世界中でブームが起きているワインカテゴリ、ロゼワイン。
近年、日本ワインの中にも高品質ロゼワインを見かけることが多くなりました。
フルーティーかつ繊細で飲みやすいロゼワインは、今後日本でもブームになるかもしれません。
今回、ロゼワインの基本ということで、「ロゼワインの製造方法」についておさらいしていきます。
知っておいてい損はない情報ですので、ぜひ知識を入れておきましょう。
ロゼワインは多様である
ロゼワインの製法を学ぶ上で覚えておいてほしいことが、「ロゼワインは多様である」ということです。
ワインに詳しい方やワインのトレンドを追いかけている方であればロゼワインは「辛口」が多いことを知っていると思いますが、一部“甘口で軟弱なワイン”と誤解している方は少なくありません。
さらに辛口であっても、「淡いピンク色にイチゴのような甘酸っぱい味」と画一的な見方でロゼワインを語る方もいるようです。
ロゼワインの外観ひとつとっても、「サーモンピンク、銅色、玉ねぎの皮、大辛口の鮭」などいろいろありますし、風味もイチゴがあればスミレ、濃いベリー、タンニンの過多などのストラクチャーの違いなど多種多様。
要するにロゼワインの製造方法の違いや品種の違い、熟成度合い(近年、ロゼワインでも熟成される)によって、いろいろな味わいを楽しむことができるのです。
では早速、ロゼワインの製造方法について学んでいきましょう。
ロゼワインの製造方法
ロゼワインの製造方法は大きくわけて4つあるといわれています。
それぞれを簡単に解説していきましょう。
セニエ法
高品質なロゼワインに用いられていることの多い製造方法が、セニエ法と呼ばれるものです。
セニエ法とは、黒ブドウを発酵させている途中、醸造槽の上の部分を「血抜き(フランス語でセニエ)」し、その後白ワインと同様にワインを醸す方法。
色合いの濃淡、味わいの強弱など醸造家のテクニックによるところが大きい製法である上に、ワイン液の栄養素が減少していることからスタック(アルコール発酵の停止)のリスクなどが高まる難易度が高い製法といわれています。
トップキュヴェレベルでありながら、赤ワインに使うには要素が物足りない黒ブドウをセニエ法でロゼワインにする生産者もいるなど、掘り出しものも多くあるので注目です。
ちなみにロゼワインだけでなく高品質赤ワインの製造方法に応用されることもあるようです。
直接圧搾法
直接圧搾法とは、黒ブドウを白ブドウのように製造するロゼワインの製法です。
赤ワインは一般的に果皮と種子、果汁を醸した醪でアルコール発酵されますが、黒ブドウのように破砕、圧搾を先にして醸すことで淡いロゼ色のワインができあがります。(破砕・圧搾の際に少しだけ果皮の色合いが果汁に移る)
破砕時のフリーランス果汁を分離してロゼワインにする場合もあるようです。
セニエ法と比較すると果汁が果皮と種子に醸されている時間が短いことから、多少ライトで爽やかな味わいになると考えられます。
混醸法
混醸法とは、黒ブドウと白ブドウが混在している状況で果醪を発酵させる製法です。
赤ワインと白ワインを交ぜているようなものだ、と思われていますが、黒ブドウと白ブドウが一緒に発酵されることで独特の化学反応が起こることが考えられ、“それ”とは同じ味わいになることはないでしょう。
セニエ法よりも知名度が低い製法ですが、黒ブドウと白ブドウの比率を変えるなど、意外に面白みのある製法かもしれません。
ドイツのロートリングがとくに有名です。
ブレンド法
ブレンド法とは、その名の通り赤ワインと白ワインをブレンドしてロゼワインを造る製法です。
ヨーロッパにおいては、ブレンド法でロゼワインを造ることは禁止されていますが、一部のスパークリングワイン(シャンパーニュなど)では許可されています。
安易な方法と思われるかもしれませんが、シャンパーニュにおいては希少価値が高い製品として扱われており、そのブレンド比率などで味わいに大きな違いが生まるようです。
一部、安価なスパークリングワインはブレンド法で製造されていることからイメージが悪い部分もあるようですが、最高品質のロゼシャンパーニュを体験することでその奥深さがご理解いただけるでしょう。
ロゼワインは日本ワインが面白い?
前述してきたように、ロゼワインひとつとっても製造方法がいくつか存在する上に、使用するブドウ品種や比率によっても味わいにバラつきが生まれます。
良く言えば、「それぞに個性がある」と言い換えることもできるでしょう。
とはいえ、世界的にロゼワインがブームになっていることから、「味気がなくオフドライで硬い飴のようなものが店の棚を埋め尽くしてしまっている。」とマスター・オブ・ワインのイザベル・レジュロン氏に著書で語っています。
レモンサワーが流行れば各メーカーがレモンサワーに手を出し、居酒屋でも似たようなレモンサワーが大暴れしている日本の現状もそれに近いかもしれません。(海外から見たら面白いと捉えられそうですが)
もちろん、世界には数多くのユニークなロゼワインが存在しているものの、海外の生産者を追うのには時間がかかります。
そこでおすすめしたいのが、日本ワインです。
パワフルな赤ワインがなかなか生まれにくい日本ワインですが(中にはあるが)、黒ブドウの品質が悪いわけではないので、逆に高品質なロゼワインが多く見受けられるといった特徴があります。
そのためか、日本ワインに目覚めたきっかけが日本産ロゼという方も案外少なくないようです。
個人的には大手メーカーから中堅、小規模、どこのロゼワインも面白いですが、日本ワインのロゼならナチュール系がとくに面白いと感じています。
ブドウ品種もビニフェラ種とラブルスカ種が自由に使えますし、国内産なのでフレッシュな状態で飲むことができるところもポイントでしょう。
画一的なロゼワインではなく、個性溢れるロゼワインを楽しむ。
日本ワインなら、それが手軽にできるのです。
ロゼワインの味を考えて購入しよう
最後に、“ロゼワインはどんな食事にも合う”というメッセージについてひとつお伝えしておきます。
たしかに、ロゼワインは赤ワインと白ワインの要素を持っていたり、独特の風味から比較的合う料理が多い傾向にあるでしょう。
しかし、中には出汁に合わない、脂っぽい肉に合わない、中華の体には合わない、魚と絶望的というものもあります。
赤ワインや白ワインにいろいろな特徴があるように、ロゼワインにもいろいろな特徴があるわけで、“どんなロゼワインを選ぶか”によって食事との相性も大きく変化するのです。
“今日はロゼだな”といって無鉄砲にピンク色のワインを選ぶのではなく、どんな味わいなのか考えながら購入すれば失敗は少ないはず。
今後は赤・白ではなく、ロゼの多様性も探ってみてはいかがでしょうか。
参考
『自然派ワイン入門』イザベル・レジュロン著他