みなさま、こんにちは。
ワイン・食・人(わいんしょくにん)】磯部 美由紀(いそべ みゆき)です。
暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
快晴が続くこのごろ、元気に過ごしたいところですがここまで暑いと食欲が低下したり、クーラーのきいたお部屋と外気の温度差に身体が疲れてしまったり、寝苦しかったり。
そして、今年はなかなか夏休みの旅行に行くことも難しい状況で、いまいち楽しみ切れない雰囲気も。
旅行やお出かけはできなくても、せめて身体を整えて、夏らしいテンションで爽やかな白ワインやキリっと冷やしたロゼワインで、お家時間を楽しみたいところです。

そこで、今回は国際薬膳調理師の岡 麻由美先生に夏の体調の悩みを相談してきました。
そして、薬膳の観点からこの時期に摂るべき食材や生薬を教えていただき、身体に優しく、そしてお家でワインを美味しくいただけるレシピを二人で考案してみました。
後半でワインとの相性も確認しておりますので、ヘルシー美食を楽しみたい方々、ぜひご覧くださいませ。

夏の悩みを相談

鍼灸師/薬膳Any協会理事/国際薬膳調理師    岡 麻由美 先生

磯部:暑くてランニングをさぼってしまってるので、むくみを感じます。

岡:運動不足だとむくみは起こりやすいですよね、また消化吸収機能がうまく働かないと水分吸収がうまくできずむくみがちにもなるんですよ。

磯部:胃腸も関係するんですねー。あと眠りが浅く、なんだか疲れます。

岡:暑くて寝苦しいというのももちろんありますよね。中医学的に見ても夏は「不眠」が起こりやすい時期と言われています。また外と家やオフィスでの寒暖差が大きく自律神経の乱れもあるかもですね。

磯部:たしかに外は暑いのだけど、日中オフィスのクーラーが冷え冷えです。また体のだるさも感じています。

岡:最近の夏は暑さ対策だけではなく冷えも意識して過ごすことが大事なんです。

「暑い」と言っても本当に暑い外を歩く時間は少なく、1日の大半は涼しい室内で過ごしていますよね。特にオフィスワークの方はずっとデスクワークをしていると「足が冷えてしまう」や「寒くて上着がないと困る」のように暑さ対策と冷え対策の両方が必要で夏は過酷な時期なんです。

磯部:そうなんですよね。そして、暑い中帰宅したらしたで、冷たい飲み物やアイスなどをいつもより食べてしまったり、食欲が出ないから冷たいお蕎麦やお素麺なんかで軽く済ませてしまったり。

岡:うーん、お素麺のようにあっさりしたものだけで済ますと、タンパク質が足りませんね。また冷たい飲食物が続くと、胃腸を冷やしちゃって胃腸が弱る原因になりますね。

磯部:なるほど、タンパク質ですね。ワインを美味しく飲む観点でも大事。ワイン食人としては、ぜひ旬の食材を美味しくいただきたいです、今だと夏野菜かな。

岡:そうですね!今回相談いただいた夏のお悩み全般にアプローチした薬膳メニューを一緒に作って、ワインを美味しく楽しみましょう。

夏にオススメの食材と効能

材料 効能
ズッキーニ 体の熱を冷まし潤いを作ります
とうもろこし 胃腸を元気に、むくみにも
なす 余分な水分をとり、体の熱を冷まします
にんじん 胃腸を元気にし、血を作ります
緑豆 体の熱を冷まし、むくみにも
鶏肉(手羽元、もも肉) お腹を温めて元気にします
たら 気や血を補います
トマト 潤いを与える。胃腸を整えます
クミン 胃腸を元気にし、食欲増進にも
陳皮 気の流れを良くしお腹を整えます
なつめ 胃腸を元気にし、血を作ります
クコの実
体の中に潤いを与えます
蓮の実 心を落ち着かせます

 

体を冷やす効能のある夏野菜は、火を通して食べる方が胃腸に負担をかけにくく、また生薬類は煮込んだほうが食べやすくなります。
あとスパイス類は巡りを良くし食欲増進効果もあるので暑い時期に適度な量使うのはいいかも。

ワインと合わせるという観点からも、野菜だけだとあっさりしがちですが、スパイスを加えることで、やや甘口なものやスパイシーなニュアンスを感じるものとも相性が良さそうです。

私が師事するフランス料理のダニエル・マルタン先生は、毎年夏はタジン鍋のお料理を提案しています。
理由は、「だって長時間コンロの前に立ちたくないでしょ。」とのこと。
なるほど。

2人でいろいろ話し合った結果、今回は『モロッコ風薬膳タジン鍋』を作ることにしました。(レシピは最後に記載しておきますね)

夏に飲みたいワインはこちら

ドメーヌレゾン(北海道)/ケルナー
品種:ケルナー85%、シャルドネ14%、ソーヴィニヨンブラン1%
マスカットやリンゴを想わせるフルーティな香りと、程よいボディ感が心地よい白ワイン。
北海道の気候によって生まれた酸は、程よくシャープな味わいを生み、全体のバランスを引き締めます。
メインのケルナーという品種は、もとはドイツ生まれの品種。日本では、ドイツ同様に寒冷な気候の北海道で主に栽培されています。

そんな特徴もなんだか涼し気で、暑い夏に飲むのに相応しい白ワインですね。

カーブドッチ(新潟)/ミリュ ロゼ
品種:カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、マスカット・ベーリーA、ヤマ・ソーヴィニョン
数種類のぶどうをアッサンブラージュすることで味わいのバランスを取ったロゼ。
ロゼ好きな造り手が食事との相性を考えて熟成したワイン。
若いうちでももちろん楽しめますが、瓶内熟成が進むとジワッとした旨味が少しずつでてくるそう。
まあ、なんと汎用性の高そうな。日常のテーブルに並べるのには、こういうワインがよさそうです。
ということで、今回はこの2種類のワインを楽しむためのお料理です。

ワインとモロッコ風薬膳タジン鍋の相性を確認

モロッコ風薬膳タジン鍋×ドメーヌレゾン(北海道)/ケルナー

とても爽やかでアロマティック!
薬膳タジンを食べ進める上で、後味を感じながらも口の中が程よくリセットされていきます。
アフターに甘酸っぱいような余韻が残り、それが薬膳タジンのスパイスとすごくいい感じ。
タジンに入れた生薬の陳皮が効いているのもポイントなのかもしれません。
甘ったるいわけじゃないけれど、ほのかな甘みを感じる辛口ワインで、クミンやコリアンダーなどのスパイスに負けない存在感があります。
ワイン自体も少しスパイシーな感じがするからかもしれません。
香りもアロマティックなので、食欲がそそられます。
よく冷やして楽しみたいですね。

ドメーヌレゾン(北海道)/ケルナー

モロッコ風薬膳タジン鍋×カーブドッチ(新潟)/ミリュ ロゼ

なんともチャーミングな外観!
ロゼワインのピンク色にも様々な色合いがありますが、こちらはオレンジがかったやや濃いめのピンク色。
タジンのあるテーブルの雰囲気とぴったりなのが嬉しく、せっかくだからテーブルウエアをリネンに変えてみました。
これだけでワインを楽しむ雰囲気が仕上がりますね!
さて、肝心のペアリングですが、外観から想像したとおり、わりとしっかりめのロゼワインです。
ベリーや柑橘系の甘い香り。
アフターに絞ったオレンジのような微かな甘苦さと、程よいコクがあります。
それがトマトベースのスープに寄り添うような印象でとても心地よい。
今回は白ワインと同じ温度でいただきましたが、ワイン単体としてはもう少し温度を上げても楽しめそうな気がします。
でも、今回はハリッサやスパイスが効いているので、やはり少し低めの温度で正解かな。

カーブドッチ(新潟)/ミリュ ロゼ

モロッコ風薬膳タジン レシピ

材料(分量はだいたいで。食べたい分で。鍋のサイズ次第。)

・鶏もも肉、手羽元
・タラの切り身
・ズッキーニ
・とうもろこし
・玉ねぎ
・なす
・にんにく
・にんじん
・ハリッサ
・トマトペースト
・好きな形のパスタ
・チキンブイヨン
・ドライレーズン

<スパイス>それぞれ少量
・シナモン
・クミン
・コリアンダー
・ブーケガルニ(なければローリエでもOK)

<生薬>それぞれ少量
・クコの実
・ナツメ
・緑豆
・蓮の実

①タジン鍋にオリーブオイルを引いて、鶏肉とタラを軽く焼く。
②ズッキーニと茄子は別の鍋で軽く下茹でする(1分くらい)。他の野菜と火を入れる時間が違うため。
③鶏肉とタラの入った鍋に、茄子とズッキーニ以外のすべての材料を入れ、タジンくんの蓋をして約30分蒸す。
④茄子とズッキーニをタジン鍋に加えて出来上がり。

タジン鍋がなければ、普通の無水鍋でもOK。
ワインも、ケルナー以外ではドライなゲヴェルツトラミネールなんかでもいいかも。

この夏、気軽に夏野菜×ワインでヘルシー美食を楽しまれてはいかがでしょうか。