人気の黒ブドウ品種、「シラー」。
フランス コート・デュ・ローヌ地方の主要品種として知られていますが、飲みやすいオーストラリアやカリフォルニア、チリなどのシラーに馴染みがある方が多いかもしれません。
ここでは、あらためてシラーの基礎知識や味わいの特徴、そして近年話題の「クール・クライメット・シラー」などについてお伝えしていきます。
シラーの起源は?
シラーは、フランス南東部で栽培されるデュレーザとモンドゥーズ・ブランシェというブドウ品種を親に持つ黒ブドウ品種。
フランス コート・デュ・ローヌ地方の主要品種としても知られていますが、温暖な気候を好むことから、オーストラリアのバロッサ・ヴァレーやカリフォルニアのパソ・ロブレスのシラー(シラーズ)も大変有名です。
房は円筒形で果粒は卵形、青みがかった黒色が特徴的。
本場ローヌ地方では、棒仕立てやグイヨ仕立てで栽培されることが多いようです。
シラーの特徴
シラーの特徴といえば、あの濃い外観。
パワフルでスパイシーな風味をもち、長期熟成に耐えるポテンシャルを持ち合わせていることから高級ワインも生み出す品種です。
シラーというと…
- ブルーベリー
- 黒胡椒
- 動物的な香り
- 甘苦系スパイス
- クローブ
- ナツメグ
- …etc
そして重厚感と強靭なタンニンが特徴ですが、産地や栽培方法などでさまざまな表情を見せることで有名です。
例えばコート・デュ・ローヌの高級シラーには、レザーなどの野性的な香りと強烈なスパイシーさ、緻密なタンニンを感じるものもあれば、ピノ・ノワールと間違えてしまうほどの華やかな香りと酸を持つものがあります。
新世界のシラーであれば、ブラックベリーをはじめとした果実味に溢れた、タンニンがまろやかな飲みやすいものに出会うことも多いでしょう。
また、白ブドウや他黒ブドウ品種とブレンドされることも多い品種であることも特徴的。
インパクトの強いキャラクターから主役級に扱われることも多いですが、脇役としても活躍できる万能ブドウ品種でもあるのです。
ロタンドンとユーカリ
シラーといえば、黒胡椒のようなスパイシーな香り。
とくに品質が高いものにはこのニュアンスがよく感じられ、まさにワインの良きスパイス役として活躍してくれます。
さて、この黒胡椒の香り。(スパイシーな香り)
2008年にオーストラリアのワイン研究所 AWRIが、「ロタンドン」という化合物に由来していることを突き止めています。
ロタンドンはとても強力な成分でワインに少量含まれているだけでも、かなりの影響を与えるそう。
黒胡椒はもちろん、ハーブや香辛料に感じられる風味を生み出すのもロタンドンが関連していると考えられています。
ちなみに、このロタンドンは一部の人には感じることができない香りだという研究もあり、なんとその割合は5人に1人。
シラーの黒こしょうの香りをキャッチできなくても、鼻が悪いわけではないのでご安心を…。
オーストラリアはユーカリ?
オーストラリアのシラーといえば、シラーズ。
コート・デュ・ローヌのものより比較的飲みやすいことから、オーストラリアのシラーズが好き…という方も多いかもしれません。
さて、とある研究によるとオーストラリアのシラーズなどの赤ワインには、「ユーカリ」を思わせる香りがあるといわれています。
とくに、クレア・ヴァレー、クナワラ、パザウェイといった産地のものは顕著にユーカリ風の爽やかさを感じられるそう。
じつは、オーストラリアの赤ワインにはユーカリの香りの成分である「ユーカリプトール」が含まれているそうで、冷涼感、ミントのニュアンスを感じ取れるとのこと。
前述した地域はユーカリの樹が多いようですが、どうやらユーカリの葉から抽出されたオイルがブドウに影響を与えていることが関連していると示唆されています。
ロタンドンもハーブの香りに寄与するとお伝えしているので、とにかく爽やかなシラー(シラーズ)が飲みたい方はこれら地域から産出される赤ワインをチェックしてみるとよいのではないでしょうか。
クール・クライメット・シラーについて
最後に、近年流行りのクール・クライメット・シラーについてお伝えします。
冷涼な気候状態を意味するクール・クライメット。
つまり、クール・クライメット・シラーは冷涼地域で栽培されたシラーということになります。
シラーは光合成率の低さが特徴の黒ブドウであり日照時間がとても重要。完熟させるには、どうしても日照量の多い温暖な気候の産地で栽培する必要があります。
しかし、冷涼=日照量が少ないというわけではありません。
十分な日照量を得ながらも冷涼であることでブドウの糖度が急上昇せず、結果酸も減少も比較的抑えられることから、エレガントなワインを生み出すシラーが収穫可能。
さらに、シラーの特徴であるロタンドンは冷涼であればあるほどに含有量が増えるといわれているため香味に複雑性がもたらされます。
また、フェノールの成熟度が高くなる上に冷涼であるためアルコール度数が高くなり過ぎないというメリットも。
世界的に見ても冷涼産地のシラーが注目されていますし、日本でも安曇池田や長野の標高が高い地域で栽培されているシラーは業界関係者からも一目置かれています。
今後、日本各地の冷涼な地域でシラーが栽培される可能性もありますし、地域差が出てきてそれはそれでもおもしろいことになりそう。
これからも日本のシラーに注目です。
シラーがおもしろい!
前述したように、シラーは単一品種でワインにされることもありますし、白ブドウとブレンドされたり、ブレンド用として使用されることもある黒ブドウ品種です。
一般的な風味の特徴を押さえた後、それぞれのシラーの個性やブレンドすることでどういった印象になるのか、いろいろと飲み比べてみてもおもしろいでしょう。
シラーはこれからどんどん面白くなっていく品種。
ぜひ、目を離さずにチェックし続けてみてください。
参考
AWRI Pepper and spice in Shiraz What influences Rotundone levels in wines?