みなさま、こんにちは。

ワイン・食・人(わいんしょくにん)】磯部 美由紀(いそべみゆき)です。

今回は、大好きなナチュラルチーズの工房、長野県東御市の「アトリエ・ド・フロマージュ」さんに行ってきました。
こちらのチーズ、多くの色々な賞を受賞されているので、チーズラバーにはよく知られた工房です。
普段から「#チー活」と称し、チーズ仲間と美味しいチーズを積極的に食べる活動をしている私にとって嬉しい訪問です。

【JAPAN CHEESE AWARD2020】
・翡翠     金賞(青カビ部門)
・ブリー    銀賞(白カビ部門)
・山のチーズ  銅賞(非加熱圧搾・熟成4カ月未満)
・モッツァレラ 銅賞(パスタフィラータ/モッツァレラ部門)

【World Cheese Awards 2019】
・ブルー シルバー賞

【ALL JAPAN ナチュラルチーズコンテスト2019】
・翡翠 金賞

すごい受賞の数々です。
こちらの工房では、年間約390tの生乳を使い、現在は15種類のチーズやヨーグルトを生産しているそうです。
この道15年チーズ職人塩川さんに、アトリエ・ド・フロマージュのチーズのこだわり、楽しみ方などお伺いしてきましたので、今回はそれらを参考に日本ワインとのペアリングを試してみたいと思います。

日本のブルゴーニュ?

工房は、軽井沢から車で一時間程度、長野県東御市に位置します。
ワイン好きなら、東御市と聞けばいろんなワインが浮かんでくることと思います。
そう、東御市は、日本のブルゴーニュと言われるほど、チーズの本場フランスの気候と似た風土を持っているそうです。
行ったことないけれど「フランスの田舎みたいな風景ね、牧歌的ね」って言いながら、チーズ仲間と車を走らせ見えてきたのは、やはりフランスの田舎にあるような一軒家のイメージそのものの、赤い屋根が可愛らしい工房です。
入り口では羊が出迎えてくれ、カフェの雰囲気も素敵。ドライブデートにも最適だろうな、なんて思ったり。
ショーケースに並ぶたくさんのケーキに目を奪われつつも、まずは工房見学です。

チーズができるまで

ナチュラルチーズの製造工程、超簡単にいうとこんな感じ。


↓←乳酸菌、レンネットを加えて加熱
凝乳
↓→ホエイ分離
カード
↓←加塩、カビなどの接種
グリーンチーズ(熟成してないチーズ)

熟成したチーズ

お伺いした時には、ちょうど乳にレンネットが加えられ、だんだんと固まっていったカードをカッティングしていたところでした。
この大きなバスタブのような容器に入っている乳は、約600㎏!これがだいたい3㎏のセミハードチーズ20玉くらいになるそうです。
そう考えると、チーズってその分栄養がぎゅーっと詰まった効率の良い食べ物ですよね。
そしてこの作業、かなり体力勝負だそう。

アトリエ・ド・フロマージュのこだわり

さて、上記のような工程を経てチーズが出来上がるのですが、ワインと同じく、原料(この場合は乳ですね)や造り方によって、それぞれのチーズの美味しさや個性が表現されるものです。
塩川さんにアトリエ・ド・フロマージュならではのこだわりポイントを聞いてみました。

 

★生乳の割合

主には近隣の牧場で育てられているホルスタイン(普段飲んでる白黒柄の牛乳用の牛)、ジャージー、ブラウンスイスの乳を使っているそうですが、それぞれ乳の成分に特徴があります。
チーズに最も影響を与える成分で重要なもののひとつが脂肪分。これにより、チーズの風味が変わってきます。
職人は、季節によって、その時々の成分を自身で確認し、最適な配分で調合して使用されているとのこと。

★カードの加熱

ここでの温度は、チーズの風味や硬さに影響を及ぼすのでこれまた重要なポイントです。
例えば、ハード系で有名はイタリアのパルミジャーノ・レッジャーノは55℃まで上げていきます。
セミハードは40℃よりも低めなのが一般的。
しかし、ここでも塩川さんの職人気質が生きています。
一応温度計は使うけれど、結局は自身の感覚。「それに頼ると温度計が壊れてたら意味ないですからね」とのこと。
ちょうどよい風味や甘み、仕上がりの硬さになるように温度により脂肪分などの調整を職人の感覚で行っています。

★熟成の環境

日本のブルゴーニュとはいえ、やはり湿度の高さは日本特有のもの。
すべてをフランス基準にするのではなく、東御市の気候に合わせて熟成庫内の温度、湿度、通気を調節されているそう。

お話を聞けば聞くほど、ワインと同様にナチュラルチーズもやはりその土地の気候風土や職人の仕事が感じられるもののように思います。
さて、どんなワインを合わせましょう。

日本のチーズ×日本ワイン

塩川さんに貴重な情報をいただきました。
チーズの原料乳を搾乳している牧場の最も近いところに位置するワイナリーが、シャトーメルシャンの椀子ヴィンヤードだそう。
それならば、椀子ヴィンヤードのワインを合わせるのが楽しいですよね。
ということで、今回はこちらの2種とのペアリングを試してみたいと思います。

【今回のワイン】
シャトーメルシャン(長野)/椀子ソーヴィニヨンブラン
自社管理畑『椀子ヴィンヤード』のソーヴィニヨン・ブランを使用。
柑橘系の果実やパッションフルーツのアロマに加え、ハーブのニュアンスを感じる白ワイン。

シャトーメルシャン(長野)/椀子メルロー
自社管理畑『椀子ヴィンヤード』のメルローを使用。
オーク樽にて11か月育成。
ドライフルーツを思わせる香りと果実の凝縮感、力強いタンニンを併せ持った、ボディバランスの良い赤ワイン。

チーズは、せっかくだから数々の賞を受賞している青かびをいただきたく、「翡翠」「ブルー」
そして、ちょうど製造工程を見せていただいた「硬質チーズ」を購入してきました。

チーズって、カッティングボードで切ったまま出してもなぜか許される食べ物ですよね。
果物やナッツなんかと一緒に並べると、プラトーが可愛く仕上がるだけでなく、チーズの栄養素に不足しているビタミンCと食物繊維が摂れるのでとてもお勧めです。

さて、テイスティングしていきましょう。

翡翠
まずは、青かびチーズの翡翠。
これ、とても美味しいです!ゴルゴンゾーラに似たくちどけの良い滑らかな食感と旨味、スティルトンのようなナッティさが感じされ、とても上質なチーズです。
旨味が強く、余韻も長いので、しっかりめのメルローとの相性が抜群です。
今回のソーヴィニヨンブランは結構ドライなタイプなので合わないこともないですが、やはりこの深い旨味にはメルローの方がバランスがよいです。

ブルー
ブルーの方もやはり塩味のインパクトという観点ではメルローの方が好相性ですね。
翡翠に比べて少しシャリっとした青かび感と独特の渋みが、チーズ好きにたまらないです。
ハチミツをかけて食べるのも美味しいです。

硬質チーズ
硬質といってもモチっとした程よい弾力があります。
ホットミルクのような香り。
お味も、とても優しくほんのりミルクの甘みが感じられて美味しいです。
硬すぎないし、風味も優しいので、お子様や年配の方へのおやつにもオススメですね。
これはソーヴィニヨンブランの甘みのあるフルーティーさが良く合いました。
また、品種特有のハーブのニュアンスが、ミルキーに支配される口内を爽やかにリセットしてくれ、いつまでもこのペアを楽しみ続けられそうです。

「チーズは酒飲みのビスケット」と言ったのは、19世紀フランスの食通グリモ・ド・ラ・レニエール。また「チーズはワインの最強の友」とも言われています。
しかし、その合わせ方のコツは様々。
今回は、産地同士の相性という観点でペアリングを楽しみましたが、他には、チーズの熟成度合いに合わせてワインを選んだり、チーズの成分から導き出す方法なども。
日本のナチュラルチーズと日本ワイン、まだまだいろんな組み合わせで試していきたいですね。

アトリエ・ド・フロマージュ
https://www.a-fromage.co.jp/