6月10日に、国産乳酸菌「Jチーズスターター」のワークショップが開催されました。
以前に弊メディアでもお伝えしていますが、現在国産乳酸菌の研究開発、利用推進への取り組みが、公益財団法人 日本乳業技術協会主導で行われています。
国産ナチュラルチーズの品質向上・差別化を目的とするもので、業界で期待が寄せられているプロジェクトです。
今回のワークショップは、そのJチーズスターターのさらなる周知とチーズ試作依頼、そしてチーズ工房のみなさまからの要望聴取、工房同士の情報の共有を目的としたものだそうで、多くのチーズ工房が真剣に受講し、活発な意見交換が行われました。
ワークショップの概要
24のチーズ工房がリアルで、12のチーズ工房がオンラインで参加しました。
すでにJチーズスターターを使用したチーズを商品化している工房もあれば、今回初めてトライしてみたところなど状況は様々です。
今回は、実際に使用してみての感想や結果が、乳酸菌の種類ごとに発表されました。
味わいはもちろん、熟成のスピード、添加する量、トータルコストの違いなどが具体的にレポートされました。
これらの違いについては、最終的に我々消費者にどのようなインパクトが与えたれるのかも気になります。
現在、Jチーズスターターは、下記4種の乳酸菌が開発され補助スターターとして試作使用されています。
<OUT0010>帯広市の酒粕を分離源とした乳酸菌。添加したゴーダチーズが消費者型堪能評価で高い評価を受けている。
<33-5>黒松内町の熟成チーズを分離源としたもの。チーズ風味、ナッツ風味、旨み等成分が増量し、香りと旨みに特徴。
<P-17>札幌市の熟成チーズを分離源としたもの。高温性のどさんこ乳酸菌、硬質系チーズへの活用も期待。
<OY-57> 那賀川町の三五八漬けを分離源としたもの。地場産漬物のとちぎ乳酸菌が活きた薫るチーズ。
試食会の様子
24種の試作チーズを、Jチーズスターターの添加あり/なしの比較や、どの乳酸菌を使用したものかの表記を見ながら、香り、食感、触感、味わいなどを慎重に確認していました。
「ハード系の方が、添加有り無しの違いがわかりやすい」「このチーズに関しては、OUT0010使用の方が圧倒的に美味しい」「外観の色味がすでに少し違いがあるようだ」など、専門家たちがコメントしあう様子がみられました。
さいごに日本乳業技術協会から、前年度のJチーズスターター試作品分析と事業参加についての説明がありました。
青かび、カマンベール、ハードなどチーズの種類ごとに、そして試作菌株ごとに、各遊離アミノ酸量の変化、熟成度合い(窒素量をもとに)、テクスチャー、一般成分量、そして官能評価がすべて数値にて示されています。
造り手にとっては、こうした分析を受け、数値にて他者との比較ができることも試作プロジェクトに参加するひとつのメリットかもしれません。
さいごに
レンネットについては、国産のものを使用している工房も出てきていますが、乳酸菌についてはまだこれから。
このプロジェクトにより、純国産のナチュラルチーズの誕生に期待が高まります。
”日本らしさ”はどのように表現されるのか、今後の展開を楽しみにいたしましょう。
そして、まだお試しになっていないチーズ工房のみなさま、今なら生乳代、消耗品費、備品費相当の助成も受けられたり、試作チーズの成分分析や官能検査を無料で受けられるそうです。
また、菌株所有機関の専門家のアドバイス(訪問、電話など)も無料で植えられるとのこと。
ご興味持たれた工房のみなさま、ご連絡してみてはいかがでしょうか。
公益財団法人 日本乳業技術協会
https://www.jdta.or.jp/nar2.html

磯部 美由紀
日本ワイン.jp 編集長
J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
映画 フロマージュ・ジャポネ 制作実行委員会 事務局長
https://nihoncheese.jp
ワイン記事監修実績:すてきテラス
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕