今年6月に西湖のほとりにオープンしたRestaurant SAI 燊。
この地が富士五湖のなかでも山深く奥まっていることに由来し、世界でも稀有なこの場所だからこそ手に入る食材の味わいを「奥・山梨料理」と定義し、四季折々様々な山梨県産食材をシェフこだわりの調理で提供するレストランとして、早くも食通たちの話題をさらっている。
今回、総合エンターテインメント事業を展開する株式会社アミューズが、このRestaurant SAI 燊のディナー体験を含む「山梨の食と出会う プレミアムツアー ~秋の収穫体験と、奥・山梨料理を堪能~」を開催しました。
このプレミアムツアーは、同社が主催する山梨県・西湖で行う収穫祭「SAIKO HARVEST FESTA 2024 ~西湖収穫祭~」の一環として企画されたもの。
この収穫祭は昨年初めて開催され、今年で2回目。
山梨ならではの酒、食、文化に触れ、体験できる企画ということで、ワイン愛好家のみならず、家族みんなでのレジャーとしても今回も大変人気を集めました。
食べて飲んで自然を満喫できるSAIKO HARVEST FESTA 2024 ~西湖収穫祭~はこちら🔽
さて、山梨ならではの、ジビエ、キノコ、山菜、高原野菜、淡水魚などシェフ直々に厳選した魅力的な食材を味わえるSAIだが、今回のプレミアムツアーでは「笛吹オリーブオイル前田屋」にて収穫体験を楽しんだのち、前田屋の賞味期限たった二週間!の貴重なノヴェッロをはじめ、クオリティの高いエクストラバージンオリーブオイルを使った特別コースを楽しめるというまさにスペシャルなプラン!
生産者である前田啓介氏とともに参加者一同、収穫後のディナーを楽しみました。
薪火を囲むダイニングでのプレゼンテーション
自然に囲まれた一軒家のレストラン。そのドアを開けると、広々とした開放感のあるエントランス。
木の温もりが温かく穏やかな空気が迎えてくれます。実際に床暖房で暖かいのですが。センスのよい別荘に招かれたような気分。
大きな一枚テーブルの奥には、すでに煌々と、しかし柔らかな薪火が焚かれ、これから披露されるであろうプレゼンテーションへの期待が高まります。
ガラス壁一面の向こうには、日本ワイン愛好家がつい見入ってしまうであろう素晴らしいワインボトルがずらり。
山梨ワインを知り尽くしたソムリエが、その日のお料理に合わせて一品ごとにセレクトしてくれるシステム。どんな饗宴が楽しめるのか。
至極のペアリング、秋のある夜の一例を、ほんの少しご紹介いたしましょう。
奥・山梨料理×日本ワイン ある日のテーブル<前編>
その季節、収穫・狩猟の状況によりメニューは異なります。
お席に置かれたメニューには、主には食材が記載されているのみ。
この薪火を前にし、馬肉や八幡芋、香茸など、山梨県で美味しい!と言われる食材の羅列に期待が高まります。
一品目
一品目。手のひらに乗った馬肉は、三年前に仕込んだ梅と前田氏の”ミッション”という品種のオリーブオイル。
紫蘇の香りもアクセントになって、爽やかな一皿。
馬肉の旨みやコクに、オリーブオイルの苦味や青さが効いています。
手から手でいただきました。
二品目
スペインの郷土料理で、オリーブオイルを味わうためのような一品。
数年前、豊島シェフが前田氏にオイルを使いたいと申し出たが、その時は断られてしまった。しかしどうしても諦めきれなかった彼は、試行錯誤を重ねこのパンを作り再び前田氏の元へ。
一口味わった前田氏が「このパンに使うのならば」ということで、晴れて豊島シェフが前田氏のオイルを料理に取り入れられるようになったきっかけ、言わば原点の料理。
トマト汁の酸味がかったパンに、賞味期限二週間のスペシャルなノヴェッロを、食べる直前にかけていただきます。
”レッジーノ”という早稲品種が80%、残りは”マウリーノ”、”ペンドリーノ”という二つの品種を青いうちに収穫してブレンドしたもの。
フレッシュなグリーンの香り。口に含むとバナナやアボカドのニュアンスも。これは濾過してしまうと出ない味わいだそう。
ノヴェッロならではのなんとも贅沢な体験。
合わせたワインは、
ヴィンヤーズ・キクシマ/Bubjan 甲州 2022 pet-nat
甲州100%のペティアンナチュール
食欲を刺激される組み合わせです。
三品目
山梨県の特産品である里芋の一種。
素揚げのように見えますが、こちらは八幡芋をお出汁でゆっくり炊いた後、さらに4日間出汁に浸し、いただく直前に揚げたもの。
ひとつはそのまま、表面のサクッとした歯ごたえや、中の滑らかな食感や素朴なお芋の味をダイレクトに楽しみます。
そしてふたつめ、お抹茶のようなものをかけていただきました。こちらはお芋を炊いた出汁に春菊を合わせたスープ。
里芋と春菊のは相性が良く、胃腸を整える効能があるそうです。
ということで、安心して引き続きワインをいただきましょう。
7C Winery/KOSHU CUVÉE SU 2022
キュッとした酸や柑橘の香りが爽やかな甲州。
バランスよく主張しすぎない甲州は、八幡芋の優しい味わいに寄り添います。衣の油脂分を口中ですっきりとさせてくれる効果も。
四品目
山梨は誰もが知るフルーツ王国。
今が旬の山梨県産果物いろいろをブッラータと合わせます。いわば”山梨風カプレーゼ”。
梨(ほのかに燻製がかってる!)、無花果 シャインマスカット、柿。それらの下には、トマトに麹を加えて醗酵させた甘酒のような風味のものと、古代きゅうりに前田氏のオリーブオイル”ミッション”を加え乳化させ、ビネガーと塩で整えたという、酸味ある青さを感じる二種類のソースが敷いてあります。
最後に少し塩味をきかせたニラと大蒜のソースがかかり、こちらは青臭さと同時に果物の甘みをより引き出す働きをしています。
畑をそのまま表現した一皿、手が込んだ調理法もさることながら、お味も複雑で美味しい。
GRACE WINE/グレイス ロゼ 2023
日照量豊富な明野において、とくに恵まれたヴィンテージ2023年のロゼ。
ボルドー品種で造られ、しっかりと果実味の感じられるドライなロゼはなんとアルコール度数13%。
カプレーゼとはいえ、これだけ手の込んだ複雑な味の一皿にどんなワインを出すのだろうと楽しみにしていましたが、期待を超えたセレクト!お料理に負けないボリューム感のロゼでした。
五品目
富士山の噴火でかつて火山灰が積もった山梨県は、お米よりも小麦の栽培に適した土壌。ゆえにほうとうや吉田うどんが有名です。
シェフが小麦から作ったうどんにノヴェッロを絡め、ついさっきスタッフが収穫したという松茸を薪火で焼き、最後にすだちをキュっと絞ったもの。なんて香り高い一品なのだろう、一同感嘆のため息をもらす。
前田氏も「ノヴェッロを表現するのにもっとも適した料理なのでは」と評価。
焼き松茸にすだちは鉄板ですが、ノヴェッロの青さやフレッシュな苦味、バナナのような青さが加わり、香りや味わいはもちろん、長く続く余韻まで素晴らしい。
駒園ヴィンヤード/エルヴァージュ
この余韻をさらに高めてくれるのが、熟成感のある甲州。
フレンチオークで長期熟成した甲州は、蜜感をイメージさせる濃いめの外観。ドライアプリコットやハチミツ、ナッティな香り。
バランスのよい果実味と樽感は、とても上品。
松茸やすだち、オリーブオイルなど香りの主張の強いものにも負けることなく、凛と存在しながらも全体を調和し口中の幸せをさらに高めてくれます。
六品目
53°で火入れし、甘みを引き出した甲州ワインビーフとバルサミコで合えたキャベツのサンドイッチ。
カジュアルな料理なのに手が込んでいる。贅沢で満足な楽しい一品。
AIM Brew LAB./#1.1 THE BEGINNING
アメリカンスタイルのペアリングということで、サンドイッチにはクラフトビール!
お肉の旨みと繋がるホップの苦みや香ばしさが実に心地よく、ゴクゴク飲んでしまいます。
お肉だけでなく、パンも薪火で焼いて、その場で仕上げます。
豊島シェフのプレゼンテーションに一同聞き入りながら、都度期待を高めます。
さて、次はいよいよメイン。
どんなワインとお料理のペアリングなのか、後編へ続きます。
ワイン&チーズライター 磯部 美由紀
日本ワイン.jp チーフエディター / J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
ワイン記事監修実績:すてきテラス Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕