日本で初めて、ワイン産地としての地理的表示(GI)の指定を受けたのが「山梨」(GI Yamanashi)。
2023年7月のことでした。
指定から10周年を記念し、GI Yamanashi 10th アニバーサリー〜甲州の輝き ワインと和食の調和を世界へ〜が開催されました。
▶️GI山梨とは
GI Yamanashi 10th アニバーサリー〜甲州の輝き ワインと和食の調和を世界へ〜
はじめに東京国税局長 富山一成氏がご挨拶され、日本産品ブランド価値の向上と輸出促進に向けては、産地などによる努力の積み重ねに加え、幅広い社会的認知が必要と考えているため、様々な施策に取り組むご意向を述べられました。
山梨県ワイン酒造組合会長を務める勝沼醸造の有賀雄二氏は、「適格な価値と信頼できる評価を与えられるものとして地理的表示はなんとしても認められたい」と、ワインとして初めての申請を進めた当時を振り返りました。
彼らの努力により、ワイン事業者全員の同意のもと、国税庁長官の指定を受けたのが2013年7月。
さらに同年12月に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、2013年は両者足並みを揃え日本の食文化をグローバルに発進する記念すべき年でした。
同年にスタートした官能検査は、現在までに107回の審査が行われており、審査基準はより厳しくなっているそう。
重要なのは、「山梨の特性を表しているか」。
審査が厳しくなればなるほど、消費者への信頼は増すものと考えているそうで、それは同時に自ずと品質向上につながっているものでありましょう。
現在、気候変動や地球規模での環境への配慮など、取り巻く状況は厳しいものがあるが、取り巻く環境の課題解決事業を推進し、品質向上につながるよう、向こう10年もさらなる発展を目指したいと述べられました。
さらには、和食と甲州ワインのさらなるグローバリゼーション推進に尽力したいとの想いもお聞かせくださりました。
有識者によるパネルディスカッション
後藤奈美氏(酒類総合研究所前理事長)の進行で、トップソムリエや料理人等有識者による山梨ワインについてのディスカッションが行われました。
井黒卓氏(「ロオジエ」シェフソムリエ兼ビバレッジディレクター)によると、最近は、日本ワインや甲州という品種について理解される方も増えてきている。ご存じなくても試されてみて、優しい味わいに評価をいただく機会は多い。そして、海外からのお客様も興味を持つ方が増えているという現状が紹介されました。
庄内文雄氏(サントリー登美の丘 チーフワインメーカー/ 山梨県ブドウ酒造組合 副会長)からは官能審査会の詳細を説明いただき、有賀会長の話す「厳しい審査」を具体的に知ることができる内容でした。
仲田道弘氏(やまなし観光推進機構理事長)は、行政の視点からGI制度について、知的財産の保護や輸出においての重要性について、具体的な事例などを交え語られました。
甲州と和食のマリアージュ体験
野永喜三夫氏によるGI山梨ワインと和食のマリアージュを、各ワイン生産者からの説明を聴きながら実際に体験できるという贅沢な内容。
野永氏が料理長を務める「日本橋ゆかり」では、なんとワインは国産ワインだけ。
和食とのマリアージュを楽しんでもらいたいことから、そのようにされているそうです。
山梨ワインを楽しめる交流会も
さらには、GI山梨ワイン試飲交流会が行われ、多くの方がそれぞれのワイナリーの「山梨らしさ」を確かめていました。
<交流会出展ワイナリー一覧>
・アサヤワイナリー
・ALPS WINE
・勝沼醸造株式会社
・錦城葡萄酒株式会社
・グランポレール勝沼ワイナリー
・シャトー酒折ワイナリー
・シャトー・メルシャン勝沼ワイナリー
・シャンモリワイナリー
・蒼龍葡萄酒株式会社
・登美の丘ワイナリー
・フジクレールワイナリー株式会社
・MGVsワイナリー
・まるき葡萄酒株式会社
・マルス穂坂ワイナリー
・丸藤葡萄酒工業株式会社
・マンズワイン勝沼ワイナリー
・ルミエールワイナリー
・ロリアン白百合醸造
さいごに
東京国税局のお二人と山梨県ワイン酒造組合会長の有賀氏への質疑応答の時間も設けられました。
GIの意義からは、やはり今後のグローバル展開は必須と考え、行政と各生産者団体が協力し進めていきたいとの意向を伺うことができました。
10周年を祝うとともに、この先10年の展開を見据え、行政、生産者、業界関係者が交流できる素晴らしい機会でした。
ワイン・チーズライター 磯部 美由紀
日本ワイン.jp チーフエディター
J.S.A認定 ワインエキスパート
C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
ワイン記事監修実績:
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕
すてきテラス