自分好みのワインをショップや飲食店で選ぶ際、産地や品種、ヴィンテージなどを頼りにするのが一般的です。

しかし、ワインを勉強している方やワイン業界にいる方以外、上記の情報から味わいを連想するのは困難でしょう。

そのため、多くのワインのラベル(または、レストランのメニュー表)には、“ボディ”や“甘辛度”、“渋み”などの数値が記載されており、誰でも自分好みのワインが手に取れるようになっています。

さて、そんなワインを選ぶ際の判断材料において、“音声を取れ入れたらどうか?”というユニークな研究がありました。

実用化などはされていないようですが、今後日本ワインを消費者が選ぶ際にも役立ちそな内容なので、ぜひチェックしてみてください。

ワインの味わいを表現した音声

ワインの味を音声で表現できるか研究・作成したのは、千葉大学大学院 融合理工学府のチーム。

冒頭でお伝えしたように、一般的なワインを選ぶ際の判断材料はワインを飲み馴れていない人にとって難しく、味わいを想像しながら手に取ることは困難です。(ソムリエのいないレストランはさらに困難)

そこで、研究チームはワイン初心者が直感的にそのワインの味わいをイメージできる音声サポートツールを作成。

音声からそのワインの味わいの個性が導きだせないか、という挑戦です。

サンプルワインから音声を作成

今回研究チームは、「辛度」と「渋み」、「ボディ」のパラメーターが数値化された6つのサンプル赤ワインを用意。

  1. サンプルA 辛度4 渋み3 ボディ4
  2. サンプルB 辛度4 渋み1 ボディ2
  3. サンプルC 辛度3 渋み3 ボディ3
  4. サンプルD 辛度5 渋み4 ボディ5
  5. サンプルA 辛度2 渋み3 ボディ4
  6. サンプルA 辛度5 渋み4 ボディ4

これらワインを被験者6名に試飲してもらい、味のイメージから音声の生成を依頼。(その結果から、ワインの味のパラメーターと音声の構成要素間の相関を分析)

ちなみに使用したのは、Hoya株式会社の音声合成ソフト「Voice text(現 ReadSpeaker)」。

人間の声に近い自然な音質の合成音声を作成できる人気ツールです。

ワインによって影響が出た

今回の分析の結果、「辛度」と「渋み」、「ボディ」とワインの味から連想される話者の性別、スピードに影響がしっかりと出たようです。

まず、ワインの味わいの辛さと渋みが大きくなった場合、「男性的」な声を連想することがわかりました。

また、辛さと渋みの値が大きくなるに連れ音声のピッチ(音の高さや低さ)が下がり、一方でボディの重さの値が大きくなるとピッチが上がっていくという興味深いに結果も得られたようです。

研究チームはとくに、このピッチに注目。

話者の性別を固定して、次はピッチの違いについて調査しました。

ピッチの変化について

研究チームは、性別ごとに高いピッチ、低いピッチの声のサンプルを用意。

先ほどのサンプル赤ワイン6種類を、ピッチの高さ順に被験者に並べてもらう実験をしました。

女性の声の場合、ピッチ順位スコアと「渋み」に有意差が出たのに対し、男性の場合は味わいの全ての有意差が出たことが判明しました。

実用化できたら売上アップ!?

さて、今回の実験結果が発展し実用化された場合、ワイン選びに大い役立つ可能性があります。

実際、近頃ではワインの品種を擬人化したりワイン自体を擬人化するなど、「購入者にわかりやすくワインの味を伝える手法」を目にすることが増えました。

例えば濃醇な特別純米酒の味わいを低く力強い男性の音声で説明された方が、若くアニメキャラクターの女性の声で説明されるよりもイメージは湧くでしょう。(個人的な趣味は置いておいて…)

また、ワインの場合はほかの酒類以上に「辛度」と「渋み」、「ボディ」といった味わいの基本だけでなく、産地の違いや品種の違いなども重要です。(世界中で造られているため)

「山梨県産ワイン」と一口にいってもその種類はさまざまで、ひとくくりにするのは不可能。

それぞれの品種や産地、仕込みの違いを音声イメージで表現できれば、ワインマニアだけでない層を取り込むことができ、産地全体の売上アップにも繋がるかもしれません。

もう少し現実的な手法を使いながら、ぜひ実用化に向けて努力していってほしいものです。

試飲から視聴の時代へ

自分好みのワインを購入する際、もっとも手がかりとなるのは試飲です。

しかし、一般のワインショップなどでワイン全部を試飲することは非現実的であり、高価または希少なワインはサンプルが提供されないことがほとんどでしょう。

ワイン初心者がそういった状況でワインを選ぶ場合、音声が役立つかもしれません。

ワインマニアが集うワインショップやソムリエのいる店舗ではない場合、今後ワインの「視聴」がセールスに役立つ可能性があります。

突飛な話ではありますが、新しいワインの判断材料として今後の実用化を期待しましょう。

 

参考

ワイン選びを補助するための味を表現した合成音声の制作

音声合成ソフト, Web読み上げのReadSpeaker