夏から秋にかけて旬を迎える野菜のひとつが、なすです。
一年中美味しく食べられる野菜ですがなすの旬は6月から10月くらいまでと言われており、収穫時期によって、「夏なす・秋なす」と呼び名が変わります。
なすは日常の食卓に取り入れやすい野菜だけに、どんなワインと合うのか知るだけでQOL(クオリティ オブ ライフ)が高められるのではないでしょうか。
本記事では、なすとはどんな野菜なのか、どんなワインとペアリングさせやすいのか解説していきます。
なすについて
なすについて基本的な情報を下記にまとめました。
- なすとは?
- 夏なすと秋なすの違いとは?
- 良いなすの選び方
それぞれ解説します。
なすとは?
なすとは、ナス科ナス属の植物のことです。
なすと言うと紫色に下膨れのようなぷっくりとした卵形を想像しますが、長なすや中長なす、大長なす、米なす、小丸なす、白い色をした白なすなどさまざまな種類があります。
なすの紫色は、“ナスニン”と呼ばれるポリフェノールが影響しており、白なすはその含有量が少ないため色白になるようです。
日本人にとってなすは身近な野菜ですが、なすはインド東部の生まれだと考えられており、5世紀頃に古代ペルシャなどに伝えられたと言われています。
中国では1000年以上前から、ヨーロッパでは13世紀頃からなすが作られていたとのことですが、日本におけるなすの歴史は奈良時代にまで遡ることができるようです。
朝鮮半島または東南アジアなどさまざまなルートで伝来したと考えられており、平安時代に書かれた本にもなすの作り方が掲載されています。
古くから日本でも愛されていたなすだけに、江戸時代につくられた初なすは高額で取引されていたとのことです。
なす栽培は日本全国に広まり、それぞれの土地で栽培されてきた在来種など幅広い品種が残っているところが特徴でしょう。
一口になすと言っても、「千両」や「千両二号」と呼ばれる中長なす、「南部長」、「大阪長」と呼ばれる長なす、丸い「巾着なす」などさまざまな品種を楽しむことができる野菜でもあるのです。
クセのない淡白な味わいと柔らかな食感、煮ても焼いても、蒸しても、漬け込んでもおいしくいただけるなど、なすは偉大な野菜のひとつと言っても過言ではないでしょう。
夏なすと秋なすの違いとは?
本記事が掲載されている時期は夏の終わり頃で、夏野菜のひとつとして知られているため旬の時期は過ぎてしまっていると思われた方もいるかもしれません。
しかし、なすの旬は6月から10月頃と言われており、これからのなすは、“秋なす”として出回るようになります。
じつはなすは収穫時期によって呼び方が変わる野菜です。
6月頃から8月頃にかけて収穫されたものが、“夏なす”、9月以降に収穫されたなすが、“秋なす”と呼ばれています。
秋なすは夏なすと比較して皮が柔らかく水分を豊富に含むため、“柔らかさ・旨み・甘み”が夏のそれと比較して強くなり、よりおいしく食すことができる状態です。
日本には、「秋茄子は嫁に食わすな」という大変有名なことわざがありますが、おいしい秋なすを嫁に食べさせるなどもったいない、といった嫁いびりを意味しているそうです。(一方で嫁の体をおもんぱかった意味もあるそう)
ちなみに、高知県や福岡県、熊本県などは12月から6月にかけてハウス内で育てたなすの収穫期と言われているため、夏から秋だけでなく1年中おいしいなすを食べることができます。
良いなすの選び方
スーパーやデパートの野菜売り場、八百屋でなすを購入する際、できれば良いなすを選びたいところです。
なすを選ぶ時、色が濃く、皮がしっかりと張っているものとツヤのあるもの、傷や変色がないものを選びましょう。
また、ヘタやガクがしっかりとしたものは、鮮度が高いと言われています。
ガク部分にとげがある品種であれば、尖っていればいるほど新鮮です。
なすの成分はほとんどが水分であるため、持った時にずっしりと思いものを選ぶ必要があります。
軽いなすは水分が抜けてスカスカになっているため、本来のおいしさを楽しめません。
ぜひ、これら情報をなすを購入する際の参考にしてみてください。
なすとワインをペアリングさせる上でのポイント
なすとワインをペアリングさせる上で肝心になるのが、なすの風味です。
なすの風味について下記で解説しましょう。
なすは90%が水分
ワインと食材を合わせる際、その食材に含まれるさまざまな成分や香気成分をベースに考えますが、なすに含まれる成分の90%が水分ですので、ほぼ水分でできている野菜と言えます。
葉酸、ビタミンK、カリウムなどの栄養素を豊富に含み、また皮はアントシアニンの一種であるナスニンが含まれており抗酸化作用が期待されているようです。
また、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸も含まれており、健康には良いと期待されているものの多少の苦味・渋みがあるため、調理方によってはアク抜きをした方が良いと言われています。
なす独特の風味はあるものの、ほかの野菜と比較して突出してなすらしい香りといったものは少なく、やはりなす最大の特徴はテクスチャーと甘みにあるかもしれません。
パリッとした食感にするか、加熱してトロトロにするか、その部分で合わせるワインも変わってきそうです。
また、なすは加熱すると甘くなりますが、加熱時間が長ければ長いほど糖濃度は高まるとされています。
アクの要因も100℃以上の加熱によって甘みに変化するとのことで、なすの特徴は香りや風味というよりは、甘みと考えても良いでしょう。
ただし、沸騰したお湯になすを入れてそのまま食べるといった方は少なく、なすの加熱となると油を使用する方が多いかもしれません。
なすは油との相性が良いと言われていますが、なすが油を吸収することでアクが抜ける上に旨みが増すことが理由と言われています。
なすの調理法は無限大なので、使用する調味料や合わせる食材、料理によってペアリングは変わってきそうですが、ポイントは、「テクスチャー・甘み・油」といったところかもしれません。
なすに合わせるワインの選び方
なすにワインを合わせるのであれば、どんなワインをチョイスするべきでしょうか。
今回は、なすをよりシンプルに合わせるためにも焼きなす、さらに油でシンプルに炒めたなすとワインの相性を探ります。
まず、自宅のグリルやバーベキュー、焼肉などでなすをシンプルに焼いて食べる機会もあるでしょう。
しょうが醤油、焼肉のたれ、塩など淡白な味わいなのでどんな調味料でも合わせやすそうですが、焼きなすの特徴は柔らかさと甘さに加えて、スモーキーさが加わるところです。
アク抜きしていない場合はちょっとした苦味もプラスされるため、このあたりを考慮すると合わせるワインを選びやすくなります。
淡白で甘いため白ワインでも良さそうですが、大地のニュアンスもなすからは感じられること、甘くスモーキーでやや苦味があるといった点から、シラーも良いかもしれません。
スパイスのニュアンスが強い辛口のシラーが、焼きなすのうまみをより倍増してくれそうです。
日本ワインではないものの、プリミティーボやバルベーラ、シチリアの赤ワインも良いでしょう。
では、油を使って炒めたなすはどうでしょうか。
シラーも良いですが、タンニンが強すぎる場合はまろやかな味わいと衝突してしまいます。
そこで、酸味とほど良いタンニン、柔らかなニュアンスを感じさせるメルローはどうでしょうか。
とくに日本ワインのメルローはクセがなく土っぽさもあり、それでいてフレッシュでフルーティー、スパイシーさもあります。
もちろん、気軽に購入できる輸入ワインのメルローでも良いですが、やや冷涼な産地のエレガントタイプのものが良さそうです。
上記、シラーともお伝えしましたが、焼きなすとメルローも意外に良い組み合わせかもしれません。
トマトソースを使ってなすを調理すれば、おそらく完璧です。
では、そのもくろみは正しかったのか、下記でお伝えしていきましょう。
なす×メルロー
今回、なすはシンプルに焼いたものと油で炒めたものを用意しました。
味付けはとくにせず、なす本来の味わいでワインを合わせてみます。
用意したのは一般的なメルローです。
画像の手前から上が焼きなす、下が油で焼いたなすになります。
まずは焼きなすですが、水分がやや抜けたものの甘く柔らかな食感です。
香ばしさがあり、予想通りメルローのスパイシーな風味も合います。
少しだけ苦味を感じる焼きなすとメルローのシルキーなタンニン、なすの甘さもメルローの果実味とバランス良く印象です。
次に、油で炒めたなすですが、個人的にはこちらはとくにメルローと好相性でした。
風味豊かで柔らかなメルローは、油をたっぷりと吸って甘く瑞々しさを残したなすと方向性が近く、全く喧嘩しません。
油でよりこってりとした甘みが出るなすですが、タンニンが今度はその油分をさっぱりさせてくれるため、どんどん食べ進められます。
そぼろ肉を加えたなす、牛肉や味噌と炒めたなすなど、工夫すればよりメルローとの相性がよくなりそうです。
まとめ
日常的に食べているなすだけに、ワインとの相性が良いことが発見できれば日々の食事が楽しくなるはずです。
今回は焼きなすや炒めたなすでしたが、漬物などであれば甲州やデラウェア、こってり味噌であればマスカット・ベーリーAなども良いでしょう。
これからなすが甘くおいしくなる季節です。
積極的に、ワインとのペアリングを楽しんでみてはいかがでしょうか。
参考
https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=7
https://www.maff.go.jp/j/agri_school/a_tanken/nasu/01.html
https://oishii-yasai.com/sironasu-toronasu.html
https://www.maff.go.jp/j/agri_school/a_tanken/nasu/03.html
https://himitsu.wakasa.jp/contents/eggplant/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/20/0/20_0_170/_article/download/-char/ja
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0709_yasai1.html