写真:ドメーヌ茅ヶ岳(山梨県)

ドメーヌ茅ヶ岳

(山梨県)

ワイナリー情報

ワイナリー名
ドメーヌ茅ヶ岳
代表者名
安部 正彦
住所
山梨県韮崎市上ノ山3237-6
URL
http://d-kayagatake.com/
MAIL
info@d-kayagatake.com

ワイナリー取材記

安部正彦(代表)

-ワイナリー設立までの経緯を教えていただけますか。

安部 両親が生食用(巨峰、ピオーネ)とワイン用(ベリーA、甲州)のブドウを栽培していました。子供の頃から両親からは、農業は大変だからサラリーマンがいいんじゃないのと言われて育ちました。そして結局はサラリーマンをやって、50才を超えた頃に行き詰まりのようなものを感じ、やっぱり使われる身はイヤ、自主的に切り拓きたいという気持ちが高まり、せっかく両親のブドウ畑があるわけだから、それをやったら一番近道なんじゃないかと思ったわけです。山梨の中のブドウとワイン。誰が聞いてもそうだよねっていうブランド化されています。その中に自分のブドウ畑がある。他の人に比べるとすごい恵まれているんではないか。両親がブドウを作って売って、そのお金で自分が育ったということもあり、自分を育ててくれたのはブドウ。であればそれを活かす、磨くことが大事だと思いました。そんな時、山梨大学のワイン科学コース という修士課程があり、そこは一般人も受験資格があったのでそこを受験して2年間学びました。柳田先生という乳酸菌を専門としている研究室に入りました。 ブドウからできるワインという魅力。人を惹きつけるブランド力。自分にはブドウがある。そして学校で知識を得ることができた。となれば、やるしかない。ということもあり、最低限、自分でできる範疇からスタートしました。

 

-二番果(新梢を意図的に切って収穫時期を遅らせる方法)にチャレンジされていますね。

安部 もともと札幌のワイナリーにいらした岸本先生の助言がきっかけです。食用ブドウを冷蔵保存して冬に食べられるようにしたいという雑談の中で、晩秋に収穫できるブドウができないものかと話した時に岸本先生がひらめいたようです。うちのブドウ園を利用して2年くらいで確立しました。5月の半ばくらいに新梢が出てきますがそれを花穂と一緒に切り落とします。すると副梢が出てきてそこに新たな花穂が出てくる。それを利用します。

 

-人の手によって収穫時期を遅らせるんですね。

安部 そうです。生まれを一ヶ月遅くして、成長自体を一ヶ月遅れにします。

 

-最初のヴィンテージが2015年。必要最小限の設備でスタートされましたがそれがいきなり品評会で「ベスト日本ワイン」に輝きました。

安部 恵まれていました。スタートして3年(2015、2016、2017)やってみて、2015年のブドウの出来が一番良かったです。補糖もほんのちょっとで済みました。ワイン特区についても韮崎市が取ってくれていた。小規模でスタートできたのは幸運でした。

 

-今後はどんなワインを造りたいですか?

安部 一緒に栽培をやっている人がメルローを3年前に植えて、去年くらいが実が成りだしました。今年(2018年)それを使っていいよと言われているのでチャレンジしたいと思っています。

 

-地域を盛り上げる構想をお持ちです。

安部 韮崎ぶどうプラネット計画です。地域の底上げをしたいというのが目指すところです。ガチャガチャのカプセルのようなものを紙で作ってそこにブドウを4粒入れて電車の車内で売ったらどうかとかそういう新しい売り方、取り組みをやっていきたいと思っています。あとは宿泊研修アカデミーを作りたい。都会の人に無料で泊まってもらう代わりに、ブドウ栽培の作業を手伝ってもらったり、ワインの醸造を手伝ってもらったり。ブドウ栽培農家がどんどん減っていくなかで、こういう施設をきっかけに後継者を見つけていければと考えています。そこにブティックワイナリーが4軒くらいできれば、地域として盛り上がると期待しています。

 

-ドローンを栽培に役立てていますね。

安部 はい。ドローンでブドウの枝を認知して栽培に役立てるという特許を取りました。上からブドウ畑(棚栽培)を写真撮影してそこからいろいろな情報を判断していきます。着花房予測、翌年どこに何房のブドウをつけたらいいかという予測もしていきます。最終的にはその畑の「栽培図面」を作成し、栽培者は区画をわけてここのエリアには10房、隣は9房だとか図面の通りにやっていくことで無駄な作業を省く、なおかつ品質の高いものを作る近道になると考えています。まだいろいろ課題はありますが。ブドウ産業って、ロボットが栽培するわけでないですから手作業が必要です。絶対に人がいないと無理なわけです。ただ、その作業を無駄にしたくない。この通りやれば確実だよというものを示してやる必要があります。

 

-醸造を手掛けられて3年になります。

安部 基本がようやく分かってきました。基本はシンプルなんです。でもそれを認識してやっている人は意外に少ないかもしれません。例えば赤ワインであれば発酵中、25度~30度をキープしなければいいものができないとか、頭では分かっていても小規模ワイナリーでは設備の問題でできない場合があります。でもこの基本をちゃんとやらないと香りがとんじゃう、香りが出てこないとか、いろいろな弊害が出てくる。あとは、最終的にはやはりブドウ。ブドウ以上のものはワインにできない。そういうことがよく分かってきました。

 

-ワイン造り以外にご趣味をお持ちですか?

安部 サッカーですね。僕自身はやらないんですけど地元のヴァンフォーレ甲府のボランティアスタッフをしています。畑が忙しくてなかなか観に行けないないですけど応援しています。