茨城県つくば市、筑波山麓の南の裾野に位置するワイナリー「Bee’s Knees Vineyards(ビーズニーズヴィンヤード)」。
“製薬会社を辞めてワイン造りの道へ…”というユニークな経歴を持つ、今村ことよさんがオーナーの小規模ワイナリーです。
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さて、厳しい残暑が続く9月中旬頃。
私たち取材班は収穫期を迎える、「ビーズニーズヴィンヤード」を訪れました。
あらためて今村さんのお話を聞きながら、同ワイナリーのワインをテイスティング。
ここでは、ワインライターから見た、「ビーズニーズヴィンヤードの魅力」を5つお伝えします。
“ビーズニーズヴィンヤードってどんなところが魅力なの?”と思っているワインファンの方。
ぜひ参考にしてみてください。
魅力その① ユニークな土壌&きめ細やかな栽培スタイル!
「ビーズニーズヴィンヤード」を語る上で欠かすことができないのが、自社畑が位置する筑波山麓の土壌組成。
基本的には黒ボク土が中心だそうですが、花崗岩が多く混じっているところが特殊です。(ちなみに田んぼの上にブドウ畑があったり、ほかの果樹の畑が点在しているなど、かなり興味深い地域でした)
水はけが良くミネラル分が多いことが関連してか、品種によっては“しょっぱ味”すら感じさせる仕上がりになるそう。
他の地域にも花崗岩土壌の場所はありますが、全く同じという組成ではないはず。
筑波山麓特有の土壌で育てられた、“つくばの味”が「ビーズニーズヴィンヤード」では楽しめるわけです。
さらに注目したいのが、小規模ワイナリーだからこそできるきめ細かやな栽培スタイル。
シラーの畑ひとつとっても場所によって土壌の保水量が違うことから、その違いを見極め、それぞれに合わせて収穫期を変化させているそうです。
大中規模のワイナリーとなると栽培や収穫が事務的になりがちですが(そうでない場所もありますが)、自分の哲学に基づいた栽培スタイルを貫き通せるところは「ビーズニーズヴィンヤード」のようなワイナリーの魅力ではないでしょうか。
魅力その② 品種へのこだわり
「ビーズニーズヴィンヤード」で栽培されているのは、シャルドネ・セミヨン・ヴィオニエ、カベルネソーヴィニヨン・メルロー・シラー・タナなど海外品種のみ。
ハイブリッド系のブドウ品種ではなく、これら海外品種にこだわるところも同ワイナリーの魅力です。
全体的に暑い地域で栽培されている品種であることから気候に合わせている部分もあるかもしれませんが、今村さんとしては、“長年に渡り実績を残している品種”を選びたかった…という思いもあったそう。
洗練された海外品種たちが、この地質でどのように育っていくのか…。
その答えを今村さんだけではなく、ワインを通じて私たち消費者も追っていくことができるところにロマンを感じます。
魅力その③ 徹底した哲学のもとでおこなわれる栽培&収穫!
冒頭でお伝えしたように、「ビーズニーズヴィンヤード」を訪れたのは9月中旬頃。
白ワイン用のブドウの収穫はすで終わっており、一部カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーなどが収穫の時を待っているような状態でした。
さまざまな知見からのアドバイスを受け、より良い栽培スタイルを取り入れている今村さん。
小規模ワイナリーにありがちな、“自然の力を信じてほったらかす”というスタイルではなく、あくまでさまざまな研究から分かっている事実や栽培専門家たちからのアドバイスを取り入れた、“品質の良いブドウ”を収穫するための努力を惜しまず続けています。
収穫時もただ無意識に房を切り落としているのではありません。
ワインになった時のことを想像しながら良質な粒だけを残す作業など、完成したワインの品質を落とさないための手の込んだ作業をされていました。
前述していますが、この細やかな栽培スタイルこそ「ビーズニーズヴィンヤード」の魅力なのです。
魅力その④ 減農薬栽培で香りにこだわるアプローチ
極力農薬を使用しない減農農法で栽培されている、「ビーズニーズヴィンヤード」のブドウ。
環境への配慮という部分もあるかもしれませんが、今村さんは減農薬によって得られる“香り”に着目しています。
木の抵抗力をつけるということはもちろん、今村さんいわく無農薬や減農薬でつくられたブドウはよく香るのだとか。
また果皮もやや厚くなるのではないか、という話も…。
抗菌物質由来かもしれないと今村さんは考えているそうですが、香りや歯ごたえは私たちが食物を摂取する時に美味しいと感じるためには重要なファクター。
香りがしっかりと乗ったブドウからは良いワインができる、という考え方は理にかなっています。
香りに着目するアプローチも、「ビーズニーズヴィンヤード」の良い意味で個性的な風味のワインを生み出しているのではないでしょうか。
※また、今村さんは余計な風味やいがらっぽさをワインに残したくない…ということで徹底した除梗をおこなっています。自らの目指す味わいに向けて努力を惜しまない、“姿勢”も同ワイナリーの魅力です!
魅力その⑤ ほかにはない、「ビーズニーズヴィンヤード」の味わい!
取材当日、開栓から1週間後経過した「ビーズニーズヴィンヤード」のワイン3本をテイスティングしました。
先に結論をいえば、
・一週間後経過してもへたれない、力を持っているワイン
・よい意味で日本ワインらしくない、ハイクオリティなワイン
・さまざまな要素を感じさせる複雑性のある素晴らしいワイン
という印象。
大げさではなく、世界の銘醸地のワインとブラインドテイスティングしても遜色ない素晴らしいワインばかりでした。
〈スパイラル 2019〉
「シャルドネ72.3%、セミヨン25.2%、ヴィオニエ1.9%、ヴェルデーリョ0.6%」をブレンドした白ワイン。
吟醸香を思わせる香りと優しい口当たり、ほのかにハチミツのニュアンスのあるピュアな印象。
抜栓後1週間経過したとは思えない美しいワインですが、奥行きもある複雑な風味が魅力的な1本です。
〈パープルピークス 2019〉
「シラー95%、ヴィオニエ5%」をブレンドした赤ワイン。
ロゼを思わせる美しい色合い。さわやかな果実の香りの中にヴィオニエらしいアロマティックな香りが複雑に入り交じる、繊細かつ奥行きのある1本。緻密で繊細なタンニン、酸味がしっかりとした緊張感を感じさせる印象。梅のニュアンスを感じさせる、和食にもよく合いそうな赤ワインです。
〈オーバードライブ 2018〉
「シラー43%、メルロー30%、カベルネ・ソーヴィニヨン21%、タナ6%」をブレンドした赤ワイン。煮詰めたジャム、ベリー、カシスといった複雑な香りと風味を感じさせる1本。タンニンがとても柔らかく、全体的にしなやかでありながら緊張感のある素晴らしい赤ワインです。
とくに煮詰めたジャムのニュアンスが出る日本の赤ワインでは珍しく、これから熟成させたらどう化けていくのか…と期待してしまいます。
とにかく根っからのワイン好きという今村さん。
「結局は自分が飲んで美味しいと思うワイン。それを目指しています。」と語ります。
生産者でありながら、“いちワインファン”という在り方も「ビーズニーズヴィンヤード」が多くのワインファンに愛されている理由なのかもしれません。
夢を共に追い続けられるワイナリー
近年、筑波山麓で新たにブドウ園をスタートされる方が出てくるなど、これから“茨城”も産地化に向けた動きが活発化していくことが予想されます。
「ビーズニーズヴィンヤード」でも、ワインクラブ会員や収穫時期の収穫ボランティアなど、同ワイナリーを応援する仲間を募集するなど、これからさらに“茨城&筑波のワイン”が盛り上がっていきそうです。
美味しい日本ワインを求めている…という方はもちろんですが、「新しい産地を応援したい・新しい日本ワインの味を知りたい・これから日本を背負うワイナリーを見つけたい」という方には、「ビーズニーズヴィンヤード」がオススメです。
生産者だけでなく、飲み手も夢を一緒に追いかけることができるワイナリー「ビーズニーズヴィンヤード」。
ぜひ一度、同ワイナリーのワインを試しみてはいかがでしょうか?