日本で製造されているワインの表示基準には、「日本ワイン」と「日本ワイン以外の国内製造ワイン」があります。
日本ワインにおける表示基準が定められたことは日本ワインの発展において重要なことですが、日本を“ワイン産地”として形成するためにさらに細かな規則が必要です。
例えば、フランスにおける「A.O.Cブルゴーニュ」や「A.O.C.メドック」といった、地理的表示法を日本国内で整備することなどが当てはまるでしょう。
じつは日本には「GI」という地理的表示法が存在しており、ワインでは現在「山梨県」と「北海道」が指定されています。
ここでは、「GI Yamanashi(地理的表示 山梨)」を例に、その内容について詳しく解説していきましょう。
GIについて
GIとは、「Geographical Indication」の略で地理的表示を意味しています。
日本におけるお酒のGIは、地域の共有財産である「産地名」の適切な使用を促進する制度となっており、冒頭でお伝えした「A.O.C.ブルゴーニュ」に近い性質を持つものです。
GIは国税庁長官が指定しており、“産地ならではの種類の特性が明確である”ことなど一定の基準を満たして生産されたものだけが「GI」として認められます。
「GI Yamanashi」は、2013年7月に国税庁の指定を受けたもので、日本のワイン産地として初の地理的表示となりました。(※2017年6月に生産基準が見直されています)
「GI Yamanashi」といった表示がラベルに記載されているワインは、「国が認めたワイン」でもあるのです。
なぜ山梨県?
現在、日本各地にワイナリーが設立されていますが、なぜ山梨県が日本初の「GI」に選ばれたのでしょうか。
まず、山梨県は本格的なワイン醸造の発祥の地といわれており、日本で最もワイナリーが集中する有名産地です。
さらに、盆地で海洋の影響も少なく昼夜の気温差も大きい。
ブドウの栽培地の多くは花崗岩や安山岩の崩壊度からなり、肥沃かつ傾斜地にあることから排水も良好であることなど、「知名度」と「優れたワインが生まれる場所」として国税庁に認められたと考えることができます。
「山梨県産のワイン」という確固たるブランドが築けていることは、日本ワインが世界に羽ばたく上でも重要な要素ではないでしょうか。
「GI Yamanashi」の条件
山梨県で造られたワインであれば、どんなワインでも「GI Yamanashi」を名乗れるわけではありません。
「GI Yamanashi」といった文字をラベルに記載して販売するには、さまざまな厳しい条件をクリアする必要があります。
それぞれの条件を簡単にまとめてみました。
原料
「GI Yamanashi」を名乗るためには、これらの原料規則を守る必要があります。
- 山梨県内で収穫されたブドウのみを使用している
- 甲州、マスカット・ベーリーA、カベルネ・ソーヴィニヨンなど42の指定品種のみ
- 一定の糖度以上のブドウのみを使用している
製法などの基準
「GI Yamanashi」では、製法などにも基準が定められています。
- 山梨県内で醸造・貯蔵・容器詰めしたもの
- アルコール度数は辛口タイプは8.5%以上、甘口タイプは4.5%以上
- 補糖、補酸などは許されているが、一定の制限がある
品質基準
ここまでの基準を満たして造られたワインであっても、最後の品質基準をクリアしなければ「GI Yamanashi」を名乗ることはできません。
「GI Yamanashi」の管理機関は、地理的表示「山梨」管理委員会が官能・品質・表示審査などをおこなっており、これに合格したワインが「GI Yamanashi」の表示が許されます。
「GI Yamanashi」の表示における特徴
「GI Yamanashi」に指定されているワインの場合、ラベルに記載されている内容も一般的な日本ワインとは若干違いが見られます。
「GI Yamanashi」といった表示があることはもちろんですが、ブドウの原産地に「勝沼町産」など表示できることになっているようです。
また、「GI Yamanashi」に指定されたワインの場合、品種名で「甲州」を記載するためには、同品種を100%使用したものに限るとされています。
ワインの場合、どこのブドウを使いどこで醸造されたのかという、「出自」がとても重要な要素です。
今後ワインにおける「GI」の対象地域が増えることにより、さらに日本ワインに注目が集まるのではないでしょうか。
日本ワインは進化途中
冒頭でお伝えした通り、ワインにおける「GI」に指定されているのは山梨県と北海道の二つの地域のみ。
日本ワイン好きの方であれば、“他県それぞれにワインの特徴がある”と考えていると思いますが、まだまだ国としてそれらワインの基準が明確化されていないのが実態です。
今後、ワインにおける「GI」指定地域が増える可能性は十分にあります。
日本ワインはまだまだ進化途中。
これからもその動向を追い続けていきましょう。
参照