山梨県笛吹市に位置するワイナリー、ルミエールは、今から138年前となる1885年に設立した歴史あるワイナリーです。
1885年当時、降矢徳義氏により「降矢醸造場」として創設。
その後、「信玄印甲州園」、「甲州園」、そして現在の「ルミエール」と名前が変わっています。
どれも現在のルミエールを指すものです。

138年もの長きに渡って愛されるワイナリーの魅力に迫ってみたいと思います。

有形文化財「石蔵発酵槽」でのワイン造り

ルミエールの見学ツアー(予約制・有料)に参加した際に、最も注目すべき見どころは、なんと言っても1901年に作られた石蔵発酵槽でしょう。
同時代に、私財を投じ日本で初めての大規模醸造場を建設した、あの神谷傳兵衛氏の指導によるものでした。
ステンレスがまだなかった時代に、耐酸性のある花崗岩によって造られました。
その大きさは、幅1.65m、奥行3.6m、高さ2.25mという人間が数名入れるほど。

こちらの石蔵発酵槽は、1998年に国登録有形文化財に認定されました。
それをきっかけに、再度この石蔵発酵槽を使うことが決まり、なんと現在も年に一度だけこの発酵槽にてワインを醸造しているそうです。
さらには、2018年に日本遺産の文化財にも認定もされました。

毎年9月中旬に仕込みのイベントを行い、そこで造られたワインが出来上がったら、参加者には記念ラベルを貼ってお送りしているそうです。
今年は、9月16日土曜日の開催予定とのことです。
興味のある方は、ルミエールさんに直接お問い合わせくださいませ。

長く続く秘訣?ルミエールのブドウ畑

垣根であったり、棚であったり、棚は棚でも仕立て方が違っていたり。
ルミエールの畑は、一見バラエティに富んでいるように見えます。
少しずつ、農地を買い取ったりして増やしていき、都度その土地にあったやり方で引き継いでいるそうです。
そうして、創業当時からの敷地に加えて今では全部で約4haもの広さを有します。

そのどれもに共通していることは、「余計なものを撒かない」
ブドウ本来の良さを引き出すため、できるだけ自然に近い形にこだわっています。
そのため、足元にはさまざまな種類の雑草も、それなりの丈に育っていました。いわゆる「草生栽培」ですね。
さらには、人工的に耕さない「不耕起栽培」により土作りが行われ、その結果多種の生物が共存する環境「生物多様性」が守られ、多くの微生物が存在する土が完成します。
そうして、地上では虫によるブドウへの食害が減り、地下では水はけのよい柔らかい土壌が作られるという仕組みです。

また、畑については、棚の形状が綺麗に整列している様子が気になりました。
杭ごとに木を植えて棚仕立てであるけれど、垣根仕立てのように整列して管理しているそうです。

「誰でも管理ができるように。」ということも意識しながら、栽培を行なっていらっしゃいます。
長く続いていくワイナリーだからこそ、このような考え方も大切にされているのでしょう。

スパークリングやシードルも!

ルミエールで飲むべきは、赤ワインだけではありません。
スパークリングワインや山梨ならではの甲州による白ワインなども人気がありますね。
醸造所には、タンクや圧搾器の他にも、澱引きの機械などが置かれ、多くのスパークリングワインが生産されています。

すっきりとした甲州によるものから、リッチな味わいのカベルネ・ソーヴィニヨンによるブランドノワールなども!
多くのタイプのワインが造られているので、好みやシチュエーションに合わせて選ぶのも楽しいですね。

また、一年で一番最初に醸造されるのはシードルです。
韮崎地区で8月初旬に収穫された「つがる」により造られ、醸造後は比較的早めにリリースされる予定です。
そのため、フレッシュなシードルを楽しむことができます。
これらもまた人気だそうです。

最近の山梨の気候変化を考え取り組まれている、ムールヴェードルやテンプラニーリョ、プティマンサンなども注目品種です。
また、めずらしい「ミルズ」という品種は、甘酸っぱいライチのような香りが特徴的。
他ではそうそう味わえないチャーミングなワインでした。(エスニック料理なんかに良く合いそう!)

歴史やそこでの文化を大切に守りながらも、時代の変化を注視し柔軟に対応し、いつの時代にも素晴らしいワインたちを生み出しているワイナリー”ルミエール”。
日本遺産に登録された石蔵発酵槽で造られる赤ワインや、古くから造られている山梨県ならではの甲州などで、歴史を感じるのも良し。最近増えてきている、タナやテンプラニーリョなどがブレンドされたワインを試すも良し。
日本ワインの歴史や変遷を、飲んで味わってみてはいかがでしょうか。

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