日本で販売されているワインのラベルには、国内で製造された「日本ワイン」と「日本ワイン以外の国内製造ワイン」、そして「輸入ワイン」のどれかが表記されています。
輸入ワインはその名の通り、“海外から輸入されたワイン”を指しますが、なぜ国内製造ワインには2つの表示基準があるのでしょうか。
ここでは、日本ワインを知る上で必ず知っておきたい「日本ワイン」と「日本ワイン以外の国内製造ワイン」の表示基準の違い、またそれぞれの魅力についてお伝えしていきます。
日本ワインとそれ以外の国内製造ワインが別れている理由
まず、日本ワインと国産ワインが別れている理由について解説していきます。
日本ワインは新しい表示ルール
古くから日本のワインを知る方であれば、「日本ワイン」といった表示ルール自体があることを知らなかったかもしれません。
じつは日本ワインという表示ルールが適用されたのは、2018年10月30日。
それまで「日本ワイン」の定義はあったものの、法律で定められたいわゆる「ワイン法」のようなものは日本に存在していなかったのです。
フランスやイタリア、スペインなどヨーロッパ諸国はもちろん、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドなど、ほとんどのワイン生産国には、「ワイン法」があり、公的なワインの表示に関するルールが定められています。
日本の場合、輸入ワインや輸入濃縮果汁を利用した国内製造ワインも日本産ブドウを100%原料にして国内醸造されたワインも全て、「国産ワイン」として販売されていました。
これではワインを購入する側の消費者にとってわかりにくい上に、日本ワインの国際的な認知向上にも繋がりません。
これら理由から、国は国際的なルールを踏まえたワインにおける表示ルールを定めるために調整に入り、その結果2018年10月30日に「日本ワイン」と「日本ワイン以外の国内製造ワイン」といった二つの表示ルールが誕生したわけです。
日本ワインについて
ここからは、日本ワインの表示基準について解説していきます。
日本ワインとは?
日本ワインの定義はシンプルです。
- 日本ワインとは、国内で収穫されたブドウのみを使用し、日本国内で製造された果実酒のこと
日本国内で製造された果実酒・甘味果実酒が「国内製造ワイン」とされていますが、その中でも「日本で栽培されたブドウだけを利用し、それを日本国内にある醸造所で製造したワイン」だけが、日本ワインとラベルに表示することができるということです。
産地やブドウ品種、収穫年などの表示ルール
日本ワインの表示基準において、地名やブドウ品種名、ブドウ収穫年などを記載するためのルールが細かく定められています。
やや複雑なので、ここでは簡単に解説していきます。
例えば地名の表示の一例には、「産地で収穫されたブドウを85%以上使用し、収穫値と醸造地が同一である場合の産地名」というものがあります。
例えば上記であれば産地で収穫されたブドウと醸造地が一緒なので、その「産地名」を記載可能。
一方、収穫地と醸造地が違う場合はブドウの収穫地名が表示でき、使用ブドウが85%以下だった場合はワインの醸造地名を表示するルールとなっているようです。
ブドウ品種の場合、単一品種は85%以上ならその品種、2種類で85%以上使用した場合は使用量の多いブドウから順番に表示可能、3種類以上で85%以上であれば、使用量の割合を併記した後、使用量の多いものから表示できるとされています。
収穫年は、同一収穫年のブドウが85%以上原料とされていた場合のみ、その収穫年を表示することが可能です。
今までの表示ルールとの違いは、「日本ワイン」の表示と「一括表示」の記載、「特定の原料を使用した旨の表示」の記載などがありますが、とにかく日本ワインというものは、国産ブドウのみが原料とされ、さらに日本で醸造された「純粋な日本のワイン」と考えておけばよいのではないでしょうか。(純ワインといったものがあるのも変な感じですが…)
日本ワイン以外の国内製造ワインについて
ここからは、日本ワイン以外の国内製造ワインの表示基準について解説していきます。
日本ワイン以外の国内製造ワインとは?
そもそも国内製造ワインなのに、“日本ワイン以外の…”といわれると頭が混乱しそうですが、定義自体を見るとさほど複雑ではないことがわかります。
前述したように日本ワインは、国産のブドウのみを原料として使用し、日本国内で製造されたワイン。
それ以外…ということは、海外から濃縮果汁や原料ワインを輸入した後、国内で製造された(国内製造ワイン)ワインということになります。
「日本ワイン」という表示ルールが誕生した理由は現行の日本ワインのルールに則って製造しても、濃縮果汁などを利用したワインと同様の扱い(表示ルールにおいて)だったことが要因です。
もちろん日本ワイン以外の国内製造ワインにも魅力がありますが、それは後述します。
日本ワイン以外の国内製造ワインの表示ルール
日本ワイン以外の国内製造ワインの場合、ワインボトルの表ラベルに…
- 濃縮果汁使用
- 輸入ワインを使用
などの表示が義務づけられます。
つまり日本ワインと表示することはできないため、日本ワインだと思って日本ワイン以外の国内製造ワインを手に取ることはないでしょう。(似たように表示したようなものはありそうですが…)
また、日本ワイン以外の国内製造ワインには、表ラベルに地名及び品種などの表示をすることができない決まりになっています。
つまり、「〇〇産カベルネ・ソーヴィニヨン」といったことを表ラベルに記入することはできない、ということです。
それぞれの魅力
日本ワイン、そして日本ワイン以外の国内製造ワインの表示ルールについて解説しましたが、大切なことは“それぞれの魅力はどこにあるのか?”といったところです。
ここからは、それぞれのワインの魅力についてお伝えしていきましょう。
日本ワインの魅力
日本ワインの魅力は、なんといっても「純粋な日本産ワインの味」を楽しむことができるところでしょう。
北海道から九州まで各産地の特徴が色濃く出たワインが生まれることから、「多種多様な味わい」を楽しむことができます。
また、日本ワインを生産する生産者は小規模生産者も多いため、希少価値の高いワインが多いのところも特徴です。
善し悪しは別として、こういった現象により熱狂的なマニアが誕生したり、スター生産者などが生まれるため、日本ワイン業界が盛り上がり注目されるという側面もあるかもしれません。
こだわりのブドウ栽培・ワイン醸造を経た希少価値の高いワインに需要があることは、生産者が新しいワインを生み出す原動力にもなります。
「日本ワイン」といった表示ルールは日本ワインが躍進する上で、なくてはならない要因のひとつだったことは間違いないでしょう。
日本ワイン以外の国内製造ワインの魅力
日本ワイン以外の国内製造ワインというと、日本ワインに劣るワインといったイメージですが、そういった捉え方は避けるべきでしょう。
日本ワイン以外の国内製造ワインの魅力は、「ルールに縛られないワイン」を造れるところです。
ポリフェノールが多く含まれる機能的なワインや初心者向けのフレーバーがつけられたワイン、ワンコイン以下で購入できるカジュアルなワインなど、消費者が身構えずに楽しめる自由なワインを生み出すことができます。(ワイン法的な意味で)
サングリアを作ったり、料理に使ったり、アルコール度数が強いお酒が苦手な方だったり、カジュアルにワインを楽しむことができるのが、日本ワイン以外の国内製造ワインの魅力ではないでしょうか。
シチュエーションで使い分けて楽しむ
「日本ワイン」と「日本ワイン以外の国内製造ワイン」、そして「輸入ワイン」といった表示ルールを知ることで、よりワイン選びの幅が広がります。
ワインショップやデパートのお酒売場、スーパー、コンビニなど、どんな場所でもワインを選べるようになればワインがより身近になるはず。
「日本ワイン」と「日本ワイン以外の国内製造ワイン」に優劣をつけるのではなく、ぜひシチュエーションで使い分けてみてはいかがでしょうか。
参考