先日、都内にて日本ワイナリー協会主催の「ロゼワインワークショップ」が開催されました。
同セミナーは日本国内のワイン生産者やワイン関係者を対象に、日本におけるロゼワインの現状と可能性を共有する場として開催されたもの。
世界的にロゼワインは“ライフスタイルのひとつ”として取り入れられるようになりましたが、日本におけるロゼワインの立ち位置は、「赤ワインと白ワインの中間的存在」、「春のワイン」など未だ発展途上です。
同セミナーでは多様なロゼワインの試飲も含め、ロゼワインづくりの多様性、市場を意識した現状と可能性などを共有。
当日の内容をレポートします。
「ロゼワインワークショップ」について

日本ワイナリー協会主催の「ロゼワインワークショップ」は、2部制で開催されました。
1部は、日本各地のワイナリー5社の代表的なロゼワインとその製法についてのセミナーと試飲で、2部は世界の多彩なロゼワインの製法とスタイルを学びながら10種のロゼワインを試飲する内容。

また、1部ではソムリエ、そして日本ワインを販売する視点から見たロゼワインの課題や可能性についてのセミナーが用意されているなど、ロゼワインに“特化”した貴重で有意義な内容です。
「ロゼワインワークショップ」は、日本ワイナリー協会 理事長 大塚正光氏の挨拶からスタート。
「日本ワインはたしかな市場を獲得している一方で、ロゼワインをどのようにつくるのか、どう伝えるのか、楽しむのか、日本では発展途上。今回のセミナーは単なる試飲の場ではなく、つくり手とワイン市場を意識する立場の方が集合し、ロゼワインの現状と可能性を共有する貴重な機会だからこそ、積極的に意見交換してほしい」とコメント。
数年前からロゼワインの可能性は語られてきたものの、ワインのつくり手各社と市場を意識する関係者が一堂に会する機会は少ないだけに、当日も関係者が積極的に意見交換する姿が見られました。
各社の代表的なロゼワインとその製法

1部のスタートは、日本各地のワイナリー5社の代表的なロゼワインとその製法についてのセミナーから。
セミナー当日、登壇したワイナリーとワイン、登壇者がこちらです。
- 朝日町ワイン/マイスターセレクション 遅摘みマスカット・ベーリーA ロゼ 2024/鈴木俊也 氏
- 都農ワイン/キャンベル・アーリー ロゼ 2025/赤尾誠二氏
- アクアテラソル馨光庵/カリーニョ・ミオ 2024/平井祐一朗 氏
- サントリー登美の丘ワイナリー サントリーフロムファーム/登美の丘 ロゼ 2024/斎藤洋也 氏
- メルシャン桔梗ケ原ワイナリー/シャトー メルシャン 桔梗ケ原 ロゼ 2023/高瀬秀樹 氏
各社のロゼワインに対するこだわりを、下記でレポートしていきます。
朝日町ワイン

朝日町ワインの代表的なロゼワインとして紹介されたのが、『朝日町ワイン/マイスターセレクション 遅摘みマスカット・ベーリーA ロゼ 2024』。
遅摘みまで熟すことができる標高350mの柏原ヴィンヤードのマスカット・ベーリーAを原料に、セニエ法にてつくられています。
セニエの割合はブドウの状態で判断しており、このワインは20%セニエ。
健全なブドウであることが第一条件であり、良質なブドウを厳選して使用しています。
ポイントは赤ワインを少量加えているところで、テストを繰り返した結果、理想の味わいを完成させることができたそうです。
酸化を徹底的に防ぐつくりにこだわっており、醸造は還元的に進めているとも語られました。
市場を意識した取り組みとしては、甘口や中甘口、辛口と販売形態に合わせた瓶を使い分けながら、ニーズのある市場へそれぞれ販売しているとのことです。
『朝日町ワイン/マイスターセレクション 遅摘みマスカット・ベーリーA ロゼ 2024』は、チェリーのアロマがしっかりと感じられるロゼワインで、チャーミングな印象。
しっとりとした、まろやかで落ち着きも感じられる仕上がりです。
都農ワイン

宮崎県都農町に位置する、世界的にも注目されているワイナリー「都農ワイン」。
同ワイナリーを代表する銘柄『キャンベル・アーリー ロゼ 2025』のこだわりを、赤尾氏が語ります。
「都農ワイン」は生産されるワインのほとんどがロゼワインという稀有なワイナリー。
7月頃には収穫可能なキャンベル・アーリーでつくられたフレッシュで香り高いロゼワイン は、世界的にも注目されています。
『キャンベル・アーリー ロゼ』のこだわりは、ブドウは完全に除梗、酸化を防ぐために低圧で醸し、果皮との接触を長めに取っているところ。
ブラッシュと呼ばれている直接圧搾で仕込まれており、搾汁率も73から75%となっています。
キャンベル・アーリーらしい、イチゴのニュアンスを助長する酵母を使用しているところもポイントです。
濾過はせずに澱引きのみで貯酒。
甘口タイプであっても火入れなしで瓶詰めする、フレッシュさを目指したつくりが特徴です。
『キャンベル・アーリー ロゼ 2025』は、華やかなアロマとブドウの甘酸っぱいチャーミングな香りをたっぷりと味わえるロゼワイン。
爽やかな酸味が軽快さを表現していますが、果実の凝縮感と複雑性も感じさせる質の高い仕上がりです。
赤尾氏曰く、ぜひチキン南蛮と合わせてほしいとのことです。
アクアテラソル馨光庵

アクアテラソル馨光庵(けいこうあん)は、アクア(水)、テラ(大地)、ソル(太陽)というラテン語とワインの良い馨(かおり)が漂う場所を目指して名づけられた、2023年9月に東御市鞍掛に誕生した新しいワイナリー。
オーナーの平井氏がプロヴァンスを訪れた際に飲んだロゼワインの素晴らしさに感激し、その感動を日本でも表現しようと日々研究と探究を続けるラボ的なワイナリーとしても知られています。
アクアテラソル馨光庵の『カリーニョ・ミオ 2024』は、シラーを中心に、グルナッシュ、ムールヴェードル、サンソー、カリニャン、メルローの6種類のブドウが原料。
ダイレクトプレススタイルで仕込まれており、サーモンピンクの美しい色合いに落とし込むために各段階でチェックを欠かさないといったこだわりを持ちます。
プレス、発酵、亜硫酸量、濾過、瓶内だけではなくグラスに注いだ時の色調にこだわるなど、見た目の感動にも注意を払っているところが印象的です。
ブドウの収穫時期はシラーを中心に決めているとのことで、その主要品種と混和のバランスなども徹底。
アタックはさらりではなく、“とろり”を目指すなど、日本のプロヴァンスロゼを目指す姿勢は大変ユニークです。
品種が多いだけに酸度、香りのベクトルとの調整と味わいが難しく、試行錯誤を続けている最中とのこと。
『カリーニョ・ミオ 2024』は、複雑さを感じさせる香りとスパイシーなニュアンス、口当たりはまろやかですっきりとした味わいのロゼワイン。
ヴィンテージによってセパージュなども変化するとのことなので、これからが楽しみなワイナリーです。
サントリー登美の丘ワイナリー サントリーフロムファーム

世界的に高く評価されている日本ワインの最高峰 サントリー登美の丘ワイナリー サントリーフロムファームからは、『登美の丘 ロゼ 2024』が登場。
同ワイナリーにおけるロゼワインの全体構成は、金額ベースで2割とのことで、多彩なロゼワインが展開されているところが特徴です。
各区画に適したブドウ品種を栽培、登美の丘のブドウの多彩さを表現することをテーマにロゼが仕込まれています。
こだわりとして摘房したプティ・ヴェルドを活用しているところ、役割を明確にしたブドウ原酒をそれぞれバランスよく組み合わせているところです。
中でもプティ・ヴェルドは重要な役割を担っているそうで、ロゼワインの酸味のベースかつ香り立ちをよくする効果が期待できるとのこと。
比率、ブレンド、品種の質、酵母の選び方など醸造方法を徹底しており、鮮やかな色調を目指しながら、そのヴィンテージを表現する「表現型」のロゼワインを目指し仕込まれています。
『登美の丘 ロゼ 2024』に使用されている品種は、プティ・ヴェルド、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、リースリング・イタリコ、そして赤白混。
チェリー など赤系果実のフレッシュな香りとスパイス、爽やかでスイカを思わせるようなフレッシュな香りが特徴です。
イキイキとした酸味、果実の凝縮感とハーブ、余韻も長くリッチな味わいを楽しめる1本です。
メルシャン桔梗ケ原ワイナリー

「日本ワインの原点」ともいえるブランド シャトー・メルシャンのメルシャン桔梗ケ原ワイナリーが解説するのは、『メルシャン 桔梗ケ原 ロゼ 2023』。
ワイナリーのみで提供している貴重なロゼワインで、4つの品種を混醸したものを併用しているとのことです。
『メルシャン 桔梗ケ原 ロゼ 2023』は、メルローにフィアーノ、カベルネ・フラン、リースリング、白ブドウ混醸といった独特なブレンドで仕上げられており、ほかにはない複雑性を楽しめます。
以前、ロゼワインの酸度低下を防ぐために高酸度で知られるフィアーノを植樹し、2023年に収穫できたものを使用しているとのこと。
香りもマスカット系で、より質の高いロゼワインへと進化します。
そして、『メルシャン 桔梗ケ原 ロゼ 2023』最大の特徴が、「ジュース・スタビラシオン」と呼ばれる技術が利用されているところです。
発酵する前のブドウ果汁を低温で数日間置き、澱や不要物を沈殿させる手法として海外では多く取り入れられています。
デブルバージュまでの時間は10日から2週間で攪拌、上澄の果汁のみを別のタンクへと投入し酵母を入れて発酵。
酸化のリスク管理が難しい、気を抜けない作業とのこと。
味わいの成分や香り、甲州の場合はチオール成分が増強するなど、味わいが良くなるだけではなく、まろやかになるという利点があるようです。
それぞれ別に仕込まれた原酒を加えながら、そのヴィンテージを表現。
こちらも、「表現型」のロゼワインです。
柑橘を思わせるシャープなアロマ、果実味が凝縮しており、まろやかながら骨格も感じられる上質なロゼワインに仕上げられています。
ソムリエと販売側の視点
1部では、レストランでワインを提案・提供・管理するソムリエ、ワインを卸売・小売する販売者側の視点でロゼワインの現状・課題・可能性が語られました。
ソムリエとしては、「コンラッド東京」ソムリエ 大葭原風子氏、販売側としては日本のクラフトブランドの専門商社 株式会社CruX 代表取締役 有本雄観氏が登壇。
その内容について下記でレポートします。
ソムリエの視点

大葭原氏によると、世界のロゼワイン総消費量は全体の10%で、生産量は2000年代初頭と比較すると生産量は増加傾向にあるとのこと。
さらに、上記のロゼワイン消費量の75%はフランスとイタリア、スペインの3国で構成されているとのことで、ワインが文化として長年根付いている国は、ロゼワイン文化も醸成されていることが理解できます。
では、日本におけるロゼワインの立ち位置はどうなのか。
大葭原氏によると、近頃“ロゼ”をあえてオーダーするお客さまも増えているとのことで、日本国内のラグジュアリーホテルに訪れる客層を見る限り、日本国内でのロゼワイン人気は下火というわけでもなさそうです。
ソムリエ視点から、ロゼワインには下記のような魅力があると大葭原氏は語ります。
- セニエスタイルは北京ダックや東坡肉(トンポウロウ)などにも合わせやすく使いやすい
- 甘口から辛口がありメリハリがつけやすい
- バーラウンジではカクテル用としても使える
- アルコール度数が高すぎないためウェルカムドリンクとして使いやすい
一方、ロゼワインには下記のような課題があるとも指摘。
- 多様性ゆえに起こる曖昧な印象
- 日本は“春”など、推す時期が限定的
- つくり手側の想い・産地の個性が伝わりにくい
- 外観の色だけで味わいが判断しにくい
この問題を解決するためにも、つくり手と販売者の意見交換の場を増やすこと、ボトルを見れば味わいやストーリーがわかるようにすること、四季折々の楽しみ方提案と若者層の創出が重要だと考えているとのことです。
ちなみに、現場にはSNSで見かけたということで、“このロゼワインはあるか?”といった声をかけられるケースも増えてきたとのことで、つくり手・売り手含めてSNSを意識した販売戦略も重要ではないかと語られました。
販売者側の視点

1部の最後に登壇したのは、株式会社CruX 代表取締役 有本雄観氏。
株式会社CruXが運営する、「クラフトワインショップ」におけるロゼワインの販売状況(2025年データ)では、ロゼワインの比率は14.7%と想像以上に比率が高いと感じているようですが、在庫の割合から見ると販売はまだまだできていないとのこと。
ロゼワインの単価はスパークリングワインも含め、赤・白と比較して安価でありながら動きが悪いことを考えると、まだまだロゼワインの魅力が伝えられていないと考えられると有本は語ります。
では、なぜロゼワインは売れていないのか。
有本氏は、つくり手側の問題を指摘します。
- 赤ワインの副産物的な立ち位置ではないか?
- 色がうまくつかず、赤ワインとして売れなかったからつくったのか?
- 売りたいではなく、“売らざるを得ない”商品ではないか?
全てのつくり手が上記のような意識ではないですが、このような視点でロゼワイン を生産するつくり手はいるかもしれません。
それに加え、年配の顧客層の一部はロゼワインと聞くだけで購入を避けたくなるような方もいるため、このイメージを払拭するためには並大抵の努力では難しいと語ります。
しかし、世界的にはライフスタイルの一部として定着しているロゼワインだからこそ、日本でもまだまだ可能性があると有本氏。
つくり手側に求めることとして、「顧客のニーズに応える商品づくりができているか」を考えてもらい、さらにロゼワインへの考え方を流通にもしっかりと伝えてほしいと指摘します。
そして、それらを踏まえた上でワイン業界全体として、ロゼワインの可能性を広げるための施策として、下記のような対策が課題ではないかと指摘。
- 地域などでロゼを飲む文化の醸成
- SNSの積極的な活動
- ストーリーテリング
- 誰がどんなシーンで飲むかなどイメージの具現化
各社それぞれ、自社のロゼワインを指名買いしてもらうためには、そのロゼワインをブランドとして確立させる必要があるとも語られました。
未だ発展途上のロゼワインですが、有本氏はまだまだ可能性があると考えているとのこと。
例えば、ロゼワインの美しい色合いはSNSとの相性が良いだけでなく、飲み手自体の気分も盛り上げます。
そもそも色だけでエントリー層が手に取りやすいワインであり、さらにワインが苦手と考えてい層が抱く「重たい・渋い・酸っぱい」といった、ネガティブなイメージの払拭にロゼワインが一役買うのではないか、と考えているとのことです。
有本氏は、そもそも日本ワインは輸入ワインと比較して高価なものが多いからこそ、高くても顧客が手に取りたくなるブランドの醸成、プレミアムな価値を伝えるマーケティングが重要だと示唆。
ロゼワインを“売る”という視点から見ると、まだまだやるべきことが山積のようです。
まとめ

2部は世界のロゼワインの製法やスタイル、そして多様なスタイルのロゼワインが試飲からのグループディスカッションへ。
参加者同士、これからロゼワインをどのようにつくっていくのか、どのように売っていくのか真剣に意見交換をしている姿が印象的でした。
日本のロゼワインは世界的にも見てもクオリティが高いものが多く、全体的に見れば品質の面で他国に劣っているとはいえません。
一方、つくりにおける曖昧なイメージやブランド力、ロゼワイン文化の醸成の未熟さなど、ワインファンにその魅力が届いていないのが実情です。
つくり手はもちろん、飲食店、販売などワインに携わる全ての人たちが同じ方向を向き、目標に向かって歩みを続けていくことが、日本におけるロゼワインの価値が向上するはずです。
これを機会に、ぜひロゼワイン についてさまざまな視点から考えてみてはいかがでしょうか。
