8月29日、東京・日本橋で「日本ワインコンクール2026」の受賞ワインを中心に味わうテイスティングイベントが開催されました。
会場には北海道から大分まで、全国24社から59銘柄以上が出品。多くのワイナリーから生産者が参加しました。
イベントは10時から18時まで4部制で行われ、その後には軽食付きの懇親会も開催。一般のワイン愛好家から業界関係者まで、チケット販売数は全体でおよそ150人分に上ったといいます。
来場者たちは、直接つくり手の話に耳を傾けながら受賞ワインを味わうという贅沢なひとときを楽しんだようです。
同じ品種のヴィンテージが受賞!異なる表情に驚きも
山形県鶴岡市から参加したピノ・コッリーナ松ヶ岡では、「松が丘シラー 2022」と「松が丘シラー 2023」という異なるヴィンテージそれぞれ受賞!比較テイスティングが楽しめました。
同じブドウ樹のシラーですが、キャラクターがかなり異なります。
2023年は華やかな果実味が感じられる親しみやすいスタイル。一方、2022年には酸の存在感があり、より複雑な表情を見せるのです。
生産者は「2023年は日射量が多く、フェーン現象などの影響もあって高温となった。一方の2022年は極端な高温の日が少なく、夜温が下がる日が多かったことから、ブドウの酸が比較的ゆっくりと変化した」と語ります。
日本海から直線距離でわずか約17kmという畑には、日中は海から西風が入り、夜には山から乾いた東風が抜け、4月から10月のブドウ生育期間には日照にも恵まれるといいます。
日本ワインコンクールの受賞ワインを一堂に味わえるだけでなく、こうした話を生産者から直接聞きながら確かめられることも、このイベントならではの体験でしょう。

九州の赤ワインに、新たな可能性
大分県の安心院葡萄酒工房からは、「 安心院ワイン 極果 プチ・ヴェルド 2024」が人気を集めていました。
同ワインはプチ・ヴェルドとして2年目のヴィンテージ。2024年はブドウの熟度が非常に高く、熟成状況を見ながら「定番商品として販売するにはもったいない」と判断し、特に優れた原料やヴィンテージから造られる「極果」シリーズとしてリリースされたという。
そして日本ワインコンクール2026では金賞を受賞。同社にとって赤ワインでの金賞受賞は初めてとなります。
安心院葡萄酒工房ではこれまでにもシャルドネをはじめ、多様な品種に取り組んでこられ、現在は3カ所、合計約30haのブドウ畑を持ち、プチ・ヴェルドをはじめ新たな品種の可能性も追求しています。
まだ2年目という若い取り組みから生まれたワインが評価されたことは、九州における赤ワインの可能性を考えるうえでも興味深い結果でしょう。

「高畠といえばシャルドネ」から、赤ワインという次の柱へ
さて、赤ワインへの期待が続きます。
高畠ワイナリーから紹介された金賞受賞ワインは、メルローを主体にカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドした赤ワイン「高畠ローグル・ブルー 青おに 2022」。
長年シャルドネで高い評価を得てきた一方、ボルドースタイルを目指す造り手を有する同社は、赤ワインにも継続して力を注いできました。
生産者は「『高畠といえばシャルドネ』というイメージが非常に強かったのですが、私たちとしては赤にも力を入れてきました。こうして賞をいただけたことは本当に嬉しいです」と語ります。
今飲んでも美味しいですが、上質なボルドーの赤ワインらしく、まだまだ熟成できそうな気配を感じました。こうしたワインが上代4,400円前後とは驚きです。

独立後、初めてコンクールに出品
山梨県のカーヴ・アンは「2025 A Table 白」が銀賞を受賞しています。
他社のコンサルタントとして、クライアントのワインをコンクール受賞へ導いてきた安蔵正子氏ですが、意外なことに、独立後自身のワインを日本ワインコンクールへ出品したのは今回が初めて。現在約4,400本を生産する主力商品を、まずはコンクールに出してみようと考えたといいます。
「銀賞を受賞できたことは励みになります。生産量も増えてきているので、これからさらにバランスを求めて造っていきたい」
目指しているのは、特別な場面だけで飲むワインではなく「食事を選ばず、気づいたら一本なくなっている。それが理想です」とのこと。
また、お隣のブース、ジオヒルズワイナリーの「ファン・トム・ブラン2025」は、香りはアロマティックながら落ち着いた味わいで、様々な料理に合わせやすいであろう白ワイン。品種非公開とのことですが、飲んでみてわかった方にはこっそり教えてくれるかもしれません。
井上ワイナリーの「山北アルバリーニョ 2025」は安定の高評価。こちらは、アルバリーニョの品種特性がしっかりと出た、大変華やかなアロマを感じるワイン。いつまでも香りを楽しんでいたい一本です。
三生産者のワインを続けてのテイスティング、それぞれのアイテムが活躍しそうな登場シーンも違っており、ワインの個性の面白さを実感します。

受賞を、地域の自信につなげる
長野県塩尻市北小野を拠点とするキリノカワイナリーは、小野盆地の北小野と小野で栽培されたシャルドネをブレンドしたワイン、「メゾン・ド・キリノカ シャルドネ 白鷗 2025」で金賞を受賞しました。
「シャルドネという欧州系白品種の中でも出品数の多い品種で金賞を取れたことは、僕自身も嬉しいですが、地域で栽培に関わっている人たちの自信にもつながると思っています」と語ります。
今回の受賞の喜びは、ワイナリーだけのものとは考えておらず、キリノカワイナリーが掲げる目標ひとつ「小野という土地のテロワールを世界に認知してもらう」そのための「一歩」と捉えているようです。

ワインを通じて社会とつながる
今回のイベントでは、受賞ワインのテイスティングに加えて、各種チャリティー企画も展開されていました。
キリノカワイナリーでは、がん治療研究への寄付につながる「DELETE C 大作戦」に参加。
比較的手に取りやすい価格帯の「杜音(もりね)おごっそ」シリーズ各種を購入することで、その売上の一部ががん治療研究に寄附される仕組みです。
キリノカワイナリー代表の沼田実氏は「ワインは人と人とのコミュニケーションを生む飲み物だからこそ、環境問題や医療、地域社会など、さまざまな社会課題とつながることができると信じてます。生産者一人ひとりがそうした意識を持つことも、これからのワイン業界には必要なのではないか――。そんな考えです」とのこと。
https://www.delete-c.com/daisakusen
また、「令和8年熊本地震 復興応援チャリティーワイン」のコーナーも設けられていました。
参加者が1杯単位でワインを購入。売上代金の全てが赤い羽根共同募金義援金として送られる仕組みです。
主催者は、受賞ワイナリーの一つでもある熊本ワインファームの存在に触れながら、「熊本といえば、今日出展している熊本ワインファームさんもありますし、みんなで助けたいという気持ちです」と開催の思いを語りました。
受賞ワイン味わう場にとどまらず、ワインを社会への小さなアクションへつなげたことも、今回の開催の特徴のひとつでしょう。
さいごに
主催者によれば、今回の参加者は関東近県が中心だったといいます。一方で今後については、「山梨から足を運んでくださったり、北海道や九州からでも来ていただけるような会に育ったらいい」と期待を寄せます。
全国のワインが東京に集まるだけではなく、そのワインを介して各地の土地やヴィンテージ、造り手の現在を知る。来場者にとっては、日本ワインコンクールの受賞をきっかけに、日本ワインの“今”に触れる一日となったのではないでしょうか。


磯部 美由紀
日本ワイン.jp 編集長
J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
映画 フロマージュ・ジャポネ 制作実行委員会 事務局長
https://nihoncheese.jp
ワイン記事監修実績:すてきテラス
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕
