日本化された西洋料理のひとつ、「コロッケ」。
スーパーやコンビニ、精肉店、飲食店、専門店など…とにかく、日本人にとって“エンカウント率※”の高い料理です。
※RPGゲームにおける、敵の出現率のこと。(コロッケは庶民の味方です)
コロッケはご飯のお供と決めてかかっている方も多いと思いますが、じつはワインとの相性も◎。
ここでは、コロッケとワインの相性について深堀りしていきましょう。
コロッケは日本の白ワインと相性抜群
結論として、コロッケをワインに合わせるのであれば、“日本の白ワイン”がおすすめです。
さらに、ある条件が揃っている日本の白ワインの場合、より親和性が高まります。
“コロッケ?赤ワインっぽいイメージだけど…”と思う方もいるかもしれません。
なぜコロッケと白ワインの相性をおすすめするのか、その理由を解説していきます。
コロッケとワインの共通点
冒頭コロッケは、“日本化された西洋料理のひとつ”と紹介しました。
ジャガイモ自体は古くオランダ人によりジャカルタから長崎に伝えられていますが、コロッケが誕生したのは明治時代。
1872年(明治5年)に肉食が解禁されたことで本格的に日本に西洋料理が導入されていきますが、多種多様な洋食は庶民の生活に合わせて和食風に解釈されていきます。
中でもコロッケはクリームソースが主体のフランス料理「クロケット」を日本人の好みに合わせ、じゃがいものクロケット(つまり、コロッケ)に作り変えられたものとして誕生したと考えられているようです。(※諸説あり)
ワインも古く日本に伝来した後、本格的に製造がスタートしたのは明治初期。
紆余曲折あったものの、現在は“日本で造られた、日本らしい味わいのワイン”と認識されるようになりました。
ある意味、コロッケも日本ワインも“日本で生まれ、日本で独自の進化を遂げた食品”。
相当強引ですが、こういった共通点を想像するだけでペアリングした時の味わいも変わってくるのではないでしょうか。
コロッケの味
ワインペアリングを考える時、合わせる料理や食材の香味や風味について考えることは重要です。
まず、コロッケの香味・風味を考える上で考えるべきは衣でしょう。
香ばしく、なんともいえな郷愁と胃袋を刺激する良い香りがあります。(酸化すると油っぽくなるので揚げたてを想定)
この時の香りは、「ディープ・フライ・フレーバー」と呼ばれており、コロッケをはじめフライドポテト、天ぷらなど揚げ物に共通するといわれているようです。
また、油が食品に含まれると味わいにまるみが生じ、その食品が一段階美味しく感じるといわれています。
要するに、コロッケなどの揚げ物はその食材をより美味しく感じさせる効果があると考えられるわけです。
さて、つぎは素材であるジャガイモについてです。
コロッケの場合、ジャガイモは衣の内側にあるわけですから衣を通した熱伝導で加熱された、と考えられます。
要するに、蒸し焼き状態になっている…といえるかもしれません。
ジャガイモ特有の香気成分として知られているメチオナールですが、衣に包んで揚げるといった調理をすることで、その特徴がより強くなると考えられます。
さらいにジャガイモ自体がホクホクした食感となり、ほんのり甘みも感じるように…。
衣の香りと油がもたらす美味しいという知覚、そこにジャガイモ特有の香りとホクホク感が加わることこそが、コロッケらしい香味・風味を生み出す秘密といえるでしょう。
ワインの選び方
続いてはコロッケに合わせるワインを選びです。
まず、根本的にコロッケをそのまま食べるかソースをかけるか…で赤・白のワイン選びが変わってきそうですが、個人的には相当特殊な味わいのソースを利用しない限りは、ソース(ここでは中濃ソース)のアリ・ナシでワインの色を変化させる必要はないと考えます。
少し話しがズレてしまいますが、ソースはさまざまなハーブや野菜の香味、まろやかな風味が特徴です。
色合い的に赤ワインが合いそうですが、果実味やテクスチャーからリースリングやゲヴェルツトラミネールとの相性が良い傾向にあります。(赤ワインなら、ハーバルなメルローも◎)
こういった傾向を考えた上でも、先にお伝えしているようにコロッケには白ワインを合わせるのが良さそうです。
日本ワインのデラウェアがオススメ
とはいえ、白ワインであれば何でもいいわけでもありません。
コロッケというと、“揚げ物・豪快・日常”といった感じで大味のイメージですが、コロッケを真剣に味わってみると思っているより繊細な味わいです。
そもそもジャガイモ自体に強烈な味の個性はありませんし、コロッケも「食感×ディープ・フライ・フレーバー×じゃがいもの繊細な風味×ホクホク感」といった意外にシンプルな味わい。
海外産のパワー系の白ワインだとコロッケを味わいを覆い尽くしてしまい、味のバランスが取れない可能性がああります。
一方、日本の白ワインであれば、リースリング、ケルナー、ゲヴェルツトラミネールなどの海外品種でもボディが軽やかですし、果実味と甘味の部分でバランスが取れるでしょう。
とはいえ、これら品種の日本ワインは数が少ない上に割高になりがち。
そこでおすすめしたいのが、デラウェアです。
コロッケ自体もカジュアルですし、そこに1本3,000円を超えるようなワインを合わせるのは少し格違い。
デラウェアにも高額なものはありますが、近所のスーパーで買えるようなカジュアルなものの方がコロッケと美味しくペアリングできるでしょう。
コロッケより甘味がやや強く、酸も強過ぎず後味もやわらか。
ソースとの相性も良いですし、日常の食卓に取り入れやすい日本人ならではのペアリングとなるはずです。
シャトー酒折〈デラウェア 2019〉×コロッケ
では、実際にデラウェアとコロッケを合わせてみます。
今回チョイスしたのは、シャトー酒折の〈デラウェア 2019〉。
青リンゴやトロピカルフルーツ、柑橘など爽やかな香りと甘酸っぱさを感じさせるピュアな白ワイン。
ほど良い酸味とシャープな余韻など、しっかりと冷やして飲みたいセミスイートタイプの1本です。
コロッケはシンプルに男爵いもを利用したもので、ソースをかけたものとそうでないものを用意しました。
香ばしい香りとサクサク食感の衣から、甘さを感じさせるジャガイモの風味。
そこに甘酸っぱい〈デラウェア 2019〉の風味が乗り、後味で口の中をさっぱりさせてくれる絶妙なペアリングです。
とくにソースは〈デラウェア 2019〉の相性が良く、たっぷりとソースをかけるとさらに美味しくコロッケを楽しむことができました。
ただし、コロッケは熱々、〈デラウェア 2019〉はしっかりと冷えた状態で楽しみましょう。
コロッケも立派なワインのおつまみ
コロッケというと100円…いや、50円を切る価格で販売されていることもある庶民的な料理です。
ワインというよりビールやチューハイのイメージがあるかもしれませんが、じつは炭酸や酒の個性が強過ぎると後味にコロッケのホクホク感が残り過ぎたりして美味しくありません。(※個人の感想です)
ワインのようにほどよく果実味と酸味があり、余韻がしっかりと長いお酒の方がコロッケの香味・風味とはよく合うと感じています。
カジュアルなコロッケも考え方次第では、立派なワインのおつまみ。
ぜひ、さくっと試してみてはいかがでしょうか。
参考
大正末期から昭和初期の食生活におけるジャガイモの位置づけ
「天ぷら・うなぎ」 旭屋出版発行
料理の科学 斎藤勝裕

NORIZO
★ 映画監督★日本ワイン.jp ディレクター★
日本ワインを世界へ発信するドキュメンタリー映画 “Vin Japonais(ヴァン・ジャポネ)“
監督・撮影・編集。2022年11月25日 公開。
日本のチーズの今を知るドキュメンタリー映画 “Fromage Japonais(フロマージュ・ジャポネ)“
監督・撮影・編集。2024年4月12日公開
日本ワインだけでなく、その周辺情報について現地取材やインタビュー動画を通じて、様々な角度から独自の視点でみなさまにお届けします!