日本を代表するワイン産地のひとつ、「長野県」。
長野県といえば、2013年に発表された「信州ワインバレー構想」が有名です。
この信州ワインバレー構想は「NAGANO WINE」の魅力を伝えるための振興策ですが、特徴的なのが県内の優れた産地を大きく4つのエリアに区分けしているところ。
ここでは、「信州ワインバレー」の4つのバレーについて解説していきます。
信州ワインバレー構想について
信州ワインバレー構想とは、長野県におけるワイン産業の進行を目指すために策定されたもの。
同構想では県内のワイナリー集積地域である「松本盆地・佐久盆地・長野盆地・伊那盆地」といった4つのエリアが区分けされており、エリアごとに生産者育成・プロモーションなどが推進されています。
ちなみに「信州ワインバレー」のネーミングは、世界のワイン銘醸地のいくつかは、「バレー=谷地」といった意味を超えて「ワイン産地」としての意味を持ちつつあることから、ワイン産業が盛んな長野県においてもその名が付けられたそう。
信州ワインバレー構想では「NAGANO WINE」のブランド確立、長野県が優れたワインの有名産地として認識されることで県内外から多くの人に訪れてもらうことを目的に、現在も構想は進化し続けています。
4つのバレー
ここからは本題である、「信州ワインバレー」の4つのバレーについてお伝えしていきましょう。
「NAGANO WINE」は、これら4つのバレーから生み出されています。
- 桔梗ヶ原ワインバレー
- 千曲川ワインバレー
- 日本アルプスワインバレー
- 天竜川ワインバレー
それぞれのバレーの特徴を簡単にまとめてみました。
桔梗ヶ原ワインバレー
松本盆地の南端の塩尻市が全てふくまれるワイン産地が、「桔梗ヶ原ワインバレー」です。
令和2年9月30日の時点のワイナリー数は17場。
Kidoワイナリーや林農園、アルプス、井筒ワインなどが位置しています。
「桔梗ヶ原ワインバレー」に含まれている産地は標高700〜800mの高地であり、ブドウ生育期間の日照量も全国1位、2位を競うワイン栽培に適した場所。
コンコードやナイアガラを多く生産しています。
また、塩尻市といえばメルローが有名ですが同品種はもともと冷涼な場所での栽培が困難とされていました。
しかし生産者の栽培研究などにより良質なメルローの産地として成長し、今では温暖化の影響もありシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンといったヨーロッパ系品種のブドウの栽培が広まりだしています。
ちなみに、循環バスでワイナリーを巡る「塩尻ワイナリーフェスタ」には、全国から多くのワインファンが集うことでも有名です。
千曲川ワインバレー
上流の佐久市から下流の中野市までの千曲川流域に広がるワイン産地が、「千曲川ワインバレー」です。
令和2年9月30日の時点のワイナリー数は29場。
小布施ワイナリーやサンクゼールワイナリー、アルカンヴィーニュ、ヴィラデストワイナリー、リュードヴァンなど数多くの有名ワイナリーが点在しています。
「千曲川ワインバレー」は…
- 上田平と佐久盆地周辺
- 長野盆地とその周辺
といった二つの産地に大別されており、それぞれに天候や土壌条件に違いが見られます。
「上田平と佐久盆地周辺」は、標高が600〜900mの間に位置するブドウ園が多く、傾斜地や水はけの良好な土壌であることから良質なブドウが収穫可能。
シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨン、シラーなどの評価が高い場所です。
一方の「長野盆地とその周辺」は、400〜800mの標高の場所にブドウ園が拓かれており、斜面の向きも複雑に入り組んでいるといわれています。
黒ボク土が多い場所や水はけのよい礫粒褐色低地土など、場所によって土壌組成も複雑。
垣根仕立てのブドウ園が多く、シャルドネやメルロー、カベルネ・フランなどのヨーロッパ系のブドウ品種の評価が高い傾向です。
ちなみに「千曲川ワインバレー」にふくまれる東御市では市内3ワイナリーが連携して開催されている「東御ワインフェスタ」は多くの日本ワインファンが集うイベントとして知られています。
日本アルプスワインバレー
長野県の西部に南北にのびる松本盆地。
この松本盆地の塩尻市のみを除いたエリアが、「日本アルプスワインバレー」です。
令和2年9月30日の時点のワイナリー数は11場。
安曇野ワイナリーやノーザン・アルプス・ヴィンヤード、あづみアップルスイス村ワイナリー、ル・ミリュウなどのワイナリーが点在しています。
「日本アルプスワインバレー」の特徴は、さまざまな河川に流れ込む支流により形成された扇状地と沖積地で構成されているところ。
標高600m前後の場所にブドウ畑が拓かれていることが多く、礫をふくむ低地土と粘土質の土壌などから良質なヨーロッパ系品種のブドウが収穫できるとされています。
またワイナリーが位置していない場所も日照量が豊富で水はけが良いことから、ワイン用ブドウを栽培する圃場が多く点在しているようです。
じつは「日本アルプスワインバレー」は、長野県のぶどう栽培の発祥の地といわれており、同バレーの東部エリアから長野県のブドウ栽培が始まったといわれているそう。
近年では、桔梗ヶ原ワインバレーとの広域連携によりユニークなイベントも開催されている今後も注目の産地です。
天竜川ワインバレー
南はアプルス、西は中央アルプスに挟まれる伊那盆地一帯のワイン産地が、「天竜川ワインバレー」です。
令和2年9月30日の時点のワイナリー数は4場。※2021年現在「マルカメ醸造所」を加えて5場
伊那ワイン工房、信州まし野ワイン、本坊酒造マルス信州蒸留所、VinVieが点在しています。
古からリンゴや梨の栽培が盛んな土地ですが、近年ワイン用ブドウを栽培するブドウ園も増加傾向です。
黒ボクと礫をふくんでいる低土地が主体ですが、水はけのよい土壌であることから優れたブドウ栽培が可能。
ヤマブドウ系のヤマ・ソービニオンやヤマブドウなど日本固有種をはじめ、シャルドネ、メルローといったヨーロッパ系のブドウ品種の評価も高まりつつあります。
「天竜川ワインバレー」にはワイナリー数が未だ少ないものの、適正品種の検討や積極的なワイナリー誘致など、今後長野エリアでも注目されていく産地です。
進化し続ける「NAGANO WINE」
「信州ワインバレー構想」の魅力は、日々進化し続けているところです。
各バレーにおけるワイナリー場数も次々と増加していますし、観光分野との連携強化、プロモーションやブランド化に向けた取り組みなど、常に前身し続けています。
「NAGANO WINE」の発展は日本ワインの未来にとってとても重要な意味を持つでしょう。
今後の「NAGANO WINE」からも、目が離せません!
参考