ワイン用のブドウを栽培する際、その土地の気候条件に合わせたものを選ぶことが重要だ、といわれています。
「北海道は冷涼なのでドイツ品種栽培が盛んだ」とか「塩尻は湿潤なのでメルローの品質が高い」など、日本各地のワイン産地でもブドウにおける「適地適作」という考え方が大切にされているようです。
“ワインにそこまで詳しくない”という方でも、ブドウ品種と気候の関係性が理解できているとワイン選びがグッと楽しくなります。
ここでは、さまざまな気候とその場所に適しているブドウ品種の関係性について簡単にまとめてみました。
ぜひ、参考にしてみてください。
気候の特徴における適合するブドウ品種について
ワイン栽培における気候区分は、カリフォルニア大学デイヴィス校のウィンクラー博士によって詳しく定められています。
しかし、ここではよりシンプルに…
- 暑い
- 温暖
- 冷涼
といった特徴に分けて解説していきたいと思います。
気候の特徴① 暑い
気候の特徴のひとつ、「暑い」。
しかし、一口に暑いといっても「乾燥地帯」と「湿潤地帯」があり、それぞれ適したブドウ品種に違い見られます。
それぞれ解説していきましょう。
暑くて乾燥している
暑い晴れの日が続き、夜涼しいのが暑くて乾燥している場所の気候の特徴です。
成長期、成熟期が続くことで健全なブドウ栽培が可能になりますが、灌漑が必要になったり成熟し過ぎてストラクチャーのないワインができあがるリスクがあるといわれています。
適合する品種は、
- グルナッシュ
- ムール・ヴェードル
- サンジョヴェーゼ
- カベルネ・ソーヴィニヨン
- マルバジア
- マルサンヌなど…
南フランスやスペイン、イタリアの中部から南部で有名なブドウが適しているようです。
暑くて湿潤
気温は高いものの成長期に雨量が多く湿潤な産地で、やや日照量も少なくなる傾向。
病害が心配されるため、果皮が厚く腐れに強い品種がよいとされています。
適合する品種は、
- タナ
- プティ・ヴェルド
- ヴィダル
- プティ・マンサンなど…
一部、日本ではプティ・ヴェルドやタナを栽培する生産者がいます。
また、収穫量の観点からやばり病害に強い果皮の厚い品種の栽培が好まれているようです。
気候の特徴② 温暖
熱帯気候と冷帯気候の間の気候で四季の変化が明瞭な気候、温暖。
「乾燥」と「湿潤」、それぞれ解説していきます。
温暖で乾燥
温暖で乾燥は、温暖から高温にわたる気候で日中が暑く寄る冷涼といった特徴があります。
広範囲の品種栽培に向いていますが、極端に熟成が早い・遅い品種は避けるべきとされているようです。
適合する品種は、
- シラー
- シャルドネ
- テンプラニーリョ
- ソーヴィニョン・ブラン
- ジンファンデルなど…
比較的有名な品種が適している気候で、乾燥していることから病害の心配があまりないところがメリットかもしれません。
温暖で湿潤
夏場、日中も温暖、夜も気温があまり下がらない特徴を持つ気候。
成長期や収穫期に定期的に雨が降りやすいといわれています。
適合する品種は、
- メルロー
- カベルネ・フラン
- ヴィオニエなど…
メルローやカベルネ・フランなど、日本でも良質なワインが多く造られています。
比較的、日本は「温暖で湿潤」な気候区分に入る場所が多いのかもしれません。
気候の特徴③ 冷涼
近年、繊細かつエレガントなワインを造るために多く生産者は冷涼地を求める傾向にあります。
冷涼地においても、「乾燥」と「湿潤」があるため、それについて解説していきましょう。
冷涼で温暖
日中は温暖ながら夜間は冷涼。
日ざしが強いほか湖水の影響がある場所は十分な日照量を得られることから、ストラクチャーのしっかりとしたブドウができやすい傾向があります。
基本的には早熟系のブドウ品種が向いている傾向です。
適合する品種は、
- ピノ・ノワール
- ガメイ
- リースリング
- ピノ・グリ
- ゲヴェルツトラミネールなど…
これを見ると北海道で成功している品種が多い傾向です。
ちなみこの気候の特徴として、“降雨量が少ない”ところも特徴といわれています。
冷涼で湿潤
日中は温暖であるものの、夜は露が降りるほど冷涼になる気候。
成長期は短く、冬場はマイナス20℃以下になることもあります。
適合する品種は、
- デラウェア
- セイベル
- ヤマブドウなど…
デラウェアはもちろん、セイベルは日本でも活躍しているブドウ品種。
ヤマブドウをはじめ、ハイブリッドなど厳しい環境でも育つ強いブドウが求められています。
気候と品種は興味深い関係性
一般的にワイン用ブドウには「適地適作」があると考えられています。
中には、ほとんど関係ない…という生産者もいますが、イタリア ピエモンテ州のネッビオーロが他国でほとんど成功していないことを考えると、それなりに関連性があることはたしかです。
絶対ではないものの、この組み合わせを知っているだけでワイン選びがより楽しくなるはず。
ぜひ、基本として覚えておきましょう。
参考
ブドウ畑から始まる職人ワイン造り: ブドウ栽培から仕込みまで、著者 ジム・ロー