11月13日ー15日にスイスのベルンにて開催された世界で最も大規模かつ権威あるチーズのコンテストのひとつ、World Cheese Awards 2025。

第37回目となる今年は、46カ国から5,244品がエントリーされ、日本のチーズ工房からも国内17の都道府県から40工房48品の国産ナチュラルチーズが出品されました。

そして、「養沢ヤギ牧場」が出品した「養沢ヤギチーズ」、「乳ぃーずの物語。」が出品した「雪子」がSuper Goldを受賞し、「養沢ヤギチーズ」は最終審査でTOP14にも選出されました!

ミッドタウン日比谷で行われた成果報告会についてレポートします。

6回目の挑戦で掴んだ「世界での確かな評価」

主催者を代表してNPO法人チーズプロフェッショナル協会会長・坂上あき氏が挨拶されました。

同協会は、2018年の日EU・EPA発効を契機に農林水産省が開始した「国際乳製品競争力強化事業」や「国産ナチュラルチーズのブランド化・消費拡大事業」の一環として、ワールドチーズアワードへの日本チーズの出品サポートと、成果の国内還元を続けています。コロナ禍で中止となった2020年を除き、今年が6回目の出品。

この取り組みを通じて、日本チーズの素晴らしさは世界のチーズ関係者にはかなり知られるようになってきました。一方で、一般消費者にはまだその“すごさ”も、日本の受賞チーズのレベルも十分届いていないのが実感です。」「知られざる日本チーズの魅力を、一人でも多くの方に届けたい。」と、経緯や現状を織り交ぜつつ展望を語られました。

審査員として見た世界基準

現地の審査の様子について、現地審査員として参加した十勝の「チーズ工房 NEEDS」のチーズ職人・磯部公児氏と坂上氏との対談形式で披露されました。

初のワールドチーズアワード審査員と務められた磯部氏は、会場にびっしりと並んだ5,244のチーズを前にし、「スケール感に圧倒された」と振り返ります。

審査は、約110のテーブルに分けられ、各テーブルに 約45種のチーズ が並ぶ。
審査員2〜3名がチームを組み、以下の4項目で評価を行う。

  • 味(フレーバー)
  • テクスチャー(食感)
  • 香り(アロマ)
  • マウスフィール(口中での印象・余韻)

前者3項目が各5点、マウスフィールが20点の計35点満点で採点され、獲得点数に応じてブロンズ/シルバー/ゴールドが決定される仕組み。テーブル内で最も高い評価を得たゴールド受賞チーズが「スーパーゴールド」として選ばれ、最終的に全体の上位110品が出揃うということです。
つまり、この110に残るだけでもとてつもない狭き門なのでしょう。

審査員同士の交流で、海外ジャッジからは日本のチーズに対し、「テクニックが抜群に高い」「衛生・管理レベルが非常に安定している」と高い評価が寄せられたことも報告されました。

磯部氏は、「近い将来、今回スーパーゴールドを獲得した工房に続き、World Cheese Awards 全体の頂点に立つような日本チーズが出てくるのではないか」と力強く語られました。

Super Gold 受賞「養沢ヤギ牧場」の堀周さんが飛び入り参加!喜びの声に拍手

「まだ実感が追いつかない」今回、シェーブルでTOP14のテーブルにまで進出した養沢ヤギ牧場の堀氏は、初出品の快挙について喜びつつもこうコメントされました。

最初に受賞の連絡をもらった時は、寝起きで内容がよく理解できないほどでした。じわじわと実感が湧いてきて、家族とも『これはとんでもないことになっているのでは』と話していました。まだ消化しきれていないくらいです。」と率直な心境を語り、会場からは大きな拍手が送られました。

生産現場と都市の工房、それぞれが考える日本のチーズの魅力

成果報告の後半は、引き続き坂上会長のモデレーターにより、チーズと料理のコラボレーションをテーマにしたトークセッションとなりました。登壇は、チーズ工房那須の森の山川将弘氏、GOOD CHEESE LABORATORY チーズクラフトマンの貞光信哉氏、GOOD CHEESE GOOD PIZZAの梅村雅俊シェフ。

牧場から見た「日本のミルクとチーズ」

栃木県那須町で放牧ジャージー牛を飼い、チーズ工房を運営する山川氏は、日本チーズの魅力を「土地ごとに気候・地形が異なることで生まれるミルクの多様性」「そのミルクに合うスタイルを一つひとつ模索してきた生産者の試行錯誤」にあると語ります。

那須は自然豊かでありながら、東京から1時間強と好アクセス。生産者と消費者の距離が近いことで、チーズを日常的に楽しんでもらえる環境が育ちつつあります。

また、ホエイの活用についても強い問題意識を持っています。
チーズになるのは生乳の約1割。残り9割がホエイとして排出される以上、むしろホエイを主役と考えるくらいの意識で、ミルクを最後まで使い切る発想が大事だと思っています」と話し、現在ホエイからブラウンチーズや菓子、料理への展開など、新たな付加価値創造に挑戦されています。

東京のど真ん中でチーズを作る意味

一方、東京ミッドタウン日比谷の「GOOD CHEESE GOOD PIZZA」から始まり、現在は世田谷の工房に製造拠点を置く貞光氏は、「東京の牛乳を東京でチーズにする」というコンセプトを掲げ、「修行先の北海道で『ミルクを運ぶな』と教えられました。できるだけ搾乳地の近くでチーズにすることが、ミルクの個性を素直に生かす一番の方法だと今も思っています」とこだわりを明かします。
これは我々都市生活者にとっては、非常にありがたいことです。

チーズを「料理として届ける」シェフの視点

今回の会場で提供されたコラボメニューを手がけた梅村シェフは、長年イタリア料理に携わってきた経験から、国産チーズと輸入チーズの違いについて、「最初は“違い”が目について難しさもありましたが、生産者のストーリーや土地の背景を知ると、それぞれの個性が料理の発想を広げてくれる存在になる。違いではなく、強みとして組み合わせる面白さがあります」と日本のチーズの魅力にシェフ目線で注目していることを話されます。

今回提供されたカルパッチョ、ピッツァ、アイスケーキなどのメニューには、出品チーズと各地の食材が組み合わされ、まさしく「モノ(チーズ)」だけでなく「コト(体験)」としてのチーズの価値を楽むことができました。

今回の特別コラボメニューは、「国産チーズ応援フェア」として東京ミッドタウン日比谷の「GOOD CHEESE GOOD PIZZA」にて12月18日まで期間限定で提供されます。

さいごに

坂上氏が大会を振り返り、エメンタールやグリュイエールなどが代表する本格的なハード系チーズ大国であるスイスでの開催とあり、多くのクオリティ高いハード系のチーズが並んだ中、日本のハードやラクレットが数多く入賞し、本場のチーズと肩を並べていたことや、日本からの長時間の移動が不利となる酸凝固のチーズがSuper Goldに輝いたことは非常に嬉しかった、とコメントされました。

ヨーロッパと比べるとニューワールドな位置付けの日本のチーズですが、日本人の職人たちによる技術力、創意工夫、真摯な努力により、もはや海外の”模倣”ではなく”ライバル”、そう言える時代の到来を感じる今回の成果報告会でした。