もち米から作られる食材、餅。

日本の正月に欠かせない食材のひとつですが、今年は外出せずに自宅で過ごす方が多い傾向から、例年に比べて餅の売上げが伸びているそうです。

さて、そんな餅ですがアレンジ次第でワインとの相性が良くなると各サイトに情報が掲載されています。

たしかに餅はシンプルな味なのでアレンジしやすく、ワインに合うおつまみとしては優秀かもしれません。

しかし、個人的に餅にワインを合わせるなら、「焼いた餅×スパークリングワイン」を推したいと思っています。

ここでは、その理由についてお伝えしていきましょう。

楽しむシーンが似ている

大のワイン好き&自称泡愛好家を名乗る人であれば、日常的にスパークリングワインを楽しんでいるかもしれません。

しかし、一般的にスパークリングワインが飲まれるシーンはパーティーやお祝いなど記念日。

日常的に楽しむワインと立ち位置は若干違う印象です。

餅も同様、正月や節分、節句、お彼岸など全て華やかなイベントではありませんが、特別な日に食べる食材という印象です。

近年、正月ぐらいしか餅を食べないという方もいますが、スパークリングワインもクリスマスくらいしか飲まないという方もいるでしょう。

この、1年に一度だけ…というシチュエーションも、どことなくスパークリングワインと餅の親和性を高めてくれるのです。

テクスチャーを考える

スティルワインと餅の相性も良いですが、やはりテクスチャーを合わせるという観点からスパークリングワインを使いたいところです。

餅を酒のつまみとして食べる際、とろとろに煮込む雑炊というよりは、トースターやオーブンなどで香ばしく焼く方の方が多いでしょう。

ちなみに、餅の成分は主にでんぷんからできており、焼くとそのでんぷんが餅中の水分をふくみ柔らかくなります。

それと同時に餅中の水分は水蒸気となりますが、逃げ場がないため餅中の体積が増加。

結果、風船のように膨れ上がるのです。

この際、餅の表面はトースターなどで焼かれているためカリッとしたテクスチャーとなります。

“外カリッ!中ふっくら”といった感じでしょうか。

このカリカリッとした食感はなめらかな口当たりのスティルワインより、シュワッとした口当たりのスパークリングワインの方が合いそうですし、実際に合います。

お雑煮のようにトロトロになった餅を無理にワインに合わせる必要はないと考えていますので、やはりワイン(スパークリングワイン)のつまみにするなら、カリッと焼きたての餅がよいのではないでしょうか。

どんなアレンジでも合わせやすい

スパークリングワイン1本あれば、前菜からメインまで楽しめる。

こんなこと、耳にしたことはないでしょうか。

スパークリングワインは品種や製造方法、熟成年数によって味わいに違いはあるものの、基本的に柑橘系や白い花、ほのかなトースト香、うまみ、ミネラル感、フレッシュな酸味が特徴です。

このニュアンスを持つスパークリングワインは幅広い料理に合わせやすく、相当脂分が多いTボーンステーキなどでない限り、それなりにペアリングをこなします。

ちなみに、焼きたての餅は、アミノ化合物とカルボニル化合物が関連するメイラード反応によって発生する香ばしい香りがメインであり、口にふくむともち米由来の甘味が感じられる状態です。

スモーキーな香りとほのかな甘味は、スパークリングワインと合いそうです。

とはいえそのまま餅を食べる方は少ないでしょうから、何かしら調味料をつけたりアレンジして食されると思います。

例えば、柚子バターを塗ったり、オリーブオイル醤油、チーズとブラックペッパー、フルーツ、生ハムなどを乗せてもスパークリングワインと相性よく食べられるでしょう。

食材との調和、テクスチャーとの調和、うまみの調和など、餅さえあればスパークリングワインのおつまみに窮することはない…と考えられるわけです。

リッツ風に使えば気軽

「ワインと餅のペアリング」を検索すると、どれも手の込んだ面倒な料理レシピばかりが掲載されています。

また、お正月に食べる和風調理された餅は甲州をはじめとした日本ワインがおすすめですとも案内されていますが、せっかくのお正月に自宅でなかなか挑戦するのは難しいかもしれません。(オシャレな和食店などでは楽しいと思いますが…)

そこで、餅を餅と思わず、ナビスコ「リッツ」のように使ってみることをおすすめします。

餅を薄切りにして軽く焼いた上に、ガーリーックオイルやチーズ、コンビーフ、カッテージチーズなど乗せるだけ。

ちょっとカリッと焼けているとスパークリングワインとの相性がより良くなるでしょう。

例えば、高畠ワイナリーの定番スパークリングワイン〈嘉スパークリング・シャルドネ〉と餅のペアリング。

ガーリックオイルを塗った餅にチーズを乗せて焼いたもの、オリーブオイルを塗って焼いた餅の上に生ハムを乗せたものと合わせましたが…言うまでもなく良好な組み合わせ。

〈嘉スパークリング・シャルドネ〉のフレッシュさとほのかに香るクリーミーな印象は、香ばしい餅の風味とチーズ、また生ハムと相性抜群。

実際に、男一人でだいぶ楽しい時間を過ごすことができました。

餅はスパークリングワインのお供に最適

スパークリングワインも餅も特別な時に楽しむ、とお伝えしました。

しかし、リッツスタイルで餅とスパークリングワインの合わせ方を覚えれば、日常的なペアリングになり得るのではないでしょうか。

餅の売上げの約半分は12月の1ヶ月に集中するそうですが、できれば業界も通年安定的に売れてほしいと思っているはず。

「焼いた餅×スパークリングワイン」。

この言葉が広まることを願う今日この頃です。