冬に旬を迎える食材のひとつが、「タコ」です。
ただし、タコと一口に言ってもさまざまな種類が存在しますが、中でも冬に旬を迎えるのはマダコと言われています。
兵庫県や福岡県など関西では夏に旬を迎えるとされているマダコですが、関東以北が産地であるマダコは11月から1月が旬です。
マダコは年末年始にもよく使用される食材ですし、日常的に食すことが多い食材だけに相性の良いワインを知っておきたいところ。
本記事では、冬に旬を迎えるマダコとワインの相性について考えます。
マダコについて
マダコについて下記の内容にまとめました。
- マダコとは?
- タコの豆知識
- 美味しいマダコの見分け方
それぞれ解説しましょう。
マダコとは?
マダコは、軟体動物の一種です。
具体的には軟体動物門頭足綱八腕形目マダコ科マダコ属の一種で、イカや貝類などと同様に頭に足がついている頭足類に分類されます。
タコは世界に数百種類生息していると考えられていますが、日本で食用として利用されているのはマダコやミズダコ、イイダコなどです。
関西では夏場に旬を迎えますが関東以北で水揚げされるタコは11月から1月、これから寒くなる季節に旬を迎えます。
マダコは平均60cmほどの大きさで、しっかりとした食感と噛むほどに染み出す旨味、さっぱりしながらも奥深い複雑性のある味わいが特徴です。
年末年始、関東以北ではマダコは煮ダコや酢だことして食べられることが多く、色鮮やかな紅白模様や「たこ=多幸」の語呂合わせなど縁起の良い食材と認識されています。
西洋の伝説ではタコが恐れられており、国によっては「デビルフィッシュ」と呼ばれるなど忌み嫌われる存在としても有名です。
そのため、タコを食用として利用しない国も多いのですが、日本や地中海沿岸諸国、東アジア諸国をはじめ、近頃ではその美味しさに目覚めたのか世界的需要が高まっており、近頃タコが高騰しているといったニュースも流れました。
ちなみに、質問されたら咄嗟に答えられない方も多いかもしれませんが、タコの足は8本、イカの足は10本ですので覚えおておきましょう。
マダコの豆知識
マダコは魚介類の中でも栄養豊富な食材です。
カリウムやマグネシウム、亜鉛、リンなどミネラルが多く含まれており、糖質や脂質、ビタミンEやビタミンB12などのビタミン類はもちろん、カロリーが低い上にたんぱく質も豊富なのでダイエットにも向いているでしょう。
さて、そんなマダコに特徴的な栄養素といえば、「タウリン」です。
某栄養ドリンクに含まれていることで認知度の高いタウリンですが、日常的にタウリン摂取を目的とした食事をされている方は珍しいかもしれません。
タウリンはアミノ酸に似た物質であり、コレステロールを減らす機能が期待されています。
さらにタウリンは肝機能向上、血圧を下げるなど、健康生活を送りたい方には嬉しい食材でもあるのです。
さて、上記でお伝えしているようにマダコの旬は冬ですが、関西や九州などでは夏に旬を迎えます。
九州では「盆ダコ」、瀬戸内海で水揚げされるものは「麦わらダコ」と呼ばれており、夏こそタコの最盛期といったかたちで食されているようです。(関西では半夏至にスタミナ補充の意味合いでタコを食べる風習があります)
関東以北、関西におけるマダコの旬時期の違いですが、産卵期ではなくその土地における食文化による違いだと考えられています。
マダコには明確な産卵期がないそうで、地域により差が大きいそう。
冬に水揚げされることの多い関東以北、またお正月料理に使用されるなどさまざまな理由から冬が旬とされているようです。
美味しいマダコの見分け方
ワインと合わせるマダコ料理を用意したい方であれば、販売店でより美味しいマダコを選ぶ必要があります。
まず一般的に生の状態であれば太っており足が太いもの、茹でたものであれば身がぱつんぱつんに張っており足がくるんと巻き、全体的に硬いものが鮮度が良く美味しいマダコです。
茹でたものでレンガ色、濃いあずき色は国産のものが多く、明るすぎる赤い輸入のマダコよりも味が良いとされています。
また、一歩踏み込んだ選び方として、マダコのオスメスを見分けて選ぶといった方法もおすすめです。
見分け方としては、吸盤が大きくバラバラなものがオス、小さく規律正しく整然としたものがメスになります。
オスは身がしっかりと引き締まって硬く、メスはやや柔らかな食感が特徴になるため、調理する内容によって変えても良いかもしれません。
マダコの風味や食感を考える
マダコをワインに合わせる際、ポイントになるのがマダコ自体の味わいや食感です。
上記でお伝えしたようにマダコはその上品な味わいが魅力で、噛むほどに旨味が増すといった特徴があります。
まず、マダコとイカのアミノ酸量を比較した研究がありますが、タウリンやアルギニン、β・アラニンといったアミノ酸以外、イカに比べてタコは圧倒的にアミノ酸量が少なかったようです。
中でも特に少なかったアミノ酸は、メチオニン、ヒスチジン、オルニチンなどのようですがメチオニン、ヒスチジンはほのかな苦味、オルニチンに味はないものの美味しさ増強効果が生じるなどと言われており、マダコとワインを合わせる上ではひとつポイントになります。
ただしマダコはイカよりアミノ酸量が少ないとはいえ、イノシン酸やグルタミン酸などタコにも含まれており、旨味をしっかりと感じられるのでご安心を。
さらにベタインと呼ばれる成分はタコにも多く含まれており、旨味増強効果、塩、酸味、苦味などを和らげる効果もあるとのことで、マダコをじっくりと噛み続けることで旨味を感じる一助になっているのかもしれません。
水産物特有の香りも、マダコの特徴です。
さらに苦味や酸味なども感じにくく、繊細で上品な味わいと解釈すると良いでしょう。
マダコはほか魚介類の中では淡白な味わいであり、生・焼・蒸・煮などどんな調理方法でも美味しく食することができます。
そんな淡白な味わいのマダコにとって重要になってくるのが、やはりテクスチャーでしょう。
とある研究によると産卵期によってテクスチャー、つまり身の硬さに違いがあらわれるようで、瀬戸内海産マダコは7月が最も硬かったようです。
柔らかすぎず硬すぎがタコの美味しさのポイントで、食べ方によっても理想的なテクスチャーに違いがあります。
刺身であればプリッとした硬さ、煮込むのであれば柔らかいなど、調理方法によって変化させる必要があるでしょう。
マダコは淡白で苦味や酸味のないクセのない味わい、ただし水産物特有の香りはあり、さらにプリッとしたテクスチャーが特徴と言えます。
ワインと合わせる上で、このあたりを考慮してみると成功させやすいかもしれません。
マダコに合わせるなら柑橘ニュアンスがある白ワイン
マダコは淡白であり、クセのない味わいが特徴です。
日本ではシンプルにお刺身で食べることが多いですが、世界には香辛料をたっぷりと使ったエスニック系のタコ料理も多く見られます。
要するに、シンプルな味付けから強い味付けまでこなす食材なわけですが、水産物特有の香りは簡単に排除することはできません。
香辛料をたっぷりと使った料理が多いのも、マダコが淡白であることはもちろん、水産物特有の香りを良い意味でマスキングするためと考えることができます。
だからといってマダコのような繊細な食材にパワフルで香りが強すぎるワインは少し合わないかもしれませんし、赤ワインの中には合わせることで生臭さを引き立ててしまうものもあるでしょう。
スパイスは良いですがベリーのニュアンスや木材、肉といったフレーバーはマダコ自体の繊細さを覆い尽くしてしまうかもしれませんし、マダコとチリソースを使ったものであればジャミーな赤ワインは合いますが少し限定的です。
日常的、さらにおせちのマダコと合わせるのであれば、パワフル過ぎない白ワインが良いでしょう。
また、マダコは酸味や苦味が少ないため塩分と柑橘のニュアンスがよく合います。
お酢もマダコと好相性ですが、この酸味が水産物特有の匂いをマスキングしたり、たこの旨味を増強させ、さらにテクスチャーも際立てます。
それらを考えると、白ワインには柑橘のニュアンスがり酸もキリッとしている、味わいが強すぎ繊細さを感じさせるものが合いそうです。
甲州やシャルドネなども良いですが、おすすめはリースリングではないでしょうか。
フレッシュな柑橘、さわやかな青リンゴ、若干のスパイスの香りはタコと良く合います。
またリースリングは酸味も豊富ですし、場合によってはオイリーなニュアンスもあり、オリーブオイルとの相性抜群なタコには最高です。
またマダコといえば天ぷらも美味しいですが、リースリングと天ぷらは最高の相性と言われています。
今回は、マダコとリースリングでペアリングしてみたいと思います。
マダコの天ぷら×リースリング
今回は、シンプルにマダコの天ぷらとリースリングを合わせます。
マダコの天ぷらには何もつけないパターン、レモンを絞ったて塩でいただくパターンでペアリングにチャレンジしてみました。
天ぷらの衣のサクッとした食感と油、タコの旨味をリースリングが包み込み素晴らしい相性です。
柑橘や酸味も良く合い、マダコのテクスチャーとのバランスも取れるためどんどん食べ進められます。
レモン、塩でいただく天ぷらと白ワインは鉄板ですが、リースリングとマダコの天ぷらであればさらにその相性は高まる印象です。
それら調味料がリースリングと完璧にマッチする中、鼻に抜けるタコの風味もリースリングの爽やかさと果実の香りにマッチし、後味も大満足でした。
マダコの天ぷらは簡単に作れるため、リースリングを楽しむ際のちょっとしたおつまみにもおすすめです。
まとめ
上記のペアリングのほか、生でマダコとリースリングを合わせましたが、イヤな生臭さを感じることはなく、むしろワインとマダコのほのかな甘さが際立ち、後味がワインの酸味でスッキリとなりました。
カルパッチョにしたものは完璧ですが、和でも合うため日常使いしやすいでしょう。
また、ソースが使われるたこ焼きやスパイスをふんだんに使用したもの、パエリア、赤いソースのパスタなどであれば軽やかな赤ワイン、メルローやカルメネールなどフルーティーかつスパイシーな赤ワインでも合いそうです。
私たちの日常に欠かせない食材であるマダコをおつまみに、ワインライフを充実させてみてはいかがでしょうか。