ワインペアリングに豪華な食事を用意するのもいいですが、できるだけペアリングはシンプルにしたいと考えている方もいるでしょう。

そんなペアリングを求めている方におすすめの食材があります。

それが、「ネギ(根深ねぎ)」です。

ここでは、「ワイン×ネギ」のペアリングのコツを解説していきたいと思います。

 

 

ねぎとワインは合う

 

 

ねぎといえば、「辛い・独特なにおいがある」という特徴があります。

そのため、ワインと合わせるのは難しいといったイメージがあるかもしれません。

生のねぎにかぶりついた後にワインを合わせるのであれば厳しい結果となるのは自明ですが、「ねぎの種類」、「調理方法」、「ワイン選び」にこだわるだけで、驚くほどに相性が良くなります。

それぞれ解説していきましょう。

 

 

ねぎの種類は“根深ねぎ”がおすすめ

 

 

ねぎには、大きくわけて二つの種類があります。

それが…

  • 根深ねぎ
  • 葉ねぎ

(今回、日常生活で手軽で手に入るねぎという観点から西洋ネギ群は外しました)

根深ねぎとは茎が白い長ネギのことで、葉ねぎとは緑の葉の部分が中心の細長いねぎが葉ねぎとなります。

回りくどい言い方になりましたが、よくスーパーで見かける白ネギが根深ねぎで薬味などに使われる九条ねぎなどが葉ねぎです。

とくにワインに合わせる場合は食べる部分が多く、食感も良い根深ねぎがよいでしょう。(ここでは、根深ねぎを“ねぎ”で統一していきます)

ただし細々とした根深ねぎではなく、できれば太く立派な「千住ねぎ(深谷ねぎ)」「加賀ねぎ(下仁田ねぎ)」がおすすめです。

さらに旬といわれている11月から2月の根深ねぎは糖質が増えているため、ワインとの相性がさらに良くなります。

ぜひ、この季節の根深ねぎを狙ってペアリングに挑戦してみてください。

 

 

加熱でねぎを美味しくする

 

 

ねぎがワインとぶつかる理由があるとすれば、ねぎの個性的なにおいや辛味が原因かもしれません。

まず、ねぎ属植物のにおいの本体は硫黄のにおいに関連する揮発性のアリキルジスルフィドが要因といわれており、さらに条件によって悪臭として活躍するのはポリスルフィドと示唆されています。

また、ねぎ特有の辛味やにおいはアリシン(硫化アリル)と呼ばれる辛味成分が要因です。

ワインをねぎに合わせる場合、これらの要素をある程度抑えた形が好ましいでしょう。

そもそもジスルフィドは揮発性であり、アリシンも揮発性かつ水溶性であるため水にさらしたり、加熱することで分解されてしまいます。

さらにこのアリシンは加熱すると甘味成分に変化するため、加熱という調理工程を経ると苦くて臭いを払拭して、「甘くておいしい」へと変化するのです。

ねぎを水にさらすだけでもにおいや辛味は軽減しますが甘味は増さないため、ワインと合わせることを考えたら加熱がおすすめでしょう。

 

 

還元的な要素を持つ白ワインを選ぶ

 

 

根深ねぎを加熱したら、次はワイン選び。

ねぎをどのように調理するかでワイン選びは変わってきますが、今回はできるだけ素のねぎと合わせる目的ですので、ワインもねぎ寄りのものを選びます。

まず、加熱したねぎはとろりとしたテクスチャーとなっている上に甘味が強くなっています。

そうなると、甘やかな香りを持つ白ワインがよさそうです。

しかし、あまりに大味(果実由来の甘さが際立つものの平坦な味わい)の白ワインだと洗練されたペアリングになりません。

ということで、今回はその要素を持ちつつ「ねぎ」というキーワードを鑑みて、還元的(硫黄臭さのある)な要素を感じられるワインをチョイスしたいと思います。

還元臭とは硫黄臭ともいわれており、ワインの風味形成に影響を与えることで有名です。

窒素不足のマストでの醸造や限りなく還元的な醸造、スクリューキャップで長期間保存されたもの…。

ただし、還元がイキ過ぎて強烈な硫黄臭、にんにく、煮て放置された野菜といったオフフレイバーと見なされるようなものは避けたいところです。

日本ワインであれば、海外品種をステンレスタンクのみで醸し、さらにスクリューキャップを使用しているものがオススメ。

フルーティーな甘やかさがありながら還元的なニュアンスを兼ね備えているワインであれば、ねぎとの相性の良さをより感じていただけるのではないでしょうか。

 

 

 

千住ねぎの天ぷら×〈アルカンヴィーニュ シャルドネ 2018〉

 

 

今回、前述した要素を踏まえて「ワイン×ねぎ」のペアリングをためしてみました。

まず選んだねぎは、根深ねぎの中でもブランド品とされている「千住ねぎ」。

深谷ネギや越津ねぎとも呼ばれますが、ねぎの白身部分を食べる関東地方の食生活に合わせた改良されたものです。

そしてワインは、〈アルカンヴィーニュ シャルドネ 2018〉。

半年ほどステンレスタンクでシュール・リーが行われた後に瓶詰めされた、スクリューキャップ式の白ワインです。

フレッシュでありながら2年以上の瓶熟成を経ているので、ねぎにはぴったりでしょう。

では、早速ペアリング。

 

 

千住ねぎは天ぷらにして甘味を際立たせてみました。

以前、TV東京系列のとある番組で千住ねぎは、“マンゴー以上の甘さ”と紹介されていたようにかなり甘味が強く、かなり…美味しい。

一方の〈アルカンヴィーニュ シャルドネ 2018〉も、柑橘やりんご、パイナップル的な要素に還元的な風味、シャープな酸味があるため千住ねぎの甘さや風味とぶつからず絶妙なペアリングに。

後味に〈アルカンヴィーニュ シャルドネ 2018〉の持つほのかな苦味が残るところも口の中をさっぱりさせてくれるポイントです。

こういった料理は日本酒やビールと相性が良さそうですが、個人的には〈アルカンヴィーニュ シャルドネ 2018〉のような白ワインとのペアリングがオススメですね。

 

 

普段脇役の「ねぎ」がごちそうに

 

 

一般的にねぎは脇役に徹することの多い野菜です。

ねぎにこだわる飲食店は別ですが、家庭料理でねぎを主役にした献立を考える方は少ないでしょう。(ねぎファンやねぎ農家、フレンチ料理マニアは別)

しかし、ねぎだけでワインと合わせる…という発想になれば、いつのまにかねぎ単体がごちそうになるのです。

若干調理の手間はかかるものの、「ねぎ×ワイン」はなかなか粋なペアリングではないでしょうか。

ぜひ、気になった方はご自宅でお試しください。

参考

香辛野菜のフレーバー形成1)ネギ属植物の「におい」形成その生理的意義 川岸舜朗

千住葱商 葱茂

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