宮崎県と川崎市による包括連携協定を背景に開催された、食とワインをテーマにした交流イベントが開催されました。
昨年に続く第2回目となるこのイベントは、試飲会や食事会の二部構成となっており、ワインを軸に地域の取り組みや産業の未来を立体的に感じることのできるものです。

構成は、前半に生産者や関係者によるトークセッション、後半に実際の料理とワインを楽しむという流れ。造り手の言葉を聞いた上で味わうことで、それぞれのワインやひと皿ごとの料理が、より印象深く楽しめるという体験型イベントです。

都農ワインが語る、30年の歩みと今

会の始まりは、宮崎県都農町にある都農ワインの「キャンブルスコ・ロゼ ペティアン」で乾杯。

やや濃い色合いが美しいこのワインは、都農ワインを代表する品種のひとつ、キャンベル・アーリーを使ったスパークリングワイン。
年間約20万本のうち、実に約10万本をこのキャンベル・アーリーのロゼが占め、30年にわたってベストセラーを続けてきたという。食用ブドウから造られるワインでありながら、地元の食、たとえばチキン南蛮のような宮崎らしい料理にも寄り添う存在として親しまれてきたそうです。

さらにこの日は、微発泡の濁りワイン「モンペラシー」シリーズもお披露目されました。
「モンペラシー」は宮崎弁で“かわいい”を意味する言葉。土地の言葉をそのまま商品名にしたところにも、都農ワインの地域との距離の近さが感じられます。

都農ワインは今年30周年を迎えますが、造り手の赤尾氏は「ワインは年に一度しか造れないお酒。30周年といっても、まだ30回しか造っていない若いワインだと思っている。」と語られました。
経験を重ねながらも、毎年が試行錯誤の連続であり、完成ではなく更新の歴史であるという姿勢は、赤尾さんのワインづくりに対する真摯さそのものです。

都農町は、海の見える丘に広がるワイン産地であり、雨の多い温暖な気候という、ワイン造りにおいては決して容易とはいえない条件です。それでも、水はけのよい火山灰土壌を生かしながら、軽やかで土地らしい味わいを表現してきた歴史があります。
その背景には、最初にこの土地へブドウを植えた人々の夢があり、孫の代になってワイナリーとして結実したという歴史があるといいます。つまり都農ワインは、地域の願いの象徴なのかもしれません。

ワインから広がる“文化”の創造

都農ワインの存在は、まさに地域文化を育てる核でもあるようです。

コロナ禍にはパン事業も立ち上げ、ワインに合うパンや、ロゼワインを使ったあんこ、いちごジャムなどの加工品開発にも取り組んでいるという。ワイナリーの周辺にパン、食、加工、滞在の要素を広げていくことは“その土地を味わう体験”をつくることと言えましょう。

さらに、都農ワインに合う料理のレシピブックを町ぐるみで制作している話も紹介されました。
52週間、52品のレシピを通じて、道の駅で買った食材と都農ワインを日常の中で楽しんでもらうというプロジェクトです。ワインを特別な場だけのものにせず、暮らしの中へと引き寄せていく発想は、まさに地域文化とともに歩む都農ワインらしさを感じます。

10年後の夢として語られたのは、ワイナリー周辺を“民家農家村”のように育て、チーズやハム、野菜、宿泊まで含めた「オール都農」を体現することだそう。
海から昇る朝日を望むワイナリーで、土地の食と文化が完結する場所を目指すという構想は、地域そのものをひとつの文化としていく素晴らしい取り組みですね。

川崎でワインを造るという挑戦

一方、川崎市からは蔵邸ワイナリーの山田貢氏が登壇。
都市近郊でワインを造ることの難しさと可能性について、率直な言葉で語られました。

「川崎でワインなんて農業じゃない」と言われた過去があったといいます。しかしその悔しさを出発点に、2020年にワイナリーを立ち上げ、現在では農園、加工、レストラン、販売、ワインスクール、NPOといった多面的な事業を展開されています。

興味深いのは、農業の6次産業化を「地域のコミュニティ形成の手段」としている点です。
2025年には新しい醸造施設も整備し、大学生とともに設計したワイナリーや、農業とワインを軸に人が集う「岡上ワインヴィレッジ」も動き始めています。
2月にオープンしたばかりのこの場所には、自家農園の野菜や米を使ったカフェも入る予定で、ワインが街に根を張るための環境づくりが着実に進んでいるのです。

そして今回のイベントのために特別に用意されたのが、宮崎県産の桜材100%で作った樽によるロゼワイン。ワインにやさしいニュアンスを与える桜樽を用い、さらに施設内のテーブルや椅子にも宮崎県材を使用するなど、ワインを介して木材利用のストーリーまで紹介されています。

若い世代が積極的に加わるワイン文化

この日のもうひとつの見どころは、明治大学農学部の学生による「川崎ワインプロジェクト」の発表でした。
学生たちは、明治大学黒川農場でブドウを栽培し、自ら収穫し、オリジナルワインの製造やラベルデザイン、お披露目イベントまで手がけています。

今回提供されたのは、マスカット・ベーリーAによるロゼワイン。2時間のスキンコンタクト、野生酵母の活用、低めのアルコール度数など、具体的かつ彼らの意欲的な取り組みが紹介されました。
サクランボやアセロラなどのチャーミングで爽やかな香り。早摘みによる酸を生かし、前菜や刺身に合わせたいという説明もされていました。

宮崎を川崎に運ぶ!魅力的な食材

後半のディナーでは、宮崎牛、みやざき地頭鶏、都農町の高級魚タマカイ、都農のトマトなど、宮崎の食材が並びました。
宮崎牛は全国和牛能力共進会で4大会連続日本一という実績を誇り、地頭鶏は柔らかさと深い旨みを兼ね備えています。タマカイは都農町が官民一体で養殖に取り組む注目の魚であり、白身の上品な甘みが特徴だという。

それらの食材をホテルメトロポリタン川崎の宮下料理長が調理され、その魅力を伝えていました。
都農ワインのシャルドネを使ったタマカイのワイン蒸しなど、素材とワインを呼応させる工夫にも一同驚きです。料理の説明を聞くほどに、食材やワインが地域のブランドそのものだと感じます。

さいごに

農業、食、木材、観光、教育、地域活性化。
一見すると別々に見える要素ですが、ワインを媒介にし自然につながって、ストーリーが形成されています。しかもそれらは実際に味わい、香り、体感することができるのです。

宮崎と川崎、それぞれ異なる土地で育まれる挑戦が出会い、互いに刺激を与え合うこの取り組みは、そうした可能性を示します。今後の発展に注目の「崎×崎」プロジェクトですね。

まだまだ楽しめる!宮崎フェアは4月14日まで

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