中目黒、目黒川沿いにある人気イタリアンレストランunito。
ここでも日本ワインが飲めるとのことですが、日本ワインで唯一オンリストされているのが、北海道余市の平川ワイナリー。
食材でもワインでも「美味しい!」と琴線に触れればすぐに生産者を訪ね、探求し、自身の世界に取り入れていく岡野健介(おかのけんすけ)シェフ。そんな岡野シェフは、数年前に平川ワイナリーのワインを飲んだ瞬間、これだ!と思い、その後すぐにワイナリーを訪れたそう。

イタリアと南米を「unito=つなぐ」リストランテ

イタリアでおよそ5年修行された岡野シェフは、南米のベネズエラ生まれ。
そんなシェフのルーツ、修業時代の記憶、日本で磨き上げた技術、そして食材への解釈が、料理や空間を構成する素晴らしいレストランです。

まず供されたのは、小さな前菜三種。
木の器の上に並ぶのは、とうもろこし粉で作るベネズエラのパン生地「アレパ」に、タコとじゃがいものサラダを詰めて揚げ、紫オリーブのペーストを添えた一品、新玉ねぎとココナッツミルクのムースにキャビアを重ねた一品、そしてクミンを効かせたベネズエラ風牛肉の煮込み「カルネメチャーダ」をのせたブルスケッタ。
見た目にも華やかですが、素材や香りの組み合わせに遊び心がありながら、味わいは洗練されています。

ここに合わせたスパークリングワインについては、果実由来のほのかな甘やかさ、シルキーできめ細かな泡、乾杯酒としてのみならずしっかりと食中酒として成立する存在感がある、”ミライ”Miraï Méthode Traditionnelle 2021(白泡)
4年間の瓶内二次熟成で、酵母の澱と接触させて泡のきめの細かさと旨みを引き出しています。平川氏の「生の魚介、ハーブの効いた料理、貝類、鶏肉や豚肉、さらには白カビチーズまで、幅広い料理に寄り添えます」というコメントにも納得で、次の料理との組み合わせにも期待が高まります。

続いて登場した温かいサラダ仕立ての一皿は、菜の花、空豆、スナップエンドウといった春の野菜に、パルミジャーノのムース、ベネズエラのアボカドペースト「グアサカカ」、さらにウズラの卵やハーブを合わせたもの。
そこに、菜の花を加えたブラジルのストリートフード「キビ」も添えられています。

春らしい軽やかさと、豆や青菜のほろ苦さ、ハーブの鮮やかさ。見た目の可憐さに反して複雑な味わいは嬉しい裏切りです。
合わせた白ワインは、Filigrane Terre de Yoichi 2024。シトラスやグリーンのニュアンスだけではなく、フェンネルやアニス、ホワイトペッパーを思わせるスパイス香、さらに火打石のようなミネラル感があります。果実味の満足感に加えてほのかは塩味は、野菜の滋味と実によく合います。

コースの中盤では、シェフのスペシャリテともいえるアニョロッティ・ダル・プリン。
ピエモンテでの修業時代から向き合ってきたラビオリを、日本の水や食材、湿度の条件に合わせて磨き上げてきた一皿で、中には牛、豚、うさぎ、ソーセージ、そして数種の野菜を詰め、旨みの層を幾重にも重ねています。生地にはイタリアの粉と厳選した卵を使い、パスタマシンの目盛りがくっつくほど薄くのばすそう。
さらに、ソースに使うバターは毎朝、生クリームから手作りしているということにも驚きです。

薄く、繊細で、中身には凝縮感があり、口に含むとするりとなめらか、豊かな旨みが広がるのに極限まで薄くしたパスタは軽やかです。
“飲めるパスタ”という表現が思わず出たほど、なめらかで、口溶けがよい。

ここで、ロゼスパークリングの”スリジエ”、Cerisier Méthode Traditionnelle 2019(ロゼ泡)を登場させます。
6年間の熟成から生まれる深みのある香ばしさや緻密さ、しっかりとした旨みは、料理の繊細な生地感、澄んだ旨み、バターのコクを受け止めます。それでいて、きめ細かな泡のおかげで決して主張しすぎない。
まさに”食事の場で生きるワイン”だと改めて感じさせるマリアージュでした。

そしてこのアニョロッティ・ダル・プリンは、ワインの造り手平川敦雄氏の大好物だそう。ソムリエとしての顔をもつ平川氏自身が惚れ込んだ珠玉のペアリング、一度はお試しになることを強くお勧めします。

さらに、とうもろこしの皮に包んで蒸し上げた牛タンの煮込みとポレンタ、トマトを凝縮させたソースで和えたリングイネなど、コースは続きます。
いずれも南米のエッセンスを吹き込みながらも、各皿はしっかりイタリア料理として確立しており、シェフ自身のオリジナリティが伺えるものです。

メインのホロホロ鳥は、軽く卵をくぐらせてローストし、バナナの葉で香りをまとわせた一皿。付け合わせには下仁田ねぎのコンフィ。バナナの葉の香りは、シェフが幼少期を過ごしたベネズエラの記憶につながるものだそう。日本の食材を大切に使いながらも、自身の背景にある南米の香りを織り込んでいるところがunitoならではの料理といえましょう。
しっとりとした肉質に噛み応えもあり、香ばしさと繊細さが楽しめました。

苺のドルチェには、アニョロッティ・ダル・プリンやオマールエビのリングイネに合わせてきたロゼスパークリングの”スリジエ”Cerisier Méthode Traditionnelle 2019(ロゼ泡)が再び登場。
今回は、途中いくつかのアイテムを挟みましたが、乾杯からデザートまでという”スリジエ”の万能さは秀逸です。

”料理に寄り添うワイン”としての評価

今回のペアリングを通して強く感じたのは、料理もワインも“食卓の中でどうあるか”を考え抜きつくられたものだからこその魅力が、いかに心地の良い食事を形成してくれるか。
「一本しっかり飲み切れること」「飲み疲れしないこと」もまた、ワインの品質として価値ある観点だと身をもって体験できたように思います。

華やかでありながら、主張しすぎず、上品に寄り添うワインと、異国の文化や技法を取り込みながら個性が確立した料理。
これらが重なることで完成されたテーブルは、一度体験する価値はあるでしょう。

(左から)unito 岡野健介シェフ・平川ワイナリー代表取締役 平川敦雄氏

【unito
https://www.unito.tokyo/

桜の名所である目黒川沿いにある店内からは、満開の桜が大変綺麗に眺められます。
毎年桜の時期はとくに人気です。ご予約はお早めに!

【平川ワイナリー限定ワインは、こちらからご購入いただけます】
https://craftwineshop.com/products/diners202601?variant=55186498453672