近頃、日本ワインについて興味が湧いてきた。

そんな方も多いのではないでしょうか。

日本ワインは、知れば知るほど深くのめり込んでしまう魅力に溢れたカテゴリ。

だからこそ基礎的知識の習得は不可欠です。

ここでは、「日本ワイン」とはなにか、どこでどのように造られているのかなど、日本ワインの基礎的知識を簡単にまとめています。

日本ワイン初心者はもちろん、詳しい方もおさらい用としてお使いください。

日本ワインとは?

日本ワインとは、「日本国内で栽培されたブドウを100%原料に、日本国内で醸造されたワイン」のことです。

日本には、ほかに海外から輸入した濃縮果汁などを原料に日本国内で製造されたワインもありますが、こういったワインは「日本ワイン以外の国内製造ワイン」と分類されています。

日本ワインの表示ルールが適用されたのは2018年10月30日からなので、「日本ワイン」といった法律上の定義は比較的新しいものといえるでしょう。

日本ワインを造るワイナリーと生産量

日本ワインの生産地は、日本全国に点在しています。

国税庁国内製造ワインの概況(平成30年度調査分)における製造業者の概況によると、平成31年3月31日の時点で日本のワイナリー数は331場。

ワイナリー自体は毎年増加傾向にあり、今後も増えていくと考えられています。

ちなみに日本ワインを生産するワイナリーの約6割は上位5県が占めている状況です。

  • 1位 山梨県 85
  • 2位 長野県 38
  • 3位 北海道 37
  • 4位 山形県 15
  • 5位 岩手県 11
    (6位の新潟県は10)

とくに山梨県は2位の長野県の2倍以上のワイナリー数を誇るなど、今も日本ワインを牽引していく存在として活躍しています。

日本ワインの生産量について

次に日本ワインの生産量に関連するデータを見ていきましょう。

国内製造ワインの概況(平成30年度調査分)の出荷・生産の概況によると、日本ワインの出荷量(課税移出数量)は16,612kl

日本ワインの生産量は年々増加傾向にあるものの、日本における国内製造ワインの生産量構成比としては日本ワイン以外の国内製造ワインの約20%程度であり、全体から見ると生産量としては未だ少ない傾向にあります。

ちなみに日本ワインの種類別生産量は、赤ワイン43.1%、白ワイン45.6%、スパークリングワイン4.8%、その他が6.4%。

日本ワインは白ワインのイメージが強いですが、やはりスパークリングワインやロゼなどをふくめるとこれらが全体の約6割を占めていることがわかります。

日本ワインのブドウ栽培

山梨県や長野県、北海道などを中心にワイナリーが点在している日本ワインの産地ですが、実際は全国各地でブドウ栽培・ワイン醸造がおこなわれています。

さて、日本のブドウ栽培の北限といわれている北海道名寄の北緯が44.1度で南限の鹿児島県の曽於郡は31.3度

フランスにおけるワイン産地の北限であるシャンパーニュと南限のコルシカ島の緯度が約6度程度といわれていることから、日本はワイン産地として相当南北に離れていることがわかります

また、日本は降雨量が多い上に温暖湿潤気候、黒ボク土が中心の肥沃な土壌。

良質なワイン用ブドウの栽培条件としてブドウの栽培時期に降雨量が少ない、日照量が多い、乾燥している、水はけが良い痩せた土壌が好ましいといわれていることから、日本は良質なワインを生み出すにはかなり不利な条件と考えられています。

しかし、産地によっては降雨量が少なく日照量が多かったり、風通しが良かったり、痩せた水はけの良い土壌があったり、ワイン用ブドウの栽培に適した場所も少なくありません。

それに加え、意識の高い生産者たちによるブドウ栽培のための土壌改良、適地への畑の開墾、ワイン用ブドウの栽培知識・技術の向上など、「適地適品種」を大切にしたブドウ栽培が心がけられるようになった結果、各地で良質なブドウが多く収穫できるようなってきています。

日本では良いワイン用ブドウは収穫できないから、ワインも美味しくない。

このように考えられていた時代は、すでに終焉を迎えようとしているのではないでしょうか。

日本ワインに使用されているブドウ品種

日本ワインには、さまざまなブドウ品種が原料として使用されています。

国税庁の原料用国産生ぶどうの概況 ワイン原料用国産生ぶどう(赤白上位10品種)の受入数量によると、日本の固有品種からアメリカ原産ラブルスカ種との交雑種などが多く原料として利用されているようです。

赤ワイン用ブドウ品種は、マスカット・ベーリーAやコンコード、キャンベル・アーリーが多く、白ワイン用ブドウ品種は甲州やナイアガラ、デラウェアなどが多い傾向にあります。

しかし、赤ワイン用ブドウ品種の第3位はメルローであり、デラウェアに次いで白ワイン用ブドウ品種の4位にシャルドネがランクイン。

日本の各産地ではヨーロッパ系ブドウ品種の栽培にも注力していることから、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブランなども増加傾向にあります。

前述したように道内、県内、府内の中にあっても栽培条件が違う場所が存在していることから、生産者がその土地に合ったブドウ品種を選ぶようになってきていることも関連しているかもしれません。

日本の仕立て法について

日本のブドウ栽培は主に、「棚仕立て」でおこなわれています。

ワイン用ブドウの栽培は「垣根仕立て」が一般的ですが、日本の気候条件や栽培のしやすさから棚仕立てが採用されているようです。

もちろん、垣根仕立てを採用する栽培者も増加傾向であり、少しずつワイン用ブドウを栽培する地域の風景が変わり始めています。

ちなみに棚仕立てには、「X字剪定」、「一文字短梢剪定」、「H字短梢剪定」といった種類があり、ヨーロッパ系品種には一文字短梢剪定が適しているといわれているようです。

日本ワインにおける有機栽培

近年、ワイン市場で注目を浴びているのがオーガニック系のワイン。

安心・安全の観点はもちろん、サスティナブルなブドウ栽培やワイン造りをおこなうためにも世界的にナチュラルな造り目指す生産者が増加傾向にあります。

日本でも有機栽培や減農薬による農法でブドウ栽培、亜硫酸塩などをできるだけ使用しないナチュラルなワイン造りをする生産者も増えているようです。

その土地の魅力をワインに詰め込みたいと考える生産者からは、より厳格な栽培・醸造方法でヴァン・ナチュールを生み出す人もいます。(※現在、日本ではヴァン・ナチュールの定義はない)

しかし、前述したように日本は高温多湿な気候条件であることから、ブドウがカビにおかされやすく、ある程度の農薬を使用しないと健全なブドウ栽培は不可能である、という声が一般的です。

そのため日本で完全な無農薬栽培をおこなうためには、相当高いスキルの栽培技術がないと難しいと考えられており、“想い”だけではどうにもならないという声もあります。

今後日本ワインでもナチュラルな造りのワインが増加していくことは予想できますが、どういった取り組みでブドウ栽培・ワイン醸造をしているのかなど、生産者の情報をしっかりと仕入れた上で購入すべきかもしれません。

日本ワインの醸造

繰り返しになりますが、日本ワインの定義は「日本国内で栽培されたブドウを100%原料に、日本国内で醸造されたワイン」。

つまり日本産のブドウを日本で醸造しているため、日本ワインを知る上では醸造についても知っておく必要があります。

ワイン醸造について

ワイン醸造は、世界各国どんな場所でも基本的な流れは一緒です。

ブドウを破砕→果皮と種子、果汁を漬込む(白ワインは果皮と種子ではなく果汁のみ)→ →果汁のみに酵母を添加→アルコール発酵→マロラティック発酵(白ワインは例外を除き無し)→樽orステンレスタンクで熟成→清澄などの作業→瓶詰め→ラベル貼り→市場へ…

ワインの種別によって工程に違いはあるものの、同じ醸造酒である日本酒と比較すればシンプルに仕上げられます。

一般的に赤ワインは樽熟成を経たものが多く、白ワインやロゼワインはフレッシュ&フルーティーさをいかすためにステンレスタンク。

スパークリングワインは、一部の生産者のみシャンパーニュと同様の瓶内二次発酵法で造られていますが、多くが炭酸ガス注入のようです。

白ワインに厚みを持たせるためにおこなわれるシュール・リー製法や白ワインの樽熟成、オレンジワインなど、日本ワインは多種多様な醸造法からワインが造られています。

新しいワイン醸造

近年、日本ワインの品質が高まっているといわれている背景に、醸造技術の向上が挙げられます。

海外のワイナリーで修行した生産者やワイン留学していた生産者などが増えたり、国の支援、ワイン関連の大学や大手メーカーによる情報開示などが理由でしょう。(ワイン醸造場を清潔にする、という意識も関連している)

さらにブドウの個性を大切にしたいと考える小規模生産者の増加も手伝い、多種多様なスタイルの良質なワインが出てくるようになりました。

また、前述したようにヴァン・ナチュールなどナチュラルな造りのワインを生み出す生産者も増加している中、一部品質に問題視すべきワインがあるものの、しっかりとそういたものは淘汰し始められているようです。

“果実味たっぷりのフルボディの濃いワイン”ではなく、“ブドウの個性が繊細に表現されているエレガントなワイン”といった世界的な流行も追い風となり、日本ワインが正当に評価され始めたことも生産者のモチベーションを高めているのかもしれません。

日本ワインとフードペアリング

日本ワインが人気になった理由のひとつに、「和食とのフードペアリング」があります。

日本ワインは繊細かつエレガントな味わいが特徴であるため、繊細な味つけの和食との相性が良く、有名和食店や寿司屋、料亭などにも取り入れられるようになりました。

柑橘といっても、レモンやライムなどではなく、ゆずやかぼすといった和風の風味があったり、だしのうまみを思わせる味わいなど、「日本ワインは和食である」といっても過言ではないところも日本ワインの魅力です。

白ワインが日本ワインでは注目されがちですが、赤ワインであっても、すき焼きや焼鳥、ブリの照り焼きなど、海外産ワインでは考えられなかったペアリングが訴求されるなど、その幅を広げ続けています。

日本ワインの魅力をペアリングで気がつくといった方も多いので、ぜひ日本ワインに懐疑敵な方は日本ワインと和食のペアリングから試してみてはいかがでしょうか。

深堀りすると、さらに面白いのが日本ワイン

ここでは日本ワインの基礎知識をお伝えしましたが、これはまだ表面的な知識です。

都道府県それぞれのワイン造りやブドウ品種、醸造方法、そして各種ワイナリーの哲学など、深堀りできる要素は無限に存在していまいます。

まずは基本を押さえること。

そこから日本ワインの世界に入っていけば、今の数百倍、興味深く日本ワインを楽しめるはずです。

参照

国内製造ワインの概況(平成30年度調査分)