日本人の食生活に欠かせない食材のひとつが、「あさり」です。

あさりは1年を通して購入できる二枚貝ですが、じつは秋頃に旬を迎えることをご存知でしょうか。

手軽に購入できるあさりだからこそ、ワインとのペアリングを楽しみたいところです。

本記事では、あさりとワインのペアリングについて考えます。

簡単に真似できる組み合わせを紹介するので、ぜひ試してみてください。

あさりについて知る

あさりについて下記の内容にまとめました。

  • あさりとは?
  • あさりの旬は年2回ある
  • 美味しいあさりの選び方

それぞれ解説します。

あさりとは?

あさりは、アサリ属に属している二枚貝の総称です。

具体的には、異歯亜綱マルスダレガイ上科マルスダレガイ科に属する二枚貝で、主に潮間帯中部から水深10m程度の砂礫泥底に生息しています。

貝殻の模様は一見似たように見えますが多様であり、その柄はパターン化されているものの、生息する地域などによって違いがあるようです。(遺伝することもわかっていそうです)

産地は朝鮮半島からヨーロッパ、北アメリカ、東南アジアと広く分布していますが、北海道から九州まで、さらに塩分濃度が低い干潟かつ、水温がやや高い太平洋側が主産地になります。

さて、あさりの歴史は古く、日本各地で見つかっている縄文時代のゴミ捨て場「貝塚」に貝殻が出土していることでも知られています。

日本人にとってなくはならない貝類として愛されてきたあさりだけに、江戸時代にはあさりを専門とした行商が街中を歩き回っていたほどです。

近年あさりの消費量は全国平均で減少しているそうですが、あさりは私たちの祖先も大切に食べてきた食材である上に栄養豊富で美味しい貝類です。

鮮魚売場などであさりを見かけたら、積極的に手にとってみてはいかがでしょうか。

あさりの旬は年2回ある

あさりには旬が1年で2回あります。

その時期というのが、「春」と「秋」です。

あさりは鮮魚売場で1年中見かけるため、旬について考えたことのない方も多いでしょう。

たしかにあさりは1年中楽しめるだけでなく、加工品も多いため旬のイメージがつかみにくいかもしれません。

あさりが、春」と「秋」に旬を迎える理由が下記の2つです。

  • 産卵期を迎えるため
  • 水温が適温になるため

あさりの旬は具体的に産卵時期を迎える春4月から5月、秋9月から10月と考えられています。

産卵を前に栄養をしっかりとため込むだけでなく、卵を作る生殖腺が肥大化するため、通常より太った(身入りが良い)状態で売り場に並べられるのです。

また、春や秋は水温が適温になるためエサをたっぷりと食べるため、より太りやすく旨みも凝縮されます。

とくに春が美味しい時期と言われているものの、秋あさりも負けてはいません。

あさりを食べるなら、ぜひ旬の時期を狙ってみるのもおすすめです。

美味しいあさりの選び方

美味しいあさりを選ぶ際、模様と状態をチェックしましょう。

まず、柄の色つまり縞目がはっきりとしているものが良いと言われています。

また、扁平のものがより美味しいそうです。

殻はしっかりと硬く閉じたもので、砂抜きなどで塩水に入れると水管から水を勢いよく噴射しているものは鮮度が高い証拠になります。

ちなみにサイズや色、形もあさりが評価されるポイントですが、味自体に大きな違いはないようです。

ただし、大きさによって適した調理方法があるほか、大サイズであればより身入りが良いため満足度はアップするでしょう。

あさりの栄養や味わい

あさりは栄養豊富な貝です。

中でもミネラルが豊富であり、鉄分、カリウム、カルシウムをはじめ、日本人が不足がちな亜鉛も多く含まれています。(ちなみに加熱調理する場合、お酢を加えることで殻から溶け出すカルシウムも効率的に摂取できるとのこと)

さらにアミノ酸の一種だえるアルギニン、タウリンなど滋養強壮の源となる栄養素も含有するなど、毎日でも摂取したい食材です。

さて、あさりとワインを合わせる上でポイントになるのが旨味成分でしょう。

あさりは生食は避けるべきと言われているため、ほぼ加熱された状態で食すことになります。

とある研究によるとあさりを煮た際に出る臭気成分はイソ酪酸やノルマル酪酸、トリメチル アミン、硫化水素で、それと比較してシジミはやや臭気が強めの成分が多く確認できたといったものがありました。

そのため、しじみは味噌汁や薬味が多く使用される傾向、あさりはシンプルに清汁などにされることが多いと示唆されています。

あさりには幅広いレシピが存在しますが、それも個性が強すぎない繊細な香りが理由かもしれません。

貝類独特の塩味や苦味があるためワインと合わせる上ではそのあたりも注意しつつ、中心としてはうまみ成分で合わせていく方向性かもしれません。

あさりのうまみといえば、「コハク酸」で、ワインも酵母の代謝活動の副産物として必ずコハク酸が生成されています。

ただし日本酒のように豊富に含まれているわけではなく、品種や産地によってその含有量に違いがあるようです。

また、あさりにはタウリン、グリシン、アラニン、グルタミン酸などアミノ酸が豊富であり、うまみの宝庫と言えます。

これらあさりの特徴を押さえた上で、ワインを選んでいきましょう。

あさりにワインを合わせよう

あさりにワインを合わせる場合、どんなワインを選ぶと良さそうでしょうか。

下記にて解説していきましょう。

基本的には白ワイン?

あさりにワインを合わせる際、まず多くの方が白ワインをイメージするのではないでしょうか。

ボンゴレ、ワイン蒸しなど、ガーリックの香りとパセリの爽やかな香り、塩気の効いたスープにバターの風味はフレッシュな白ワインと合わせたくなる要素が満載です。

ただし、ポイントはどの品種にするかでしょう。

一般的に考えるのが、あさり独特の魚介の風味と塩味から柑橘の香りがしっかりと感じられるフレッシュなシャルドネです。

また、海近くで栽培された塩味をほのかに感じられるものであれば、抜群の相性を示すと考えることができます。

またミネラルのニュアンスという意味では、シャブリ系のシャルドネも良いかもしれません。

ただし、レモンを絞ったりフルーティーな風味、ふくよかながら酸がしっかりとした白ワインということで、イタリアではヴェルメンティーノがおすすめされているようです。

あさりを調理した際のソースの強弱にもよりますが、さっぱりと食べられるものであればフレッシュかつアロマティック、塩味を感じるものが良いでしょう。

また上記の要素にうまみ成分を加えると考えた際、シャンパーニュをはじめとした長期熟成タイプの瓶内二次発酵製法でつくられたスパークリングワインはとくにおすすめです。

白品種のみを使用したブラン・ド・ブランのフレッシュで若々しいニュアンスとシャープな酸、それでいて熟成がもたらす複雑性を感じられるようなものは、あさり料理と素晴らしい相性を示すことでしょう。

日本ワインで言えば、質の良いデラウェアやシュール・リータイプの甲州もおすすめです。

マスカット・ベーリーAが合う

あさりと赤ワインはペアリングさせることができるでしょうか。

赤ワインのスモーキーなニュアンスとタンニン、充実した果実味とあさりは少し合わないイメージですが、“うまみ”を軸に考えると良いペアリングが考えられそうです。

とくに日常で気軽にあさりとワインを合わせることを考えると、日本ワインファンとしてはマスカット・ベーリーAと合わせてみたくなります。

香りはフルーティーな甘酸っぱい果実のニュアンスがあり、口当たりも繊細、タンニンもスムースで酸もしっかりとしたライトからミディアムボディなので、あさりの繊細な味わいとは喧嘩しそうにありません。

またスパイシーなニュアンスもあり、加熱した際のあさりの香気とも合いそうです。

そして、ポイントになるのがコハク酸ですが、マスカット・ベーリーAは赤ワインの中でもコハク酸が多く含まれているなど、うまみをしっかりと感じられる品種と言われています。

そのため、あさりから溢れ出るうまみと調和し、よりあさり料理をおいしくしてくれる効果が期待できるでしょう。

そこでおすすめが、味噌とあさり、バターを使った料理です。

味噌バターと聞いただけで嬉しくなってしまうような方もいると思いますが、あさりをそのテイストで仕上げれば、マスカット・ベーリーAと合わないワケがありません。

ちなみに、上記のような白ワインに合わせたいあさり料理の場合、ロゼもおすすめですのでそちらも試してみましょう。

あさり味噌バター蒸しとマスカット・ベーリーA

今回、あさりとマスカット・ベーリーAを合わせます。

あさりはシンプルな酒蒸しですが、日本酒で味噌を溶いたもの、さらにバターを使いました。

味付けの個性が強い料理ですがあさり独特の味わいはしっかりと感じられます。

味噌とマスカット・ベーリーAの相性はさることながら、そこにあさりが加わることでうまみがプラスされ、より充実したペアリングになりました。

バターの脂分もベーリーAのタンニンと酸で切ってくれるため、濃厚なのにさっぱりとした印象です。

残ったスープはバケットにつけても良いですし、茹でたパスタを絡めてマスカット・ベーリーAと合わせても美味しくいただけます。

まとめ

あさりは、日本人にとって欠かすことができない食材のひとつです。

コハク酸によるうまみが強い貝で、クセが強すぎないので幅広い料理に使えます。

調理方法によって白ワイン、赤ワインと合わせやすいですし、フレッシュでうまみが感じられる日本ワインにはぴったりの食材でしょう。

今回はマスカット・ベーリーAを合わせましたが、ライトな日本の赤ワインであれば比較的合わせやすいと思います。

ぜひ、いろいろなペアリングを試してみてはいかがでしょうか。

参考

https://www.kaiseiken.or.jp/umimame/umimame71.html

https://www.kyosyokuinzaidan.jp/column/mimiyori/clams.html

https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-19700575/19700575seika.pdf