合い、さらに自社ワイナリーでそのぶどうを醸造する。私たちのワインづくりに対するこだわり、そしてそこに物語が詰め込まれていることを知ってほしいといった思いから、“FROM FARM”と名付けました。」

また、昨年9月にはサントリー登美の丘ワイナリー(以下、登美の丘ワイナリー)もブランド刷新に合わせたかたちでリニューアルオープン。

まさにその土地でワインがつくられていること、つくり手と対話できる魅力のあること、そこに物語があることに気がついてほしいといった思いもワイナリーのリニューアルに込められているとのことです。

蟹澤「じつはこれまで、何度か登美の丘ワイナリーに訪れたことがあります。ただ、昨年リニューアルしたタイミングでお招きいただいた際、広大なぶどう畑を所有されていることを初めて知りました。実際にぶどうを栽培している風景だったり、本当にこの場所で醸造されていることを知れたり、熟成庫を見ることができたり、“ああ、だからFROM FARMなのか”と理解することができましたね。」

蟹澤さんとしても、ここまでじっくりワイナリーを見ることができたことはとても新鮮だったと言います。

蟹澤「洋服で例えるのであれば、生地を作っているところ、縫製しているところを実際に店舗の入り口でお客さまに見せている感覚でしょうか。なかなか難しいことですが、こういった工程を見てもらうことは重要ですし、クラフツマンシップを感じられるアプローチだと感じます。『SUNTORY FROM FARM』のワインはただ味わうだけでなく、背景にあるクラフツマンシップを“感じる”ことができるワインではないでしょうか。」

テロワールシリーズについて

「SUNTORY FROM FARM」には、大きくわけて4つのシリーズがあります。

  • 〈シンボルシリーズ〉
  • 〈ワイナリーシリーズ〉
  • 〈テロワールシリーズ〉
  • 〈品種シリーズ〉

※登美の丘のワイナリーかオンラインショップのみで販売している限定シリーズ「ワインのみらい」もあります。(一部都道府県流通での取り扱いあり)

今回、〈テロワールシリーズ〉を軸に、“日本のテロワール”について蟹谷さんにお聞きしました。

日本のテロワールは「人」

蟹谷「まず、『SUNTORY FROM FARM』の〈テロワールシリーズ〉は、青森県の津軽、山形県のかみのやま、長野県の高山村といった産地の個性を引き出したワインを楽しんでいただくシリーズとなっています。これら、各産地のテロワールの違いを同シリーズのワインを通して、ぜひ体感していただきたいです。」

テロワールは一般的に、“ぶどうの栽培条件”と捉えられていますが、サントリーではどのように捉えているのでしょうか。

蟹澤「フランスやイタリア、ニューワールドなど国別のテロワールは感じやすいと思うのですが、個人的に日本の中におけるテロワールの違いはあまり意識したことがありません。もちろん、山梨県や長野県、新潟県といった県の違いを意識することはありますが、主にぶどう品種に注目してしまい、どこでつくられているかを意識したことは少ないかもしれません。なので、〈テロワールシリーズ〉はとても興味があります。」

蟹谷「テロワールといえば、ワインがつくられている場所の風土や自然の要素が強いと考えられていますが、日本ワインの場合、“人”の要素もとても強いワイン産地ではないかと考えています。土と水は日本らしさを象徴する要素ですが、つくり手の想いがあり、人の手がとてもかけられているところは、まさに日本ワインの特徴と我々は考えています。日本人の手仕事の丁寧さには私も驚かされます。」

テロワールにおいて海外の場合ぶどうが栽培されている土地が重視されますが、日本ワインの場合、「人」もテロワールの重要な要素であるところは非常に興味深い見解です。

蟹澤「ファッションの世界においても、“〇紬”のように、もともと存在する日本の地場産業がファッションへと繋がっていくということがあると思います。テロワールと捉えるべきか難しいところですが、フランスやイタリアのファッション、アメカジなど、その国の土着のライフスタイルがファッションとして表現されていく部分もありますよね。また、日本人の丁寧さに驚かれたといったお話がありましたが、日本の工場の仕事は大変丁寧で優秀だと感じています。“人もテロワール”といったお話から日本のものづくりの精神がワインづくり、洋服づくりにいかされていると強く感じました。」

前半まとめ

その土地で生きる人たちが築き上げてきた生活と文化が、いつしかスポットライトを浴び、新しい文化を生み出す。

ぶどうの栽培環境だけをテロワールと捉えるのであれば、優れたワイン産地はいくらでも存在します。

しかし、その中でも私たちが日本ワインに惹かれてしまう理由はやはり、「人」の要素が強いからこそ。

蟹谷さんのお話から、日本ワインの新しい魅力をまたひとつ知ることができました。

後編では、実際に蟹澤さんが『SUNTORY FROM FARM』のワインをテイスティング。

産地による個性の違いを体験します。

参考

https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/