とろける食感に濃厚な甘みが特徴の高級食材、ウニ

寿司やパスタソースはもちろん、近頃ではローストビーフの上に乗せられているなど活躍の場を拡大中です。

日本人が愛してやまない、ウニ。

じつは以前、漫画「美味しんぼ: 日本全県味巡り 山梨編(80巻)」にて、ワインと生ウニは最悪な相性ながら“甲州種ブドウのワインには合う”ということが示唆され話題となりました。(2001年9月に発売された単行本)

20年ぐらい前の話ですが、今回あらためて「甲州ワイン×ウニ」のペアリングについて言及。

ウニとは…そして甲州ワインと相性の良い理由を考えていきたいと思います。

ウニの基礎情報

トゲトゲの丸い形が特徴のウニ。

ヒトデやナマコなどと同様に、棘皮動物(きょくひどうぶつ)に属する生き物です。

私たちが食べている部分は「生殖巣」と呼ばれる組織で、卵や精子などを作るための部位。

餌から栄養を蓄える働きがあることから、どんな餌を食べているかで味わいのが変わってくるそうです。

種類問わず食べられると思われているウニですが、食用になるのはウニの中でも、「ホンウニ亜目」と呼ばれる種類だけ。

バフンウニやムラサキウニなどがそれに当たります。

ちなみにウニはビタミンB群やビタミンE、カロテンなどを豊富に含んでいることから栄養価が高く、美味しいだけではない魅力も兼ね備えているのです。

個人的にも大好きな食材のひとつですので、毎日でも摂取したいぐらいですね。

ウニの味を科学的にチェック

ウニの基本が理解できたところで、ここからはウニの味わいについて考えていきましょう。

ウニといえばクリーミーなテクスチャーと濃厚な甘み、塩味(海水由来)、爽やかな風味が特徴の食材。

未来食開発プロジェクト編著「うまさで究める」(かもがわ出版 2002)に掲載されている水産物のエキス成分によると、ウニ(バフンウニ)にはこれらの成分が含まれているそうです。

  • グルタミン酸
  • イノシン酸
  • アラニン
  • グリシン
  • グリシンベタイン
  • グアニル酸
  • バリン
  • メチオニン

 

この中でもとくに重要なのが、メチオニン。

ウニが美味しいのは、若干の“ほろ苦さ”があるからですが、この苦みにメチオニンが一役買っているとのことです。

おもしろいことに、ウニからメチオニンを排除するとカニやエビに似た味になってしまうのだとか…。

ズワイガニやイセエビ、ホタテ貝、イクラを比べてみても、メチオニンが含まれているのはウニのみ。

甘くクリーミーながら上品かつ緊張感のある味わいの秘密はメチオニンのおかげなのかもしれません。

プリンと醤油

ワインのコラムですが、もう少しウニについてお伝えさせてください。

冒頭でもお伝えした通りウニは高級食材のひとつであり、馴染み深いものの毎日食べるような食材ではありません。(ミョウバン漬けのものはわかりませんが)

そんなウニをどうしても毎日食べたいという方が発見したのか、「プリンに醤油でウニの味!」という噂がありました。

味の方向性は似ているものの、現実はプリンと醤油。

“まぁ、ウニっぽいけどね…”という感じでほぼ都市伝説と化しているようです。

しかし、調べていくと数年前にウニの風味の作り方の解が導きだされていたことを発見しました。

それが、食塩水に先ほどお伝えした、「グリシン・アラニン・バリン・グルタミン酸・メチオニン」と「イノシン酸・グアニル酸」をブレンドすると高級なウニの味が簡単に完成するのだそうです。

しかし、個々の成分を手に入れるのは一般人には難しく非現実的。

正直、ウニを買った方が安いですし安全性が高いため、この話はネタとして持っておくだけにとどめておくのがよさそうです。

甲州ワインとウニ?

ウニの情報はこれぐらいにして、ワインとの相性について言及していきしょう。

ウニとワインは合わないと言われている理由のひとつが、えぐみや生臭さを引き出してしまうから、と考えられます。

近年、ウニ専門店でワインと合わせることがおすすめされていますが、臭みのない(ミョウバン漬けではない新鮮な高級ウニ)ものを選んだり、ワイン自体の個性が強過ぎないことが重要なようです。

海外産ワインの中にもウニに合わせやすいものがあるのですが、それを探したり銘柄を覚えたりするのは一苦労。

“今日はウニとワインにしよう”と思った場合、いろいろ考えずにワインを用意できないと面倒という方もいるかもしれません。

そういった方にとって、甲州ワインはとても便利。

通販はもちろん、ワインショップ、スーパー、コンビニでも手軽に手に入れることができるワインです。

甲州ワインの選び方

とはいえ、甲州ワインにウニを合わせる場合、ある一定の要素を満たしている方がより美味しく食べることができるでしょう。

まず、近頃多くなってきている柑橘系の香りを感じるもの。

ソーヴィニヨン・ブランと同じ香り成分が甲州から発見されたことが記憶に新しいですが、爽やかなレモンを思わせる風味があるとよりウニとの相性が良くなります。

次に、できるだけシンプルで繊細であること。

シュール・リーや樽発酵、樽熟成、長期熟成のものでも悪くはないのですが、ウニの味わいをいかすためにはさまざまな要素が強過ぎない方が無難です。

そして、苦み。

甲州ブドウは独特の苦みがあることで知られていますが、これはシンナミル酸酒石酸エステル類やフラボノール関連物質が他品種と比較しても多く含まれていることが関連しているといわれています。

プラス、若干の塩味を感じさせるとなお良いでしょう。

柑橘の風味、繊細なボディ感、塩味、そして苦み。

このバランスが整っている甲州ワインとであれば、ウニと最高の相性を示してくれるはずです。

グラン甲州×ウニ

今回、蒼龍葡萄酒株式会社の〈グラン甲州〉をウニに合わせてみました。

山梨県で収穫された甲州ブドウを使用した白ワインですが、柑橘を思わせる香りや白い花、ほどよい酸味と苦みが走るバランスの良い1本です。

ウニは想像通りクリーミーで濃厚な味わい。

〈グラン甲州〉を合わせると、まず柑橘の風味がウニを包み込み爽やかな印象に。

ワインの苦みで口の中がすっきりするのですが、ウニの美味しい風味がしっかりと鼻に抜けていくのでよりウニの美味しさが際立ちます。

岩塩をかけたり、醤油、レモン汁をかけるとさらに親和性がアップ。

ウニの味わいをエレガントにしてくれる、まさに大人のペアリングを楽しむことができました。

ウニパーティーを開催しましょう

近頃、ウニは牛肉と組み合わせて提供されることが増えています。

そういえば、天ぷらもありますよね。

今回は生ウニですが、熱が入ったりほか食材と組み合わさるとほかの品種との組み合わせも考えることができるかもしれません。

やや贅沢ですが、さまざまな日本ワインを揃えて「ウニ×ワインパーティー」でも開催してみてはいかがでしょうか。

その時には、ぜひ私にも一声おかけください。

参考

甲州ワインの香気成分に関する研究 – 日本ブドウ・ワイン学会

おいしさを科学する「うま味」

未来食開発プロジェクト編著「うまさで究める」(かもがわ出版 2002)