今年も大盛況で幕を閉じた世界的なナチュラルワインの祭典「RAW WINE(ロウワイン)」。

東京のほか、ロンドン、パリ、ニューヨーク、モントリオール、上海など世界各都市を巡回しながら、オーガニック、ビオディナミ、ナチュラルといった自然派ワインの造り手たちと愛好家たちをつなげています。

その創設者であるイザベル・レジュロン氏に、「RAW WINE」のこと、そしてナチュラルワインについていくつかインタビューさせていただきました。

イザベル・レジュロン氏について

「ナチュラルワインとは、土地の記憶、造り手の人柄、そして生きた酵母のエネルギーが詰まった飲み物。だからこそラベルではなく中身を見てほしい」

フランス出身のマスター・オブ・ワイン(MW)であり、ロンドン在住、長年にわたり啓蒙活動を続けてきたナチュラルワインの第一人者です。
コニャック地方のワイン農家出身である彼女自身の原体験には、幼い頃に家族の畑で感じた土の匂いや、手作業での収穫、自然との触れ合いが根底にあります。

彼女の信念は一貫して「消費者に知る権利を」「造り手に語る場を」「自然に敬意を」の3つの柱で構成されており、それらを具現化したものが「RAW WINE」なのです。

「RAW WINE」とは?

「RAW WINEは、私が2011年に立ち上げたブランドです」と語るイザベル氏。
そのきっかけは、ワインボトルに「何が入っているのか」「どのように造られているのか」が全くわからないというフラストレーションだった。

「15年前は原材料表示すらなかった時代。“亜硫酸塩含有”とだけ書かれていても、消費者には意味が伝わっていませんでした。」

だからこそ、RAW WINEは透明性の追求を核にしている。
そのため、どんな農法で育てられたブドウなのか、亜硫酸塩や清澄剤の使用有無、認証の有無——すべてを公開するということです。

東京で感じたエネルギーと国際性

2025年のRAW WINE東京開催は2度目。
その印象を聞いてみましたところ、昨年に続き、イザベル氏は今回も「素晴らしいエネルギーに満ちていた」と語ります。

「東京の会場には一般の愛好家からナチュラルワインのプロフェッショナルまで、多くの人が集まってくれました。台湾や韓国、フィリピン、タイからのゲストもいて、まさに国際的なイベントになりました。」

イベントでは生産者本人と直接話せるのが大きな魅力。
農業のスタイルや哲学、造りのこだわりまで聞ける貴重な場だと考えているそうです。

スタイルを超えて、心に残るワインを

ナチュラルワインに対して「品質が不安定」と感じる人も少なくないでしょう。
美味しいナチュラルワインも確かに存在する一方、正直、筆者も「味わい」「ナチュラルワインらしい風味」という、それらしい言葉ではちょっと片付け難いワインと出会った記憶も。
とても聞きにくい質問ですが、せっかくの機会なので考えを伺いました。

「それは“固定観念”による誤解かもしれませんよ」とイザベル氏は答えられました。

「たとえば“ソーヴィニヨン・ブランは透き通って柑橘の香りで…”といった味のイメージは、近代醸造技術によって作られたもの。自然に発酵させれば、もっと土っぽく濁っていて、テクスチャーのあるワインになります。」

それは、たとえると「白くて柔らかい工業的なパン」と「天然酵母のハード系サワードウ」の違いに近く、「天然酵母のハード系サワードウ」は、個性があり、味わいが深く、そして造り手の手間が詰まった存在とのこと。

ナチュラルワインには、揮発酸や濁りなどが見られることもあるけれど、しかし、それは欠陥ではなく「自然な個性」である場合が多いとも主張されます。
しかしながら彼女はこうも付け加えます。

「ただし、強い酢酸臭や“マウスネス”(不快な後味)、過剰なブレ(ブレタノマイセス)などは明確な欠陥です。そうした場合は、必要に応じて少量のSO₂で安定させることも大切です。」

これは、一見当然のことのように思われるかもしれませんが、やはり重要なポイントでしょう。
「自然な個性」と「欠陥」は違うということは、造り手も飲み手も改めて認識する必要があるのでは。

イザベル氏は、「頭で採点するのではなく、身体で味わってほしい」と続けて語ります。
「ワインは8000年前から続く“食べ物”なんです。昨日、ホテルで味噌汁を飲んで感動しました。成分分析なんてしていません。ただ、おいしかった。それと同じです。」

日本のワインラヴァーへ伝えたいこと

「RAW WINEの究極のゴールは、世界中のすべての畑がオーガニック農法になること」と語るイザベル氏。
日本人の自然や風景に対する感性、そして美意識は、ナチュラルワインと親和性が高いと信じていると言います。

「私たちはラグジュアリーとしてのワインを楽しむ時代にいます。だからこそ、持続可能で誠実なワイン造りを選び、応援してほしい。そして、ナチュラルワインが持つ“生きたエネルギー”に気づいてほしいのです。」