質の高いブドウが栽培されていることでも知られる、栃木県。
日本ワインファンにも愛されるワイナリーが点在する同県ですが、現在“栃木市初”となるワイナリー設立に向けた動きが加速化しているようです。
その中心人物が、フランスでワインづくりの研鑽を積んできたという岩﨑元気氏。
2025年2月18日(水)に開催された「蔵の街とちぎビジネスプランコンテスト 2024」決勝プレゼン大会において、同氏の“栃木市大平町にワイナリーを設立したい”といったプランが最優秀賞及び、とちぎおいしいーとこフードバレー賞を獲得。
夢の実現に向けた、今後の取り組みが期待されています。
今後日本ワイン業界のキーマンとなっていくであろう岩﨑元気氏とはどんな人物なのか、“栃木市初”となるワイナリー設立についてもあわせてお伝えしましょう。
岩﨑元気氏について

岩﨑元気氏は、栃木県栃木市大平町出身のワイン醸造家。(ビジネスネームとして「げんき」と呼ばれることが多いそうです)
生食用ブドウ農家の息子として生まれた同氏は東京・軽井沢のワインショップに勤務後、ワインの道に進むことを決意し2017年フランスへと渡ります。
世界最高峰のワイン産地であるフランス ブルゴーニュでワイナリー勤務を経た後、フランスの醸造学校などでブドウ栽培・醸造学を修め、2024年にブルゴーニュ大学DNO(フランス国家認定醸造士・修士)コースを修了。
日本人ではほとんどいない、「フランス国家公認醸造士(エノログ)」の称号を得た人物です。
フランス滞在中の2021年には委託醸造にて自らのワイン、「元気ワイン」を1,200本リリースし、自ら予約を取り1ヶ月で完売させています。
2024年からは、栃木市大平町産ブドウを足利市のワイナリーに持ち込み、委託醸造といったかたちでワインをつくっています。
同氏の魅力はワインの本場フランスが認める醸造技術はもちろん、日本ワインに対する強い情熱を持ち合わせているところです。
2023年、フランス・ブルゴーニュでの日本ワインプロモーションイベント「サロン・デ・ヴァン・ジャポネ」を開催し話題に。
2025年2月9日に開催された第2回目の「サロン・デ・ヴァン・ジャポネ」は日本の50ワイナリーが参加、600名が来場するなど規模が拡大、NHKに加えフランス国営テレビにも放映されるなど大きな話題となっています。
これから日本ワイン業界に旋風を巻き起こすであろう、岩崎氏の活動を追い続けたいと思います。
栃木市大平町でワイナリーを設立する理由

先日開催された、栃木市主宰の「蔵の街とちぎビジネスプランコンテスト 2024」決勝プレゼン大会にて最優秀賞及び、とちぎおいしいーとこフードバレー賞の2冠を達成した岩崎氏。
同氏のビジネスプランのタイトルは、「大平町にワイナリー設立~美しいぶどう畑を守り、世界に誇るワインを醸す~」、栃木市で初めてとなるワイナリー設立に向けたプランでした。

岩崎氏の生まれ故郷である栃木市大平町は明治時代からブドウ栽培が行われている歴史あるブドウ産地であり、1970年代には稲作などからブドウ栽培への転作が増え「大平町ブドウ団地」が完成するほどだったと言います。
2005年には酒造メーカーの協力によって大平町産ブドウを使用したワインが生産されたことをきっかけに、同町にてブドウ農家の若手らによりワイン用品種の試験栽培がスタート。
栃木市初となるワイナリー設立の話は持ち上がっていたものの、醸造のノウハウを持つ人物や製造したワインの販路を持っていなかったことから、市内初のワイナリー設立に至っていないのが現状です。
その現状を知る岩崎氏はこんな思いを持ったとのこと。
- フランスで得た経験・知識で自分が生まれ育った地域を盛り上げたい
- ワイナリー設立という、大平町のブドウ農家たちの20年来の夢を一緒に叶えたい
同氏はビジネスプランに大平町ぶどう団地が抱える課題である、耕作放棄地問題や産地としての知名度の低さ、ブドウ以外の観光インフラ不足をワイナリー設立による波及効果で解決できるとプレゼン。
ワインの魅力で都心からの移住者を呼び込むこと、ワイナリーが新たな観光拠点となりさらに輸出により世界的知名度を向上させること、収穫されなかったブドウでリキュールや赤ワインの搾りかすを使った製品を製造するといったSDGsへの取り組みなど、“栃木市大平町にワイナリーがあることの大きなメリット”を徹底的に模索し発表しました。
同氏は2024年には酒販免許も取得しており、2025年にはワイン販売を開始させるとのこと。
その後、新規取得畑を広げていきワイン用ブドウを植樹、2026年までは委託醸造として生産しながら、2027年にはワイナリー操業開始させ8,000本の製造を目指すとしています。
こだわりはマスカット・ベーリーA

岩崎氏が大平町でワインづくりをする上で、こだわる品種がマスカット・ベーリーAです。
その理由として同氏は下記理由を挙げています。
- 大平町の気候に適している
- フランス人の好みに合っている
- ベリーAはテロワールと醸造家のスタイルを如実に映し出す
大平町では毎年5トン前後のマスカット・ベーリーAが生産されており、その質の高さから県内ワイナリー などに出荷されているとのことです。
また、日本ワインを紹介するイベントをフランスで開催した際、試飲したフランス人の多くが豊かでフルーティな香りと、柔らかい口当たりを好意的に捉える意見が多かったそう。
そして、マスカット・ベーリーAは多種多様なスタイルのワインを生み出す品種であること、テロワールを反映するブドウ品種であることも同氏がこのブドウにこだわる理由とのことです。
マスカット・ベーリーAを使い、栃木らしい高品質なワインを世界へと届ける、ワイナリー設立によって日本、世界から多くの訪問客を栃木市に呼び込めるはず。
フランスが認める醸造技術を持つ岩崎氏と大平町のテロワールが融合した時、どのようなマスカット・ベーリーAが生み出されるのか今から楽しみで仕方がありません。
栃木市を世界に誇るワイン産地へ

岩崎氏のビジネスプランは、「蔵の街とちぎビジネスプランコンテスト 2024」において審査員に、「夢がある」と高く評価されたとのこと。
同氏の手がけるワインが、栃木市を大きく変化させる日もそう遠くはないでしょう。
ちなみに岩崎氏のフランスで出会った奥さまは料理人であり、本場でフランス料理の修行をしていたそう。
ワイナリーが設立された際には、ワイナリー近くに栃木の素晴らしい食材を使用したカジュアルフレンチレストランを作るといった構想もあるようです。
栃木市が世界に誇るワイン産地へと羽ばたく場所になる、そんな夢を見せてくれる岩崎氏の活躍からこれからも目が離せません。
