長野県松本市山辺地区、美ヶ原温泉郷にある追分屋旅館は、和モダンで過ごしやすいお部屋、信州の食材やお酒が楽しめるお食事、弱アルカリ性のやわらかい湯質の温泉と、まさに上質を知る大人の隠れ宿。
実は、その追分屋旅館、ワイナリーも経営しているのはご存知でしょうか。
ドメーヌ・ド・ユノハラは、旅館敷地内に醸造所を構え、およそ1hの自社畑には、ピノ・ノワール、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、デラウエア、ナイアガラなど多くのブドウが栽培されています。
つまり、”滞在できるワイナリー”なのです。しかも温泉。
ワイン好きの悩みのひとつ、ドライバーじゃんけんをせずに済む、車で行けるワイナリーですね。また、有名な温泉郷ですから公共交通機関も便利です。

奈良時代から続く温泉郷に新しい価値
この温泉地の歴史は古く奈良時代から続き、江戸時代には松本城主の療養地でもあったそうです。
無色透明で柔らかく、保温性の高い湯質、美肌効果も期待できそうです。
身体を芯から温めるこの温泉に加わった新たな価値がまさしく”ドメーヌ・ド・ユノハラ”というワイナリーです。
旅館の敷地内に醸造施設を設け、さらにこの温泉地の中で自社圃場をつくりブドウ栽培まで行っています。
コロナ禍で客足が遠のく中、社長の花岡秀敏氏が新たな付加価値をと考え、もともと信州ワインの提供に力を入れていたこと、そしてこの山辺というこの地域が、信州におけるブドウ栽培発祥の地であったことなどから、ワインづくりをはじめたそうです。
今回は、公共交通機関を利用しての一泊二日のドメーヌ・ド・ユノハラ体験の旅のレポートをお届けいたします。
松本駅からバスで20分の好アクセス!
山辺地区という自然豊かな場所ながら、美ヶ原温泉行きのバスに乗れば松本駅からわずか20分ほどで到着します。
松本駅の東口(お城口)を出て、アルピコプラザ前のバスターミナルから乗車。整理券最初に取るタイプです!
美ヶ原温泉郷バス停で下車、里山の空気が感じられる中をてくてく歩くこと数分、追分屋旅館に到着です。
スタイリッシュな看板も、和モダンな入り口もありますのでわかりやすい。


畑の散策と醸造所見学
チェックイン後、まずお勧めは、畑の散策です。
旅館から歩いて5〜6分のところに自然にブドウ畑が現れ、シャルドネやピノ・ノワールの栽培風景を見ることができます。
栽培方法も一様ではなく、棚仕立て、垣根仕立てと品種ごとに最適な方法を選び、使い分けているそうです。
塩尻は砂礫の砂っぽい土壌が多いのと比べ、この辺は森林に囲まれており粘土質で、土の質がとても硬いそう。その分根を張ってくれるんじゃないかと吉田氏は期待します。
また、非常に興味深いのが「猛暑の影響もあるとは思いますが、地熱によって収穫時期が早くなっている気がします。」と、温泉地ゆえに栽培には地熱の影響もあるようです。
また、冬の間には深く掘り起こし、有機物を加えて整えるという丁寧な畑作りが行われています。

”クラシックであるために手間をかける”吉田氏のワインづくり
畑のあとは、醸造所を案内してもらいました。
醸造責任者である吉田健人氏のワインづくりは「余計なことをしない。ブドウの味をそのまま表現する」ことがポイント。
しかし話を聞けば、余計なことはしないけれど、かなり手間はかけていることがわかります。
例えばいま造っているデラウェアは、醸し発酵のオレンジワインに仕上げています。野生酵母で樽発酵させたそうで、甘酸っぱいアロマが魅力的なワインです。
ピノ・ノワールはなんとまだ熟成途中のものをテイスティングさせていただきました。すでにフローラルの華やかな香りが上品で酸は活き活き、このあとさらにどう変化していくのか、非常に楽しみです。(リリースは今年の冬予定)
さらに、手間をかけて丁寧につくっているのはシードルも同様。
シードル・バレルエイジド2023は、アメリカのグリンドキャップというコンクールで銀賞を受賞した逸品です。
5種類のリンゴをブレンドして12ヶ月樽熟成。さらに瓶内二次発酵してデゴルジュマンをしています。そして日本ではワインでも珍しい”ドザージュ”の工程を行っているのです。これ、とても美味しいです!
信州食材とワインのペアリング体験が叶う!旅館×ワイナリーのディナー
ワイナリー見学後、ゆっくり温泉で温まったらお食事会場へ。
お食事処の個室でいただく先付けからデザートまでの会席コースは、信州産の食材がたっぷり使われているのはもちろん、テーブルコーディネートも和モダンで素敵です。
ワイナリーのある旅館ですから、とりわけペアリングにはどうしても期待が高まります。
乾杯はUSHIYAMA VINEYARDのロゼスパークリング。かなりキリッとした酸が特徴的で、食欲が刺激されるワインです。
例えば、鹿肉のハツ。鉄分や野性味を持つこの食材に対し、ロゼスパークリングの酸と泡で包み込むマリアージュを楽しみます。

また、メインの信州牛の赤ワイン煮込みには、山葡萄100%の赤ワイン「藤 2024」。酸の輪郭はしっかり残しつつ、樽熟成によって丸み感じるこの赤ワインは、お肉料理の旨味をさらに引き上げる働きをします。
この会食コースのほか、追加で「マリアージュセット」をオーダーし、さらにワインとの相性を追求することも可能だそう。
フランス料理では、よくチーズでこのような楽しみ方をしますが、信州食材でそれが叶うのがまた面白いですね。しかもこのマリアージュセット、季節ごとにソムリエやつくり手たちが試飲試食を重ねて考案しているもの。
プロフェッショナルたちからの提案、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

会席コース自体にボリュームがあり、さらに追加のマリアージュセットも楽しめば、かなりお腹がいっぱいですが、もし飲み足りなければ、ワインコーナーにて信州ワインを購入してお部屋で楽しむことも可能です。
ディナーを済ませて戻ったお部屋には、さらにナイトキャップを楽しめるよう、ちょっとしたお夜食も準備されているのです。
充実の滞在につき、すでに一日目で2,000文字を超えました。
後編に続きます。
取材時2026年3月現在の情報です。
詳細やご予約につきましては、旅館およびワイナリーへお問い合わせください。
追分屋旅館HP
https://www.oiwakeya.com/
ドメーヌ・ド・ユノハラ
https://shop.oiwakeya.com/?srsltid=AfmBOopZMIX4Dx6cRdXeealwuG8NNNBZqY-EyfT_EX80IHxENqJ8tRXC

磯部 美由紀
日本ワイン.jp 編集長
J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
映画 フロマージュ・ジャポネ 制作実行委員会 事務局長
https://nihoncheese.jp
ワイン記事監修実績:すてきテラス
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕
