北海道の中でも特段積雪が多く、国から「特別豪雪地帯」に指定されている岩見沢市。
この雪のイメージにぴったりなワインを生み出しているのが、岩見沢市宝水町にある宝水ワイナリーです。
かつて待ち望まれていたダム湖が大正9年に完成し、地域の炭鉱や北村地区の農地へと運ばれた水は「この地域の産業を支える宝の水」と呼ばれ、そこからこのあたりは宝水町と名付けられたそうです。
こうした厳しい気候の中、様々な工夫を凝らし、どのようなワインが造られているのか、宝水ワイナリー取締役兼ワインメーカー久保寺祐己氏にお話しをお伺いしました。
久保寺氏に聞く、岩見沢市の土地のこと
実は久保寺氏は、ワイン生産量No.1の山梨県出身。その後東京の学校にてワイン醸造などを学びましたが、山梨に戻ることはなく、就職先としてわざわざ北海道のこの地を選んだそう。
地元にワイナリーがたくさんあるにも関わらず、完全にこの地に魅せられて、”造りたいワインのイメージ”を持って、故郷より遠く離れたこの場所を選び、日々ワイン造りに取り組まれています。
宝水ワイナリーは、2006年創業し今年で20年。岩見沢で初めてできたワイナリーです。
そのため、最も古い木は樹齢20年のシャルドネ。
およそ9ha(東京ドーム2個分)の自社畑には、シャルドネ、ピノ・ノワールを中心に11種類のブドウが栽培されています。バッカスやケルナー、レンベルガーなどドイツ系品種も育てています。
緯度はボルドーと同じ北緯37度。しかし気候はボルドーのそれとは違っており、夏は雨が多く、冬は例年2mくらいの積雪となる豪雪地帯。やはりここでも斜めに仕立てられています。毎年、収穫後にはブドウの枝やワイヤーを雪の中に寝かせる工夫がされています。
空知地方を分断するように石狩川が流れていますが、ここはその左岸にあたります。
畑は、小高い丘の東向き斜面。傾斜が30度くらいあり、水捌けがよい。それゆえ作業はなかなか大変とのことでしょう。
こちらも三笠市のタキザワワイナリー同様に、1,000万年前は海底だった土壌。ブドウの根が張る1mくらいのところでちょうど海底だった土壌にあたり、ミネラルや硬質感を吸収してくれています。
できるだけシンプルにつくる
宝水ワイナリーのワインは、綺麗な酸や繊細な葡萄、透明感のあるワインが特徴です。
とにかく「ブドウの特徴を活かすつくりをしたい」と久保寺氏は語ります。
房ごと絞ったり、発酵を長くし過ぎない、適度な抽出に留める、など。できる限りシンプルな造りを心がけ、ぶどうのキャラクターを素直に出すようにしている。
宝水ワイナリー代表取締役 倉内武美氏(中央)
宝水ワイナリーのワインをテイスティング!
一階にはショップとテイスティングコーナーがあり、ここでは気になるワインを小さなグラスでテイスティング可能です。
ワイナリーの二階には、自由に使わせてもらえるカフェスペースがあり、一階のショップで購入したボトルを持ってそのまま二階で飲めるというシステム。
大きな窓からは、一階の醸造施設を眺めることができます。
今回テイスティングさせていただいたワインたちはこちら。
RICCA 雪の系譜 シャルドネ
この雪の系譜シリーズには、ボトルに雪の結晶がデザインされており、なんとも涼やかな印象です。
白い花や蜂蜜のニュアンス。10%樽熟成。
この地の特徴であるきれいな酸がよく表現されています。綺麗な酸味としっかりした葡萄の風味が長く続く。ほどよくミネラリーで土地のテロワールがよく出ているワイン。
RICCA 雪の系譜 レンベルガー
ドイツ系の品種。ブラウフレンキッシュともいいますね。
最近は、北海道の中では生産量が少なくなっているそうです。
べっこう飴や赤系ベリーのアロマ。スモーキーな香りもします。あとから葡萄の風味。緻密なタンニンが心地がよい軽快な赤ワインです。
オレンジピンク
甘口ロゼワイン。白ブドウのポートランドが70%、黒ブドウのセイベル30%、それぞれ発酵後にブレンドしたもの。
ポートランドは、北海道では昔から地元スーパーに並ぶ親しみのある生食のぶどう。そのポートランド由来のマスカットやキャンディの香りに、セイベルからのいちごの香りが加わりとてもチャーミングです。
味わいも外観どおり甘酸っぱいので、エスニックに合わせたり、デザートとしても良さそうです。
フルーツを入れて楽しむのも素敵でしょう。
日本でも特別な豪雪地帯から届く、酸がきれいでミネラリーなワイン。
それらはまさしく雪を連想させるような「冷涼感」「透明感」のあるワインです。
すでに猛暑の日々はスタートしていますが、このような爽やかなきっとワインはテーブルに清涼感をもたらしてくれるでしょう。

磯部 美由紀
日本ワイン.jp 編集長
J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
映画 フロマージュ・ジャポネ 制作実行委員会 事務局長
https://nihoncheese.jp
ワイン記事監修実績:すてきテラス
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕