ワイン好きであっても、「さすがに一杯目はビールくらい飲ませてくれ」という方は多いはずです。
まずはビールで喉を潤し心を落ち着けた後、美味しいワインをいただく…。
お寿司の食べる順番と同じように、お酒の飲み方を他人にとやかく言われる筋合いはないでしょう。
とはいえ、せっかくこだわりのワインを飲むというのに一杯目が第3のビールというのも切ないものです。
“ワインを二杯目から飲みたくなるような、おいしいビールが欲しい…”。
こんな方におすすめなのが、「ネルソンソーヴィン」ホップや「シトラ」ホップを使ったビールです。
ワイン好きなら絶対に飲みたいユニークなホップですので、ぜひチェックしてみてください。
まさかのソーヴィニヨン・ブラン?
「ネルソンソーヴィン」ホップは、ニュージーランドで2000年に品種化された比較的新しいホップ。
ニュージーランドは白ブドウ品種のソーヴィニヨン・ブランの一大産地として有名ですが、「ネルソンソーヴィン」はこのソーヴィニヨン・ブランに関連しているようです。
そもそもネルソンはニュージーランドでも有名なワイン産地ですが、じつは唯一のホップ産地でもあります。
そんなネルソンのホップ育成者の人々がこのホップで造ったビールを飲んだ時、「このホップ、ネルソン産ソーヴィニヨン・ブランの香りがするぞ!」ということで…
「ネルソンソーヴィン」という名がついたといわれています。(冗談ぽいですが、嘘ではありません)
科学的にもソーヴィニヨン・ブラン
“このホップ、〇〇っぽい”。
こういったニュアンスでホップは語られることは多いですが、「ネルソンソーヴィン」ホップに関しては実際に詳細に香りが研究されています。
まず、ソーヴィニヨン・ブランの特徴といえば…
- グレープフルーツなどの柑橘系の香り
- ハーブの香り
- トロピカルフルーツのような香り
などが特徴かもしれません。(揮発性のチオール類がポイントといわれています)
なんと「ネルソンソーヴィン」ホップの香り成分を研究した結果、
- 4MSP(ツゲ、エニシダの芽など)
- 3SH(グレープフルーツ)
などが含まれている上に、
ビールとして醸造すると…
- 3S4MP(グレープフルーツ、ルバーブなど)
という成分がたっぷりと含まれていることがわかったのだそうです。
ソーヴィニヨン・ブランと全く一緒というわけではありませんが、香りの構造はかなり近しい。
「ネルソンソーヴィン」は、まさにワイン好きが飲むべきビールを生み出してくれるホップなわけです。
シトラも白ワイン風?
次に紹介するのが、「シトラ」ホップ。
2007年にアメリカのホップ育種機関が2007年に品種化したもので、これも白ワインを思わせるビールを生み出すといわれています。
「シトラ」はその名の通り、“シトラス(柑橘系のシャープな香り)”をもじった品種名であり、数多くのビールに使用されているようです。
「ネルソンソーヴィン」ホップと「シトラ」ホップは同じような印象ですが、互いに香りの成分も違うため二つを掛け合わせると非常に複雑な柑橘系の香りを生み出すことができるといわれています。
ネルソンソーヴィンはかなり希少なホップであるため、日常使いするのであればシトラが使われたビールの方が取っ付きやすいかもしれませんね。
どのビールに使われているの?
“ネルソンソーヴィン、シトラ。よくわかったけど、どのビールに使われているの?”という方もいるでしょう。
まず、前述したようにネルソンソーヴィンは希少価値が高いため限定醸造系のビールに多く見られます。
福岡のBEERSONICとFar Yeast Brewingがコラボした、「Far Yeast WESTBOUND Session IPA」などが話題になったり、コンビニでもサッポロビールの子会社が生み出した「Nelson Sauvinの真髄」というものが売られていました。
とはいえ、今すぐにどこでも購入できる…というと、「グランドキリン IPA」や「グランドキリン WHITE ALE」かもしれません。
「グランドキリン IPA」は大々的に発表されていないのですが、缶の上端っこ部分に“希少ホップ使用!”と記載されており、それが同ホップを指しているのだそうです。
また、「グランドキリン WHITE ALE」は小麦麦芽が使われているのでより爽やかで口当たりが優しく、一杯目にはぴったりでしょう。
一方のシトラ。
身近なところだとサントリーの「TOKYO CRAFT 〈東京クラフト〉」や「胎内高原ビール シトラヴァイツェン」、「銀河高原 エクストラ ペールエール」などでしょうか。
また、クラフトビール好きの定番「Duuel(デュベル)」の「デュベル トリプルホップ シトラ」などであれば手に入れやすいかもしれません。
ちなみに、毎年年末あたりに出てくるサッポロビールの「エビス with ジョエル・ロブション」には、ネルソンソーヴィンやシトラ、白ワインを意味するホップ「ハラタウブラン」などが使われているようです。(さらにシャンパーニュ産麦芽)
ジョエル・ロブション氏は2019年に他界されてしまいましたが、2020年版の発売を期待しておきましょう。
一杯目のビールにもこだわろう!
せっかくワインを飲む日であれば、一杯目のビールをワインによせていくのも面白いのではないでしょうか。
今回はネルソンソーヴィンなど白ワイン風のホップを紹介しましたが、中には赤ワインを思わせるビールも数多くあります。
ワインに惚れ込んだあなたです。
ビールもワインのような視点で深堀りしてみてはいかがでしょうか?