近年、品質の高いワインを多く生産する産地として人気を博しているのが長野県です。
日本ワインにとって重要なワイナリーが数多く点在することはもちろん、年々振興ワイナリーが増え続ける大注目産地でもあります。
そんな長野県と言えば、2013年に発表された、「信州ワインバレー構想」が有名です。
長年にわたり4つのバレーが、「NAGANO WINE」の魅力を発信していましたが、昨年末頃に5つ目のワインバレー、「八ヶ岳西麓ワインバレー」が加わりました。
本記事ではあらためて、「信州ワインバレー構想」、そして八ヶ岳西麓ワインバレーについて紹介していきます。
「信州ワインバレー構想」から「信州ワインバレー構想2.0」へ
「信州ワインバレー構想」は、長野県におけるワイン産業の進行を目指すために策定されたもの。
世界のワイン銘醸地の多くは、「バレー=谷地」といった意味を超えて「ワイン産地」としての意味を持つことから、ワイン産業が盛んな長野県においてもその名が付けられました。
同ワインバレー構想が策定されたのは2013年で、当時ワイン用ブドウからワインを醸造するワイナリーはわずか25軒。
しかし10年後の2023年末には、ワイナリーは80軒以上へと倍増します。(もちろん現在も新たなワイナリー設立を目指す生産者が後を絶たちません)
2023年から次の10年に向けて長野県は、「信州ワインバレー構想2.0」をスタートさせ、それに伴い「八ヶ岳西麓ワインバレー」を追加。
長野県は今、日本が世界に誇るNAGANO WINEを生み出す、“日本ワインの一大産地”へと進化を遂げています。
4つバレー、八ヶ岳西麓ワインバレーについて
さて、「信州ワインバレー構想」策定当時から存在する4つのバレーが下記です。
- 桔梗ヶ原ワインバレー
- 日本アルプスワインバレー
- 千曲川ワインバレー
- 天竜川ワインバレー
桔梗ヶ原ワインバレーには、「井筒ワイン」、「サントリー塩尻ワイナリー」、「三々ワイナリー」、「アルプス」などが点在。
日本アルプスワインバレーには、「ノーザン・アルプス・ヴィンヤード」、「安曇野ワイナリー」、「le mileu」、「ドメーヌ・ヒロキ」など。
千曲川ワインバレーには、「小布施ワイナリー」、「カンティーナ・リエゾー」、「シャトー・メルシャン椀子ワイナリー」、「ツイヂ・ラボ」、「マンズワイン小諸ワイナリー」などが。
天竜川ワインバレーには、「伊那ワイン工房」、「VINVIE」、「クロドテンリュウ」などが位置しています。
「信州ワインバレー構想2.0」では、ワイナリー100場を目標にしているようですが、この目的は早々に達成されそうです。
さて、これら4つのバレーに仲間入りしたのが、八ヶ岳西麓ワインバレー。
一体、どんな特徴を持つのか下記で解説していきましょう。
八ヶ岳西麓ワインバレーとは?
八ヶ岳西麓ワインバレーは、信州ワインバレー構想へ2023年3月末日に加入した新エリア。
「八ヶ岳西麓エリア」の原村・茅野市・富士見町が同ワインバレーに含まれます。
原村は令和2年12月11日にワイン特区を取得していますが、構造改革特別区域計画の変更が令和5年3月31日に認定されたことにより、対象地域が茅野市と富士見町を加えた3市町村全域に拡大しました。
同特区の名称は、八ヶ岳西麓ワイン特区。
ちなみに緩和措置として、果実酒の最低製造数量基準が6キロリットルから2キロリットルに引き下げられるということで、今後も新興ワイナリーの増加が見込まれます。
八ヶ岳西麓ワインバレーの特徴
八ヶ岳西麓ワインバレーは、その名の通り八ヶ岳の西麓に位置するエリアで、南アルプスや中央アルプス、北アルプスなど登山家にはたまらない有名な山々を眺めることができる場所です。
どことなくイタリア北部のワイン山地を彷彿とさせる雰囲気ですが、やはり八ケ岳西麓の住民生活の中心地の標高900mから1,300mと高所であり、ブドウ畑も標高800mから1,000mの場所に位置するなど冷涼な産地ということがわかります。
夏場はたまに30度を超えることもあるようですが、熱帯夜になることはほとんどないため、昼夜の温度差が大きい産地と言えそうです。
ただし標高の高いエリアは夏場も涼しく、高所エリアにしては日照量も全国的に多いと言われています。
また、とくに同エリアは湿度がやや低いといった部分も注目です。(平均湿度は30%から40%だそう)
別荘、リゾート、避暑地のイメージを持つ方も多いですが、夏場はカラッと涼しく過ごしやすいエリアということになりそうです。
上記の条件が全てではないものの、八ヶ岳西麓ワインバレーはワイン用ブドウ栽培にとっては魅力的な条件でしょう。
さらに八ヶ岳西麓エリアのワイン用ブドウ畑は、八ヶ岳から伸びる水はけの良い扇状地に点在していることから、土壌の条件も良さそうです。
そのため、八ヶ岳西麓ワインバレーで栽培されているブドウ品種の多くはヴィティス・ヴィニフェラ種が中心となります。
- シャルドネ
- リースリング
- ゲヴェルツトラミネール
- ピノ・ノワール
- バルベーラ
- ドルンフェルダー
- メルロー
- タナ
ちなみに八ヶ岳の麓ということで土壌組成は火山性土壌の黒ボク土が中心。
この寒暖差によって果実味と酸味が強いワインが生み出されますが、それが八ヶ岳西麓ワインバレーの特徴と言われています。
八ヶ岳西麓ワインバレーのワイナリー
振興エリアとして注目されている八ヶ岳西麓ワインバレーには、まだワイナリー数は多くはありません。
2024年7月現在における、八ヶ岳西麓ワインバレーのワイナリーが下記になります。
- オレイユ・ド・シャ ビーナスライン醸造場
- 水掛醸造所
- 八ヶ岳はらむらワイナリー
- みね乃蔵
オレイユ・ド・シャ ビーナスライン醸造場は、2023年10月に誕生した茅野市初のワイナリー。
小出徹さんが家族と営むワイナリーです。
水掛醸造所は、長野県諏訪郡原村に位置するワイナリーで、アルザス系品種を主体としたワインづくりを行っています。
八ヶ岳はらむらワイナリーは原村初のワイナリーで、原村の土建会社「(株)昌栄」が解説したワイナリー。
醸造家の鎌倉宏吉氏は、アルカンヴィーニュや信州たかやまワイナリーで研修を積んだ人物です。
みね乃蔵は、30代でUターンした小林峰一さんが50歳を機にスタートさせたワイナリーで、標高1000m超の八ヶ岳山麓でピノ・ノワールを中心に自然酵母で醸すワインをつくっています。
まとめ
日本有数の名山が連なる八ヶ岳西麓ワインバレーから生み出されるワインは、ほか4つのバレーとはまた違った魅力に溢れています。
「信州ワインバレー構想2.0」の新興エリアとして加わったばかりのエリアだけに、これからの成長が楽しみで仕方がありません。
日本ワインファン、NAGANO WINEファンはもちろん、新しい産地を探していた方はぜひ八ヶ岳西麓ワインバレーのワインを楽しんでみてはいかがでしょうか。
参考
https://www.nagano-wine.jp/winery/
https://www.vill.hara.lg.jp/docs/63775.html