5月23日に発表された、IWSC2022(インターナショナル・ワイン・スピリッツ・コンペティション2022)にて、3本の日本ワインがゴールドメダルを獲得しました。

北海道ワイン(北海道)/北島ヴィンヤード ~No.7~ ケルナー2019
本坊酒造 シャトーマルス穂坂日之城(山梨)/穂坂日之城 カベルネ&メルロー 遅摘み2018
ヴィノーブルヴィンヤード(広島)/Sauvignon Blanc 2021

受賞ワイナリーのみなさま、おめでとうございます!

このIWSC(インターナショナル・ワイン・スピリッツ・コンペティション)は、毎年イギリスで開催されるヨーロッパ最大級のワインコンクールです。

今回の受賞で注目すべきことのひとつに、2021年にオープンしたばかりの新しいワイナリー「Vinoble Vineyard」のワインが受賞したことがあげられます。
ソーヴィニヨンブランでのゴールドは、このVinoble Vineyardとニュージーランドのマルボロのワイナリーの2社のみ。
その両方ともが95点を獲得しています。
つまり、日本から世界最高得点のソーヴィニヨン・ブランが誕生したということです!

世界一のソーヴィニヨン・ブランの造り手、横町崇さんについて

自社ワイナリーのオープンこそ昨年ですが、実は業界では横町さんはすでに名の知られた人物です。
東京農業大学醸造科を卒業後、同じ広島県三次市内にある三次ワイナリーや勝沼醸造にて醸造を学び、
その後、多くのワイナリーにて醸造コンサルティングをされてきました。
また、ブドウの苗木販売会社「ラグフェイズ」の専務取締役も務めています。
現在、全国各地のワイナリーでは、ラグフェイズが育てた母樹を起源とし、素晴らしいワインを生むブドウが育てられているそうです。

ワイナリーに訪問した際、「この畑では何が栽培されてるのですか?」と質問したところ、
「カベルネ・ソーヴィニヨンが3クローン、メルロー6クローン、シラー×2、シラーズ×2、ピノ・ノワール114、115、667、777、828、943 UCD5、6、Abel、mv6、あとカレラクローンとカリフォルニア系のクローンが・・・」
と、品種を超えクローンで答えが返ってきて困惑しました。
業界ではちょっと有名なクローンマニアなのです。
そうして、丁寧に、マニアックに生産された横町さんのブドウは大変好評で、奥出雲ワイナリーはじめ、いくつかのワイナリーにも提供され、人気ワインへと姿を変えています。「yokomachi」と冠されたワイン、見たことある方もいらっしゃるかもしれませんね。

今回、快挙を成し遂げたワインの造り手、横町崇さんにお話しを伺いました。

横町崇さんインタビュー

ーーー受賞のお気持ち教えてください!

発表前にIWSC事務局からゴールド受賞を知らせるメールが届いたのですが、見た瞬間は鳥肌が立ちましたね。
とはいえ、あまりのことに現実味がなく、まわりのスタッフ数名にも見てもらって、やっとひしひしと喜びを感じてきました。
そして、現在オンラインショップでの注文が大量に来ており、さらに実感しているところです。

かねてよりIWSCでゴールドを取ることが、コンクールの中では最も難しいことの一つだと認識しており、
今回は自社ワイナリーを多くの人に知ってもらうきっかけになれば、また、自分のワインの世界での評価というか立ち位置を知りたい
という二つの理由でエントリーしました。

ーーー受賞したソーヴィニヨン・ブランはどのように造られましたか

昨年は、お盆や秋口にも台風が来たりして、雨が多く栽培の面では苦労しましたが、その分醸造で様々な工夫をしました。
乾燥酵母を3種類使用し、3タンクに分けて香りの変化をみたり、野生酵母でも試してみたり、樽発酵してみたり。

搾汁についても全房圧搾したパターン、除梗・破砕したパターン、オーバーナイトスキンコンタクトするなど、多くのパターンを試し、
最終的に加減を見ながら一本にし、結果、味の厚みやボディ感のバランスがとれたワインに仕上がりました。

ーーー 横町さんのソーヴィニヨン・ブランへのこだわりや特徴について

マールボロのソーヴィニヨン・ブランのような華やかな香りが好きなので、そんな方向性を目指してはいるけれど、
全く同じものではなく、そこに日本らしさをうまく表現していければと思っています。

香りが重要な品種なので、それを巧くワインに出すためには健全は発酵と熟成が大前提だと考えています。
また、栽培的なアプローチでも、農薬を適切な時期に適切な使い方をし、3MH(ソーヴィニヨン・ブランや甲州などに含まれ、
ワインに特徴的な香りをもたらす成分)をきれいに出すようにしています。
ただ、3MHを出そうとするとどうしても早摘みになるが、それだとボティ感が薄くなってしまうリスクもある。
それを防いでミッドパレットを綺麗に出すために、収穫期を2回に分けるなどの工夫もしています。
その甲斐あって、ここ一、二年は味に厚みのあるソーヴィニヨン・ブランになってきているように思います。

排水溝もステンレス製というこだわり
ルミアージュもご自身で。


ーーー横町さんのワイン、どんな方に飲んでもらいたいですか

まずは伝統的なグランヴァンを飲み慣れている方ですね。
僕のワインはそういうグランヴァン寄りの造りを目指しているので、舌の肥えたオールドファンの人達にも、
日本のソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールがそれらと比較して遜色ないレベルだということを知ってほしいです。

また、逆に普段はあまりワインを飲まない方が、何かのアニバーサリーなどでワインを開けるというような場面でも
ぜひ選んでもらいたいですね。
オーソドックスな造りなので、ワイン初心者の方の入り口としても良い気がします。

ぜひ『ハレの日の一本』として、楽しんでいただければと思います。

横町さんが目指すもの

クローンから醸造方法、醸造設備に至るまで、すべての工程にこだわりを持ち真摯にワインと向き合っている横町さん。
今回、ご自身のワイナリーを設立してわずか一年でこのような成果をあげられましたが、今後についても伺いました。

「今回の賞はもちろん非常に嬉しいことですが、それはそれとして。
結局、良いワインを生むために、良いブドウを造っていくという姿勢は何も変わりません。」

また、「ここ三次にワイナリーを設立したならば、いつかは最高の貴腐ワインを造りたい。」とも横町さんは話します。
広島県三次市は盆地のため、晩秋から早春には「霧の海」と表現されるほどの神秘的な濃い霧が発生する地域。
そう、ワイン好きの方であればソーテルヌなどを思い浮かべることでしょう。
貴腐ブドウは、どの地でもできるものではないですし、自然に大きく左右されるため、たとえ天候や場所に恵まれていたとしても
それでも造れる年造れない年が出てくるなど、とても難しいもの。
いつか、横町さんの最高の貴腐ワインを味わうことができる日もまた楽しみです。

【Vinoble Vineyard & Winery(ヴィノーブルヴィンヤードアンドワイナリー)】

広島県三次市に2021年に代表であり醸造家の横町崇さんがオープンしたワイナリーです。
広島県というと瀬戸内の暖かい気候をイメージする方も多いかもしれませんが、三次市は広島県の北東部に位置し、内陸性の気候。
盆地特有の昼夜の気温差が激しく、葡萄の栽培に適していると言われる地域となります。

<公式サイト> http://vinoble-vineyard.jp

 

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VINOBLE VINEYARD AND WINERY(広島県)