6月中旬から7月上旬頃に旬を迎える食材のひとつが、梅です。

旬の時期はあまり長くないもののこれは完熟梅の旬であり、梅干しなど梅を加工した商品は1年中楽しむことができます。

梅は日本人のソウルフードとも言われていますが、“ワインと合う食材”として扱ったことあるでしょうか。

もし、梅が日本ワインと合うのであれば、日常のワインライフが豊かになることは間違いありません。

本記事では、梅とワインの相性について考えます。

梅について

梅の基本的な情報を下記の内容にまとめました。

  • 梅とは?
  • 梅果肉の成分

これらを下記で解説していきます。

梅とは?

梅はバラ科サクラ属の落葉高木、また果実のことです。

梅というと食用をイメージする方がほとんどだと思いますが、じつは観賞用の樹木「花梅」と食用の果実のなる樹木「実梅」といったかたちで名称に違いがあります。

上品で香り高い花を咲かすことから梅の花言葉は、「優美」。

一方、本格的な春が訪れる前の寒さ厳しい時期に花を咲かすことから、「忍耐」といった花言葉もあるようです。

梅が日本に伝えられたのは奈良時代以前の8世紀頃と考えられており、当時は漢方薬として扱われていたと言われています。

現代のように梅の果実を食品として扱い出したのは鎌倉以降と考えられており、江戸時代から庶民の間で梅干しが食されるようになりました。

梅を使った料理はさまざまありますが、やはり代表的なものといえば梅干しでしょう。

日本人のソウルフードとして認識される梅干しですが、英語でPickled plums、近頃ではUmeboshiでも通じるほど世界的にも認識されるようになってきたと言います。

梅には南高梅をはじめ、甲州最小、七祈、古城、梅郷など品種が多数存在し、ブドウ同様にそれぞれ個性に違いがあるようです。

日本ワイン好きであれば梅酒にも興味があるかもしれませんが、梅酒に向く品種などがあるため、それらを探求しても面白いかもしれません。

梅果肉の成分

梅の特徴といえば、強い酸味をイメージされる方が多いかもしれません。

梅の果肉にはリンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、カテキン酸、コハク酸、酒石酸など幅広い有機酸が含まれており、強烈な殺菌作用を持つ食品として知られています。(熟した梅はクエン酸がほとんどを占める)

梅は動物性の食品を使用せずに旨味や塩味、酸味を作れることから世界的にはヴィーガン食材として注目されているようで、ナチュールやヴィーガン認証を得たワインに注目が集まる中、「梅×ワイン」のペアリングは一部の層で真剣に考えられていくかもしれません。

栄養素的にはビタミン、ミネラルが豊富に含まれており、とくにカルシウムと鉄が豊富です。

一応、ポリフェノールも含まれていますが、梅肉エキスなど加熱濃縮工程のあるものだけに存在する、ムメフラールと呼ばれる新規化合物も近年発見されたことで話題になりました。

では、香りについて見ていきましょう。

生の梅果実をかぶりつく方はほとんどいないでしょうから、梅干しなど加工された梅の香り成分を見ていきます。

梅にはさまざまな芳香成分が含まれていますが、酢酸、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコールが多いようです。

また、酪酸、β-イオノン、1-オクテン-3-オンなども感じられるとのこと。

これら芳香成分から考えると、梅を加工した食品の場合、酸味を感じる香り、スモーキーな香り、フローラル、スミレなど甘いベリー、土のようなニュアンスを感じるといったかたちです。

味わいは、やはり豊富な有機酸を含んでいるため強い酸味を感じるほか、塩漬けされることが多いため強い塩味、蜂蜜などを加えたらそのニュアンスが感じられるといったかたちでしょう。

梅に合うワインは?

梅に合うワインを考える前に、そもそもワインと梅は合うのか考えていきましょう。

梅に合うワインについて下記で解説します。

定番はピノなどの赤ワインだが

梅というとやはり、強い塩味と強烈な酸味、独特の食感を持つ梅干しをイメージします。

一方、梅肉エキスのようなかたちで液体となったものをイメージされる方もいるでしょう。

フローラルな香りと果実のニュアンス、複雑な味わい、適度な酸味と場合によっては強いタンニンを感じるお酒であることから、あまり梅干しとのペアリングを試そうとは思わないかもしれません。

梅、梅干しを見た時に、“ワインが飲みたくなる”といった方はなかなかいないと思います。

ただし、梅の芳香成分やその特徴を見る限り、ワインと合わせられない食材ではなさそうです。

ワインは有機酸を豊富に含むお酒であり、種類によってはベンズアルデヒドや1-オクテン-3-オン、β-イオノンが含まれます。

さらに梅干しなどスモーキーなニュアンスもあるのであれば、明らかに赤ワインが良さそうな印象です。

とくにブルゴーニュの全房発酵で作られるようなピノ・ノワールは、どことなく梅のようなニュアンスもありますし、キャンティ・クラシコでも梅の香りが表現されているものがあります。

日本ワインで言えば、マスカット・ベーリーAが良いかもしれません。

土っぽさにも共通項を見出せます。

しかし、あの強烈な塩味と酸味を考えると合わなくもないが、わざわざ合わせる必要があるかといった意見も出てきそうです。

いわしの梅煮などは良さそうですが、梅干し単体や梅エキスを使った料理などで合わせたい時の汎用性はありません。

そこで考えたのが、日本ワインであればナイアガラを使った甘さを感じる白ワインです。

ナイアガラに可能性

これらブドウ品種はアントラニル酸メチルと呼ばれる、“ブドウのようなにおい”があることで知られており、味わいは爽やかで甘みを感じます。

甘いナイアガラと酸っぱい梅なんて、と思うかもしれません。

しかし、酸味と塩味が強い食品には甘めのワインが良く合い、さらに梅干しが甘い蜂蜜や果汁で漬けられることから、ちょうど良いバランスに調和する可能性が高いのです。

近年、日本でつくられているナイアガラワインは品質が高く、中でも発泡性があり酸味もほど良く残っているタイプは幅広い食品とペアリングしやすいことで知られています。

実際に下記で挑戦してみました。

梅干し×ナイアガラ

今回、やや甘めのすっきりした長野県産ナイアガラのスティルワインを選びました。

ナイアガラらしいブドウの甘さを感じる香り、口当たりも優しく後味に爽やかな酸味が残ります。

そして、そこに合わせるのが梅干し。

シンプルな味わいで、想像通り塩味と酸味が強いタイプです。

梅干しを一口、ナイアガラを一口入れると驚くほどバランスの良いペアリング。

梅特有の塩味と酸味をナイアガラのまろやかな味わいが包み込み、さらに後味のほど良い酸味が梅干しの風味を良い意味で切ってくれるので嫌な感じが一切ありません。

また、ナイアガラの甘さが梅干しの風味を邪魔するどころか、ひとつの料理のように口の中でまとまります。

想像通り、梅干しナイアガラの組み合わせは良好でした。

梅しそきゅうり巻き×ナイアガラ

梅干しとナイアガラが合うとわかったところ、梅しそきゅうり巻きとの相性も試しました。

梅干しをそのまま食べないけれど、梅しそきゅうり巻きであれば食べる機会があるといった方もいるでしょう。

酢飯、きゅうりといった要素が入ってくるものの、日本ワインであるナイアガラは全く喧嘩せずに良い相性。

梅の風味ときゅうりの爽やかさ、海苔の磯の風味、酢飯の甘酸っぱい味わいをナイアガラが包み込み、後味の酸ですっきりとしたフィニッシュが楽しめます。

梅ダレを乗せたイワシや白身魚など、そういった料理にも合わせやすそうなので試してみてください。

まとめ

梅干しは日本のソウルフードとして知られており、中には毎日でも食べたいといった方もいるかもしれません。

自宅に常備しているという方も多いでしょう。

一方、これだけ幅広い食材が揃えられる今の時代、わざわざ梅干しなど食べないという方もいそうです。

とくにワイン好きであれば洋風な食材に目が行きがちですし、梅干しを見て、“今日はワイン”と考えることも少ないでしょう。

しかし、ナイアガラをはじめとしたフローラルで甘みを感じる、爽やかな白ワインであれば梅と良く合いますし、日本酒などと比較すると飲みやすいので手軽に試せるペアリング です。

梅とワインのペアリングなど、想像もしなかった。

そんな方は、ぜひ本記事を参考に試してみてはいかがでしょうか。

参考

https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680323005952

https://www.jffma-jp.org/learning/jpn-flavor/shiso-ume-egoma.html

梅干しの豆知識|海外の梅干し事情 

http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2014/01/post-264.html