ワインが入っている容器といえば、あのガラスの瓶。
そう、通称「ワインボトル」と呼ばれているアレです。
ワイン初心者の方であれば、ワインボトルの形や色になぜ違いがあるのか疑問に思っているのではないでしょうか。
ここでは、ワインに使用されているボトル、「ワインボトル」について簡単に解説していきたいと思います。
ワインボトルのはじまりはクヴェブリ
ワインにおける保存の歴史は、古代ジョージアのワインを保管するために使用されていた大きな壷「Qvevri(クヴェブリ)」から始まったとされています。
その後、エジプト人によって発明されたアンフォラが航海輸送に適していると人気を博しますが、時代の流れと共に陸上での輸送が容易である木製のワイン樽が使用されるようになりました。
当時はガラス瓶が割れやすかったことから採用されていなかったようですが、徐々に厚く丈夫なガラス瓶の製造ができるようになり、販売・消費のしやすさから現在のようなガラス瓶にワインが入れられるようになったそうです。
ワインボトルの目的は安全に保存・保管できること
詳しくは後述しますが、ワインボトルには多種多様な種類があります。
多種多様な形状のワインボトルが存在しますが、ワインの品質向上を目的としているよりは、各産地に伝われる伝統的なガラス製造の結果そうなっているだけ…と考えられているようです。(スパークリングワイン用のボトルなどは少し別かもしれませんが)
つまり一般的なワインボトルの目的は、ワインを正しく保存・保管できることであり、それに入れたことでワインの品質が向上するために製造されているわけではない、ということになりそうです。(ここでは、天然コルク・合成コルク・スクリューキャップのことは無視します)
ただ逆にいうと、ワインが品質劣化しないような設計・製造であることは間違いありません。
ワインボトルにおける品質維持については、また後で詳しく解説するので興味がある方はチェックしてみてください。
ワインボトルの種類
ここからは、一般に流通しているワインボトルの種類についてお伝えします。
ボルドーボトル
日本ワインでも多く見かけるワインボトルが、ボルドーボトル。
円筒形でいかり肩といった形が特徴的です。
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、マルベックなど、やや色が濃くフルボトル系の赤ワイン、ソーヴィニヨン・ブランなどのボルドーで知られている品種の白ワインで多く見かける傾向にあります。
ブルゴーニュボトル
ピノ・ノワールやシャルドネといった品種を使用した、ブルゴーニュスタイルのワインに多く利用されているのがブルゴーニュボトルです。
いかり肩ではなく、肩が傾斜している“なで肩”の円錐形が特徴のボトル。
日本ワインでも、ブルゴーニュのような繊細かつ個性的なスタイルを目指している生産者のワインで多く見かけるボトルです。
アルザスボトル
数あるボトルの中でも、最も背が高く肩がおだやかに傾斜しているアルザスボトル。
細く繊細なイメージがあることから、どことなくオシャレな印象を与えるところが特徴です。(個人の意見です)
アルザスはフランス東部に位置するワイン産地で、アルザスボトルはゲルマンボトルともいわれるそう。
リースリングをはじめとした、ドイツ系品種で造られたワインにこのボトルが採用されていることが多い傾向にあります。
小ネタとしては、アルザスリースリングは茶色が多く、ドイツリースリングは緑色といったパターンが多いようです。
プロヴァンスボトル
日本ワインではそこまで見ることはありませんが、ボトルの種類にはプロヴァンスボトルというものもあります。
プロヴァンスといえば南仏を代表するワイン産地であり、ロゼワインが大変有名なリゾート地です。
プロヴァンスボトルの形状を一言でいえば、ボウリングのピンのようなコルセットのようなエレガントなスタイルが特徴。
どことなく晴れやかな気分にさせてくれる、特殊なボトルといえるでしょう。
シャンパーニュ(スパークリングワイン)ボトル
シャンパーニュやスパークリングワインに使用されているシャンパーニュ(スパークリング)ボトルの形状は、なで肩のブルゴーニュボトルのような形、プロセッコのような独特な形状、装飾的なものなどさまざまなものがあります。
ただひとつ共通するのが、厚く、重たいというところです。
スパークリングワイン、とくに瓶内二次発酵で製造されているものはガス圧が高いことから薄くもろいガラス瓶の場合は破裂による爆発が起こりかねません。
シャンパーニュ、スパークリングワインのボトルは重たいということを覚えておくとよいでしょう。
ワインボトルの色と品質保持
ワインボトルの種類についてお伝えしましたが、瓶内のワインに影響を与えるのは形状というよりは、“ボトルの色”と考えられています。
みなさんもワインにはさまざまな色のボトルが存在していることはご存知でしょう。
それらは、黒、茶色、緑色、透明など、とにかく多種多様です。(ゴールドやシルバーなども…)
前述したようにワインボトルはワインの品質維持を目的として製造されているので、色はかなり重要な要素とされています。
例えばワインの保存方法のひとつ、「日光に当てずに、できれば暗所で保存すべし。できれば、ワインセラーへ…」といった助言は大変有名です。
その理由は、ワインが光に当たることでリボフラビンと呼ばれる成分が光で励起されてしまい、イオウ系の異臭物質が生じてしまうと報告されているからです。
これは、日本酒やビールも同様。
できることであれば、ワインボトルは光を透過しにくい色を選ぶべきというのが品質保持のためには重要とされています。
なぜ透明ボトルを利用するのか
フランスをはじめ、世界各国の赤ワインの多くは茶色や緑色のボトルが使用されています。
当然、前述した影響を避けるためです。
一部、白ワインでも茶色や緑色のものが多く使用されていますが、やはり透明や薄緑といったものが多いような気がします。
じつは白ワインやロゼワインなどはワイン本来の美しさを消費者にPRするため、“液体の色”を見せることが大切だ…という考え方が一般的なのです。
近頃では赤ワインでも透明ボトルを利用する生産者が多いようですが、個人的には早飲みワインが増えているのも関連しているかもしれません。(予算の問題、またあまりその辺りは考えていないという可能性もある)
一部、白ワインに薄緑色のボトルが用いられていますが、フレッシュさをPRすることを目的に使用されているともいわれています。
とりあえずどんな色にせよ、ありがたい助言の通りにワインはできるだけ光に当たらないところに収納すべきでしょう。
ワインボトルを真剣に考えるのも面白い
ワインボトルについて知ると、意外にもワインショップ選びにも影響が出てきます。
例えば、蛍光灯をガンガン当てているのに透明ボトルの白ワインをディスプレイしている店と出会うと、その品質管理に疑問を抱くようになるでしょう。
考え過ぎはよくないのですが、ワインの扱いひとつでそのお店がワインを大切にしているか否か、そういった部分も考慮できるようになります。
ワインの保存方法を知る上でなぜそう言われているのか、という部分にも目を向けることもワインを美味しく楽しむひとつの方法なのではないでしょうか。
参照
The definitive guide to wine bottle shapes and sizes
日本ワイン.jp ★ ディレクター★
本サイトのディレクター兼動画コンテンツクリエーター
皆様に日本ワインをより楽しんでいただけるよう、現地取材やインタビュー動画など、様々な情報を独自の視点でお届けします。
日本ワインを世界へ発信するドキュメンタリー映画 “Vin Japonais(ヴァン・ジャポネ)” 監督・撮影・編集。2022年11月25日 公開。
日本のチーズの今を知るドキュメンタリー映画 “Fromage Japonais(フロマージュ・ジャポネ)” 監督・撮影・編集。2024年4月12日公開