近年、海外品種から造られる日本ワインのレベルが高まってきています。
海外産ワインのようなパンチ力はないものの、日本らしい繊細さと複雑性が楽しめるところが評価されているのかもしれません。
さて、そんな日本における海外品種に中で今後注目したいのが、「ピノ・グリ」です。
世界的に有名なブドウ品種であり、日本ワインにも多く見られる上にその品質も高い。
ここでは、ピノ・グリについて解説していきましょう。
ピノ・グリって何?
ピノ・グリは、赤茶色の果皮をもつ白ブドウの一種。
詳しくは後述しますが、ピノ・ノワールの変異種によって生まれたことで知られています。
葉は深い緑色で房は小さめ、熟すにつれてブドウの粒が薄紫(グリ)に変化していくところが特徴です。
温暖な気候よりは冷涼気候を好む品種で、粘度石灰質土壌などミネラルの豊富な土壌で栽培すると品質が高くなるといわれています。
ピノ・グリの産地は?
ピノ・グリは、世界各国で栽培されていますが主要産地は、フランスのアルザス、ドイツ、イタリア、ハンガリー、アメリカのオレゴン州とされています。
とくにアルザスでは、リースリング、ミュスカ、ゲヴェルツトラミネールと並ぶ高貴品種のひとつとして知られており、辛口ワインから甘口ワインまで優れたワインが造られていることで有名です。
ピノ・グリの原産地はブルゴーニュとされていますが、現在ではあまり残されておらず貴重な品種として扱われています。
ちなみにピノ・グリには、
- イタリア=ピノ・グリージョ
- ドイツ=ルーレンダー、グラウ・ブルグンダー
- シャンパーニュ=「フロマントー」
などの別名もあるので覚えておくとよいでしょう。
ピノ・ノワールの突然変異とは?
ピノ・グリについて考える上で、前述した「ピノ・ノワールの突然変異で生まれた品種」というキーワードは避けて通ることはできません。
そもそもピノ・ノワールの遺伝子はとても不安定であり、突然変異が起こりやすことで有名です。
そのため、ピノ・ノワールからはピノ・グリだけでなく、「ピノ・ブラン」というブドウも生まれています。
しかし、なぜ黒ブドウのピノ・ノワールから白・グリが生まれてしまうのでしょうか。
まず、ブドウの茎頂部の分裂組織はL1、L2、L3いう三つの細胞層からなっています。
中でもL1とL2には、「赤色色素合成遺伝子」のスイッチになる遺伝子(機能しているものと機能していないものがあり、ここでは機能するもを仮にVとする)が存在しており、このスイッチの「オン・オフ」によってブドウの果皮の色が変わることが分かっているのです。
例えば、茎頂分裂組織の細胞層のL1とL2のVがオンになった場合は、赤色ブドウの「ピノ・ノワール」。
L1もL2もVがオフになった場合は、白色ブドウの「ピノ・ブラン」。
そして、L1のVがオフでありながらL2のVがオンになった場合はグリ(灰色)ブドウである、「ピノ・グリ」が生まれてしまう…ということなのです。
普段慣れ親しんでいるブドウであるが故に、興味深い話ですよね。
ピノ・グリの特徴は?
ピノ・グリは、さまざまな顔を持つユニークなブドウ品種です。
例えば、黄色い果実やアプリコット、黄桃といった果実の甘さを感じさせる風味。
ハチミツのようなニュアンスが出ることもありますが、スモーキーな香りやグリ系ブドウならではのほろ苦さも感じることから引き締まった印象はあります。
収穫期を早めることで丸みのある果実味が柑橘系となりフレッシュな印象を与えるようにもなりますし、収量を高め過ぎると逆に個性のないワインになることもあるようです。
全体的に豊満で骨格のあるボディ感があるものの、繊細でまるみのある酸味なので飲みやすいワインに仕上がる傾向があるでしょう。
肉料理がおすすめ
ピノ・グリを料理に合わせる際、ワインの特徴である甘い果実の香りとスモーキーさ、やわらかな酸味を軸にするとよいかもしれません。
ローストビーフや炭火で焼いた牛肉、ローストチキンなどもいいでしょう。
果実の甘さを合わせるためにフルーツを使ったソースとの相性も良いですし、オレンジやリンゴ、柿などを大胆に使ったサラダとの相性も楽しいかもしれません。
ただ、個人的にはスモーキーさと甘さ、ほどよいテクスチャーを楽しめるたれの焼鳥がオススメです。
赤ワインとの相性が訴求されやすい、“たれの焼鳥”ですがしつこくない味わいのものであれば、逆にピノ・グリぐらいの力具合の白ワインの方が良い相性を示します。
ぜひ、お試しください。
ピノ・グリを積極的に飲もう
アルザスやドイツ、イタリアのワインがお好きな方であればピノ・グリに触れる機会が多いかもしれませんが、主に日本ワインを飲んでいる方はそこまで頻繁に出会う品種ではないでしょう。
とはいえ、「日本ワイン ピノ・グリ」で検索いただければ、それを生産しているワイナリーが多いことに驚かれるはずです。
日本ワインの中でも今後目にする機会が増えることは間違いありません。
ぜひ、これを機会にピノ・グリを積極的に選んでみてはいかがでしょうか。
参考