先日、ワイン・飲食関係者を対象にした茨城県主催の「いばらきワインと県産食材を楽しむ〜牛久シャトー特別見学・ペアリングランチツアー〜」が開催されました。
茨城県といえば、農業産出額全国第3位を誇る日本有数の農業大国。
さらに、“海あり、山あり、歴史・文化あり”ということで、近年観光スポットとしても注目され始めています。
そんな茨城県ですが、じつは“優れたワイン産地”であることをご存じでしょうか。
今回、同ツアーではいばらきワインの歴史を語るうえで欠かすことができない「牛久シャトー」の見学、いばらきワインと県産食材のペアリングランチを体験。
茨城県の魅力の一端を担う、ワインと食材についてお伝えします。
いばらきワインの歴史と今

茨城県は新しいワイン産地とイメージする方も多いかもしれませんが、ブドウ栽培・ワインづくりにおいて古い歴史を持つ産地です。
そして、いばらきワインの歴史は「牛久シャトー」の歴史でもあります。
「神谷バー」の創業者・神谷傳兵衛が1881年に考案・発売した「蜂印香竄葡萄酒」の大ヒット。
「このワインを日本国内で醸造し、一大産業にしたい」という夢を抱いていた同氏は、1903年に「牛久醸造場」(現・牛久シャトー)を完成させます。
茨城県稲敷郡(現在の牛久市)の約119ヘクタールもの原野を開墾、ブドウ苗木6,000本を植えるなど、国内随一の規模でワイン用ブドウが栽培されました。
さらにブドウ園・醸造所・牛久駅をむすぶトロッコ列車を完備していたことで、工員らの移動や大量の輸送も実現。
当時、ブドウ栽培・ワイン醸造・貯蔵・瓶詰出荷まで一貫した製造工程にて運営されていたワイナリーは、日本初だと言われています。
しかし、戦後の農地解放などの影響で160haあった自社畑の多くは宅地となるなど、一時茨城県のワイン産業は下火となりました。
その後、質の高いブドウから良質なワインをつくりたい、茨城を日本の銘醸地へと成長させたいという有志や有識者の尽力により、県内にワイナリーが増加。
今や茨城県内のワイナリーは13軒となり、全国第6位の数に。
近い将来、第5位の岩手県を抜くのではないかと期待されています。
そして、2025年4月には県内のワイン産業振興、そして文化醸成を目的に「茨城ワイン協会」が設立されるなど、現在進行形で茨城県は日本ワインの銘醸地として歩みを進めているのです。
牛久シャトー見学ツアーで知る歴史の深さ

ツアー当日は、「牛久シャトー」の見学からスタート。
「牛久シャトー」は、旧事務室のあるシャトー本館と旧醗酵室、そして旧貯蔵庫の3棟が国の重要文化財に指定されており、重要文化財としてブドウ醸造を行う場所としては、ほかに存在していないとのことです。
「牛久シャトー」 曾田取締役の案内にて、通常非公開の本館の貴賓室などを巡ります。

フランスの城館を思わせる本館のノスタルジックな佇まい、随所にこだわりが詰め込まれている各部屋のしつらえ、多くの重鎮とワインパーティーを楽しんだという歴史の重さなど、ここでしか味わうことができない空気感は貴重な体験。

社交場として利用されていた大広間・比蜜閣には、芸術家であり美食家でもあった北大路魯山人の作品や大正2年に撮影されたという板垣退助との祝宴の写真、大正8年に神谷傳兵衛が上野・東京国立博物館に668点もの美術品を寄贈した際の受領証明書などが展示をなどから、神谷傳兵衛が日本文化発展における重要な役割を担う人物であったことを痛感します。

その後、大樽が所狭しと並べられている旧醗酵室へ。
26万本の生産能力を持つこれだけの樽は、当時の日本では最先端だったのではないかと考えられます。
旧醗酵室には、当時ワイン醸造に使用されていたさまざまな用具が展示されていましたが、瓶内二次発酵を行うための設備に展示されていた、日本人が本場のものを模倣して作成したピュピトルが印象的でした。
本場フランスの最先端技術を、当時より導入していた「牛久シャトー」のこだわりを感じます。

地下の旧貯蔵庫には木樽がずらりと並べられており、その独特な空気感が見るものを圧倒。
さらに、旧貯蔵庫の奥には牛久シャトーの醸造所があり、この場所でワインが今もつくられているという事実に感慨深さを覚えます。
見学ツアーの最後に曾田取締役は、「一時、下火となった茨城のワイン産業ですが、良質なワインをつくろうという気運が高まっており、ワインの聖地へと歩みを進めているところ。茨城県のテロワールを表現したワインを生み出すためにも試行錯誤しながら努力していきたい」とコメント。
「牛久シャトー」へ訪れることで茨城県のワイン産業のみならず、文化産業の発展に寄与し続けてきたことが理解できます。
茨城の美食を堪能 ペアリングランチ

牛久シャトー見学ツアーの後は、「Discover Ibarakis Terroir」と題された茨城の美食を堪能するペアリングランチへ。

会場は、「旧シャトーカミヤ醸造場施設貯蔵庫」を現代によみがえらせた「牛久シャトー レストラン」。
モダンクラシックな建物がノスタルジックな雰囲気を演出します。
ペアリングランチで提供された、“いばらきワイン”は7種類。
- 武龍ワイナリー/瑞⿓シャルドネ ペティアン 2022
- Bee’s Knees Vineyards & Winery/Nostalgia 2023
- 牛久シャトー/牛久葡萄酒メルロー 2024
- つくばワイナリー TWIN PEAKS BLANC 2024
- 武龍ワイナリー/瑞⿓ピノ・ノワール 2023
- つくばワイナリー/TSUKUBA ROUGE PREMIUM 2022
- 牛久シャトー/2025 青デラ 初しぼり デラウェア
今回、ワインの解説はメルシャン株式会社 エグゼクティブ・ワインメーカーである安蔵光弘氏。

同氏は茨城県水戸市の出身で、2023年9月に茨城県より「いばらき大使」を委嘱されています。
そして、料理は茨城県産食材をふんだんに使用したフレンチのフルコース。

料理を手がけるのはご自身も茨城県牛久の出身だという、服部栄養専門学校 西洋料理特別講師フードアドバイザー 大野文彦氏です。
コースは全7品で当日のペアリングワインは茨城県産ワインとの組み合わせを試行錯誤の上、安蔵氏によって選出されました。
人参のムース 豚のリエット×武龍ワイナリー/瑞⿓シャルドネ ペティアン 2022

一皿目の料理は、人参のムースと豚のリエット
人参のムースは有機人参と奥久慈しゃも、霞ヶ浦キャビアを使用したもので、コンソメのジュレ、フルール・ド・セルが乗せられています。
豚のリエットは、茨城県のブランド豚肉である常陸の輝きを4時間煮込んで作られた手の込んだ一皿です。

『瑞⿓シャルドネ ペティアン 2022』は、青りんごや柑橘の香り、ペティアンらしいやわらかな口当たり、豊富な酸がフレッシュかつエレガントな印象を与えます。
ペアリング
人参のムースに『瑞⿓シャルドネ ペティアン 2022』は、コンソメの風味が口中にふんわりと残る心地の良いペアリング。
やわらかな口当たりが調和します。
一方、豚のリエットも『瑞⿓シャルドネ ペティアン 2022』が、そのうまみをやさしくふくらませてくれる魅力的なペアリング。
一切の臭みのないリエットなので味わいもぶつからず、ペティアンの豊富な酸が後味をすっきりさせてくれる気持ちの良い組み合わせです。
常陸乃国まさばと常陸牛とともに×Bee’s Knees Vineyards & Winery/Nostalgia 2023

常陸乃国まさばは、茨城県初の海面養殖魚で、寄生虫アニサキスのリスクが極めて低い生で食べられるサバとして知られています。
牛肉は茨城県が誇るブランド牛 常陸牛 煌(きらめき)。
スパイスやハーブ、塩を使用して仕上げた常陸乃国まさばを常陸牛と合わせる斬新かつユニークな一皿で、夏みかんや文旦なども使用されています。

それに合わせるのは、Bee’s Knees Vineyards & Wineryの『Nostalgia 2023』。
さわやかなオレンジワインで、アプロコットやはちみつ香、ハーブのニュアンスを感じます。
ほのかな苦み、うまみを感じる酒質で、温度が上がると果実の甘み、塩味も増してくるこちらもユニークなワインです。
ペアリング
常陸乃国まさばと常陸牛が思わぬ相性の良さ。
旨みが深く、洗練された食材同士が呼応する、驚きの一皿です。
そこに『Nostalgia 2023』を合わせることで、料理の持つ複雑性と旨みがより強調されます。
ほのかな苦味が料理の柑橘と調和し、爽やかな酸が食材の脂をきれいに洗い流してくれる素晴らしいペアリングです。
赤でも白でも、ロゼでもない。
オレンジワインとの組み合わせが楽しい、ワイン好きにぜひ試してほしいペアリングでした。
常陸牛のしゃぶしゃぶコンソメ仕立て×牛久シャトー/牛久葡萄酒メルロー 2024

常陸牛は 常陸牛 煌。
食べる直前にコンソメスープをかけることで、絶妙な食感と旨みが引き出されるシンプルながら奥が深い一皿です。

それに合わせるワインが、『牛久葡萄酒メルロー 2024』。
牛久シャトーは古くからメルローと関わりを持っていたとのことで、今度同ワイナリーのメルローの進化が期待されています。
『牛久葡萄酒メルロー 2024』は、クラシカルな雰囲気の青さが感じられるアロマが特徴で、そこにスパイスやベリーの果実味が加わる複雑な印象。
口当たりは中程度、酸味とタンニンが豊富な印象ですが、全体的にエレガントな味わいを楽しめます。
ペアリング
溶けるようなやわらかさに仕上げられた、常陸牛のしゃぶしゃぶ。
常陸牛の脂のおいしいところだけを味わっているような、極上の一皿です。
繊細ながら、そこは牛肉らしい力強さを持ち合わせている常陸牛。
『牛久葡萄酒メルロー 2024』のタンニンとのバランスが良く、さらにコンソメのうまみとワインの果実味が調和するため、想像以上にバランスの良いペアリングが完成していました。
また、料理に使用されている野菜と『牛久葡萄酒メルロー 2024』の相性は抜群。
料理と合わせることで、ワインの魅力が引き立つ組み合わせです。
ひらめと常陸乃国いせ海老のムースソースアルベール×つくばワイナリー TWIN PEAKS BLANC 2024

ひらめ、さらに茨城県で獲れる最高級の海老として知られる常陸乃国いせ海老を贅沢に使用した一皿。
ひらめの中に常陸乃国いせ海老を使っていることで、魚介のうまみが存分に味わえます。
魚の出汁と仔牛、ワインを丸々1本使ったムースソースアルベールも絶品です。

この一皿に合わせるワインが、つくばワイナリーの『TWIN PEAKS BLANC 2024』。
「日本ワインコンクール」の「欧州系品種 白」部門にて銀賞を受賞していますが、なんと茨城県産ぶどう100%を使ったワインでは初という快挙を成し遂げたワインです。
柑橘や青りんご、花など洗練さと華やかさを兼ね備えたアロマ。
口にふくんだ瞬間、旨みが口中に広がる高品質な白ワインです。
シャルドネを中心に、酸味のバランスを取るためにプティマンサンを使用。
アルバリーニョも加えた、アロマティックでシャープ、うまみの強い1本に仕上がっています。
ペアリング
ひらめ、伊勢海老の旨みと甘みと『TWIN PEAKS BLANC 2024』の果実味が調和。
まろやかなソースとワインの口当たりもバランスが良く、料理とワインがより複雑に芳醇な印象へと昇華するペアリングです。
プティマンサン由来のシャープな酸も手伝い、口中がもったりせずにすっきりとした後味に。
茨城県産食材が織りなす、芸術的な組み合わせです。
常陸国天然まがものロースト 瞬間薫製まがものコンフィとビーツのピューレ まがものジュ×武龍ワイナリー/瑞⿓ピノ・ノワール 2023

肉の旨みをダイレクトに味わうことができる、常陸国天然まがも。
脂っぽさのない、野性味あふれるその味わいに魅せられる美食家が多いと言います。
そんな常陸国天然まがもを、茨城の米の稲わらで瞬間薫製した贅沢な一皿です。

『瑞⿓ピノ・ノワール 2023』は、茨城県でもめずらしいピノ・ノワールを使用した赤ワイン。
茨城では難しいと言われるピノ・ノワールを丹精込めて栽培し続けている武龍ワイナリーこだわりの1本で、1000ℓの杉おけにて仕込まれています。
赤系果実、スパイス、スモーキーなアロマが感じられ、口当たりは繊細でシャープな酸とミネラル、シルキーなタンニンが特徴。
茨城のピノが、今後どのように進化していくのか、そんな楽しみを与えてくれる1杯です。
ペアリング
『瑞⿓ピノ・ノワール 2023』が、料理を引き立てるシンプルながら奥深いペアリング。
スモーキーなニュアンスと常陸国天然まがものジュと赤系果実の風味、ピノとまがもの野性味も調和します。
アフターにふんわりと香る、常陸国天然まがもの心地よい香りが魅力的なペアリングです。
新利根チーズ工房「月利根 〜神月〜」ひたちおおたチーズ工房「さとやま」×つくばワイナリー/TSUKUBA ROUGE PREMIUM 2022

茨城県産のチーズといばらきワインのペアリング。
新利根チーズ工房の「月利根 〜神月〜」はウォッシュタイプのチーズで、茨城県産の日本酒でウォッシュされ長期熟成させた貴重なチーズ。
一方、ひたちおおたチーズ工房の「さとやま」は3から6ヶ月熟成させたセミハードタイプのチーズで、マイルドなうまみが楽しめます。

それに合わせるワインは、つくばワイナリーの『TSUKUBA ROUGE PREMIUM 2022』です。
メルローに山ぶどうをブレンドした赤ワインで、目の覚めるような濃さが特徴。
メルローの青さや果実味に山ぶどうのスパイシーさが加わった複雑なアロマ、口当たりはまろやかでシャープな酸と中程度のタンニンが調和し合う、質の高い赤ワインです。
クセがなく、山ぶどうの概念を変えてくれる1本に仕上げられています。
ペアリング
『TSUKUBA ROUGE PREMIUM 2022』の繊細ながら力強い味わいは、「月利根 〜神月〜」の強い塩味と濃厚な味わいに負けておらず、バランスの良いペアリングを楽しめます。
「さとやま」の繊細な風味、まろやかさを『TSUKUBA ROUGE PREMIUM 2022』が包み込むようなペアリング。
後味に、『TSUKUBA ROUGE PREMIUM 2022』の果実味が強く感じられるところもポイントです。
いばらキッスと赤いフルーツのスープ仕立て ヴァニラアイス添え いばらキッスのロマノフ×武龍ワイナリー/2025 青デラ 初しぼり デラウェア

いばらキッスは、2012年12月に品種登録された茨城県が誇るオリジナル品種のいちご。

今回、スープ仕立てのスイーツと、いばらキッスのロマノフが提供されました。
「とちおとめ」、「レッドパール」、「章姫」を掛け合わせた品種で、糖度と酸味のバランスの良い濃い味わいが特徴です。

そんな、いばらキッスを使用したスイーツに合わせるワインは、牛久シャトーの『2025 青デラ 初しぼり デラウェア』。
日本遺産共同認定の街“山梨県甲州市産”ブドウ品種「デラウェア」を使用した1本で、デラウェアらしい華やかさと甘さを感じさせるアロマ、甘酸っぱさを感じる凝縮した味わい、シャープな酸が楽しめるさわやかな仕上がりです。
ちなみにアルコール度数は8%と、食後にも手軽に取り入れられる飲み心地の良さ。
食前酒としても活躍してくれそうです。
ペアリング
いばらキッスの甘酸っぱさとデラウェアらしい甘みと酸味が、絶妙に調和するペアリング。
スイーツの甘さと『2025 青デラ 初しぼり デラウェア』の甘さが近しく、まるでスイーツにワインのソースをたっぷりと加えたような心が満たされる組み合わせです。
スイーツに合わせることはもちろんですが、いばらキッス単体との相性も楽しめます。
ちなみに、最後には笠間の栗を使用したプティモンブランも提供されており、そちらとの相性も良好でした。
茨城の魅力を「食」で知る

茨城県 営業戦略部 東京渉外局 PR・誘致チーム チームリーダーの片岡幸子氏は、「茨城県は都市部からのアクセスが良い場所。農業が盛んな農業県として有名だが、茨城県では素晴らしい品質のワインがつくられており、ワイナリーも増加中。茨城県が誇る食材やワインをぜひ知ってほしい」などとコメント。
茨城県は豊富な海の幸・山の幸を満喫できたり、山あり海あり湖ありの恵まれた自然を生かしたアクティビティを楽しんだり、独特の文化を体感できる観光地へ訪れたりできる魅力的な県。
“県産食材”と“いばらきワイン”で体感してもらい、より多くの人に茨城県の魅力を発信していきたいとのことです。

また、ツアーには牛久市長の沼田和利氏もかけつけ、「いばらきワインと茨城県産食材を広く知ってもらう、価値のあるイベントだ」とコメント。
ランチペアリングの最後には安蔵氏は、「いばらきワインは、これから。県をあげてワインづくりに力を入れ出し始めたところで、これからクオリティが上がっていくはず。ワイン産地として茨城県はまだまだ知名度が低いものの、テロワールの多様さとその表現への挑戦など“いばらきワイン”の歩みは始まったばかり。長い目で見守り、そして注目し続けてほしい」と、茨城県産のワインと食材の成長と広まりを期待するコメントを残していました。
茨城県は東京から、2時間以内でアクセスできる好立地。
ぜひ、この機会に茨城県の魅力を「食」で知る大人旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
