日本発祥の総菜パンのひとつ、カレーパン。

カレーをパン生地で包み込むという、ぶっ飛んだアイデアから誕生したユニークな商品です。

カレーパンに合う飲み物といえば牛乳かもしれませんが、とあるワインと相性がよいことを発見しました。

そのワインとは日本でもお馴染みのあのワイン…。

ここでは、カレーパンに合うワインについて解説していきます。

カレーパンについて

カレーパンとワインとの相性をたしかめる前に、まずカレーパンについて学んでいきましょう。

カレーパンはロシアなどで食べられている「ピロシキ」にかなり似ているようですが、発祥は日本。

昭和2年に深川の「名花堂」というお店がパン生地にカレーを包み、とんかつを模して揚げたものがカレーパンの原型だといわれています。

カレーパンといえば「揚げ&丸い」スタイルが一般的ですが、近年焼いたものや四角いもの、中身のカレーに強烈にこだわっているものなど、そのあり方は多種多様。

朝ご飯として、小腹が空いた時の腹ごしらえとして、ちょっとリッチなおやつとしてなど…今もなおさまざまなシチュエーションで活躍中している国民食でもあるのです。

カレーパンの特徴を知る

カレーパンの歴史が少しだけ理解できたところで、ここからは本題であるカレーパンとワインの合わせ方について言及していきましょう。

ちなみに今回は進化系カレーパンではなく、ごく一般的なカレーパンを利用してワインとのペアリングを考えます。

まず、カレーパンの特徴を単純にまとめると…

  • 揚げたパン生地
  • 生地がややサクサク
  • 中身がカレー

こんな感じになりそうです。

これらキーポイントから探っていくことで選ぶべきワインが見つかりそうです。

では早速、カレーパンはどんなワインと相性がよいのか一緒に考えていきましょう。

カレーパン×ワインを考える

カレーパンは、パン生地と中身のカレーといった二層構造からなる総菜パンです。

そのため、「パン生地」「中身のカレー」といった二つの側面からワインとの相性について考えていく必要があります。

まずはパン生地とワイン、次に中身のカレーとワインの相性について考えていきましょう。

カレーパンのパン生地とワイン

カレーパンのパン生地といえば、前述したようにサクサク生地&揚げているといった部分が特徴。

つまり天ぷらやフライの衣を軽くイメージするといいかもしれません。

まずサクサクといったテクスチャーを考慮すると、スパークリングワインが合いそうです。

また油っぽい…ということから、オイリーなニュアンスを持つリースリングとの相性も面白いかもしれません。

さらにパン特有の風味もあるため、シュール・リーを経た甲州、樽を効かせたシャルドネなどもいいでしょう。

では、赤ワインはどうでしょうか。

揚げたことで発生する香味、ほどよいスパイシーさを考えると、シラーやGSM(グルナッシュ・シラー・ムールヴェードル)、テンプラニーリョは間違いなさそうです。

パン生地の風味を包み込める、果実味の強い赤ワインでもいいでしょう。

こう考えてみるとカレーパンは比較的どんなワインとも合わせやすそうですが、カレーパンをカレーパンたらしめるポイントは中身がカレーであること。

パン生地との相性がよくても中身のカレーとも相性のよいワインでないと、結果的にミスマッチという結果に陥ってしまうのです。

カレーパンのカレーとワイン

そもそも、“カレーは辛くてスパイシーなのでワインと合いません…”と思っている方も多いようですが、近年進化系ペアリングという意味でも、“カレーにワインは合う”という意見が一般的なようです。

例えば、まろやかなペアリングを目指すのであれば、リースリングやゲヴェルツトラミネール、シルヴァーナーなど果実味と甘味を感じさせる白ワイン。

スパイシーでより、辛さを高めるのであれば樽熟成させたニューワールドのシャルドネ、前述したようなシラーやGSMなどの赤ワインと合わせるのがよいとされています。

しかし、カレーパンの中身のカレーとワインの相性を考える場合、一般的な「カレー×ワイン」とは切り離して考えるべきかもしれません。

まず、カレーパンに使用されるカレーは冷めた状態で美味しく食べられることが重要であるため、水分を飛ばして固く、濃く仕上げられています。

そのため選んだワインがパン生地との相性が良い上に一般的なカレーとの相性が良かったとしても、強烈な個性を持つカレーパンのカレーとぶつかってしまう可能性があるのです。

では、カレーパンのカレーであればどのようなワインがいいのか。

その選択肢のひとつとして提案したいのが、アメリカ系のブドウを原料とした赤ワインと合わせる方法です。

カレーパンと相性がイイ、アメリカ系品種

アメリカ系品種から造られる赤ワインは、グレープジュース風味や綿飴、甘味を感じるところが特徴です。

さらに酸味がやや強くタンニンは控え目ということで、“香りが強く、甘酸っぱくて飲みやすい”といった印象があります。

カレーパンのパン生地は油っぽく(あぶらの甘味)スパイシー、サクサクといった特徴があるため、ある意味でお菓子のようなニュアンス。

そして中身のカレーはサラサラしていない濃い味わいの中辛カレーといった印象であるため、“香りが強く、甘酸っぱくて飲みやすい”飲料はカレーパンの味わいとマッチングしやすい傾向にあるのです。

ちなみに、熟成を経たドイツのカビネットレベル(甘口系のワイン)やハチミツを思わせる貴腐ワインなどもよいのですが、手に入りにくい上に高額、そして近所のパン屋で購入したカレーパンでそこまで気合いを入れる方は少ないでしょう。

アメリカ系品種は日本ワインでも数多く存在していますし、手に入りやすい上にとってもカジュアル。

カレーパンのあり方を考えた上でも、このぐらいカジュアルなフードペアリングでフィニッシュさせた方がチャレンジしやすいのではないでしょうか。

お馴染みアルプスワインのコンコード×カレーパン

論より証拠ということで、実際にアメリカ系のブドウであるコンコードを100%使用したアルプスワイン〈信州酸化防止剤無添加ワイン信州コンコード〉をカレーパンに合わせてみました。

〈信州酸化防止剤無添加ワイン信州コンコード〉は、グレープジュースを思わせるアロマにやわらかな口当たり。酸はほど良くあるもののタンニンは穏やかで、後味は甘ったる過ぎない引き締まった印象がある赤ワイン。

カリッとした食感とパン生地のもっちり感、香ばしい風味と〈信州酸化防止剤無添加ワイン信州コンコード〉は違和感なくマッチングします。

中身のカレーも中辛タイプながら、〈信州酸化防止剤無添加ワイン信州コンコード〉が甘味を持っているためワインがそれらを包み込み違和感を感じません。

さらにアルコール感と酸味、ちょっとしたタンニンが後味をさっぱりさせてくれるので、食後に口の中がもったりした感じにならないところもポイントです。

悪い意味ではありませんが、かなりわかりやすくシンプルな味わいのワインだからこそ、気兼ねなくカレーパンのような個性の強い総菜パンとペアリングできたのかもしれません。

総菜パンもワインのつまみに!

カレーパンはあまりにも身近過ぎるため、ワインとのペアリングを想像していなかった方もいるかもしれません。

しかし、冷静に考えると意外にワインにも合わせやすい、手軽なおつまみであることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

ちなみに、やきそばパンやツナマヨパン、たまごとマヨネーズのパン、ハムエッグパンなど、ほか総菜パンもワインと合わせやすいかもしれません。

これだけ面白い総菜パンが揃っているのは、日本ならでは。

おやつや朝食としてだけでなく、ワインのつまみとして総菜パンをガンガン使ってみてはいかがでしょうか。

 

参考

Matching wine with Curry – Le Cordon Bleu – Decanter

総菜パンの科学

パンの図鑑 カレーパン